若年寄の遺言

リバタリアンとしての主義主張が、税消費者という立場を直撃するブーメランなブログ。面従腹背な日々の書き物置き場。

大人の世界の ホンネ と タテマエ

2009年03月08日 | 政治
人工島見直しを公約の福岡市長、「やめれば損失大」と推進(2007年12月4日 読売新聞)
 福岡市東区の人工島(アイランドシティ)事業の見直しに関する市の検証・検討チームは4日、最終的な報告書を発表した。住宅や商業施設など多様な都市機能を導入し、島の整備を進める内容で、これを受けて市は同日、庁内に整備事業推進本部を設置した。昨年11月の市長選で事業の「大胆な見直し」を掲げて当選した吉田宏市長は1年間の検討の結果、前市政の路線を基本的に継承し、事業推進に大きく踏み出した。
       ――――――――――(中略)―――――――――――
 吉田市長は昨年の市長選で、財政を悪化させたとして山崎広太郎・前市長を批判し、「大規模開発を厳しく見直す」と強調。人工島事業については「市民の財産になるよう大胆に見直し、現実的解決を図る」と訴え、これまでの土地利用区分を白紙に戻し、島の基本概念を作り直すほか、自ら国内外の企業に売り込みを図ると述べた。
 記者会見した吉田市長は「以前から事業をストップするとは言っていない。今事業をやめれば損失が大きい」としたうえで、「一番いい形で人工島を仕上げるのが大事。マイナスイメージが強いが、みんなでいい町にしていってもらいたい」と強調した。



「大胆な見直し」「大規模開発を厳しく見直す」を掲げて当選した市長が、
「今事業をやめれば損失が大きい」として前市長の大規模開発事業を継承。

どんなダメ事業でも、一旦着手してしまえば
「今事業をやめれば損失が大きい。」ということが継続の理由となる。
「公約?税金の無駄遣い?着手してしまえばこっちのもんさww」という
職員と業者の勝利宣言が聞こえてきそうだ。

事業がある程度進んだ段階においては、
人工島事業を「推進します」という公約と、
人工島事業を「大胆に見直します(ストップするとは言ってない)」という公約は、
ほぼ同義になるようだ。


さて。

この人工島事業の一環として、福岡市子ども病院を人工島へ移転する計画がある。
今ある場所での建替えを求める市民団体と、
人工島の更地で新規に建てようとする市側とで揉めて、遅れているらしい。

そんな中・・・


福岡市子ども病院現地建て替え、再試算で43億円上乗せ(2009年1月23日 読売新聞)
 福岡市立こども病院・感染症センター(中央区)の移転問題で、市の委託を受けたコンサルタント会社(東京都千代田区)が2007年7月、現在地で建て替えた場合の費用を85億5000万円と見積もったにもかかわらず、市がゼネコンに再見積もりを依頼し、約1・5倍の128億3000万円にしたことがわかった。
 病院は博多湾東部の人工島(東区、アイランドシティ)への移転が決まったが、市は「現地建て替えより財政負担が少ない」と説明している。市は再見積もりの根拠となる資料はすべて破棄したとして詳しい経緯を明らかにしていない

       ――――――――――(中略)―――――――――――
 病院は市民病院(博多区)と統合して人工島に移転する計画だったが、見直しを公約に掲げた吉田宏市長が06年の市長選で当選し、庁内に検証・検討チーム(7人)が結成された。チームは07年6月、コンサル会社に約700万円で建設費の見積もりを委託し、同社は翌7月、現在地での建て替え費用を85億5000万円、移転して更地で新築する費用を79億円とする報告書を市に提出した。
 しかし、市幹部から「診療を続けながら建て替える費用にしては安過ぎる。病院建設の実績が豊富な大手ゼネコンの意見を聞くべきだ」との意見があり、職員2人がゼネコン3社に無償での見積もりを依頼した。
 市総務企画局企画課によると、コンサルの報告書を渡して現地も案内した結果、3社がおおむね「報告書の1・5倍は必要」と回答したため増額したという。
 一方、人工島への移転費用について、チームは最終的に87億7000万円と試算。他の移転候補地も含め、建て替えの場合とコストなどを比較し、同年12月、人工島移転が望ましいとする最終報告書を発表した。



福岡市長ら4人に告発状、こども病院文書毀棄容疑で(2009年3月2日 読売新聞)
 福岡市立こども病院・感染症センターの建て替え費用について、市がゼネコンから聞き取りした文書を破棄した問題で、市民団体「博多湾会議」は2日、吉田宏市長と■川(つるかわ)洋副市長、聞き取りを行った市職員2人について、公文書等毀棄(きき)容疑などで、福岡地検に告発状を提出した。
 告発状によると、2007年7月頃、こども病院の移転計画を抜本的に見直していた市の検証・検討チームは、コンサルタント会社が見積もった約85億円の建て替え費用を「余りに低額」としてゼネコンから聞き取りを行い、約128億円に上乗せしたが、聞き取り文書は破棄した。文書は「公務員が職務上取得したもので、公文書にあたる」とし、破棄は公文書等毀棄罪などにあたると指摘している。
 告発文を提出した同会議の脇義重事務局長は「告発状を受理してもらい、司法の立場から問題が明らかにされることに期待したい」と話した。
 破棄した文書について市は「メモにすぎず、公文書には当たらない」と主張している。吉田市長は「メモの廃棄に法的な問題はないと考えている。地検から具体的な要請があれば協力する」との談話を出した。
※■は「雨」の下に「鶴」




コンサルに700万円払って、現地建替えの見積もりを委託
        ↓
「見積もり結果が安すぎる」として、職員がゼネコンに無償での再見積もりを依頼
        ↓
現地建替えの見積り額が、1.5倍に膨らむ
        ↓
人工島移転で決定(再見積もりの根拠となる資料は全て破棄)
        ↓
市民団体「再見積もりの資料を破棄したのは公文書等毀棄罪にあたる」
市長「メモの廃棄に法的な問題はない」                  ←今ココ


確かに、意思決定をするためのメモは、公文書にはあたらないかもしれない。
ただ、これほど重大な意思決定を、聞き取り・メモ書きに基づいて行い、
意思決定の後は廃棄してしまうというのは、問題がないか?
ゼネコンが無償で再見積もりを行い、見積額が1.5倍になり、その資料は廃棄済み。

・・・何と手際の良いことで。


この市長は、人工島事業を白紙から見直す気があったのか?
形だけの検証・検討チームを作り、見直しのために時間と金を費やし、
結局は当初の計画通りに事業を進める。
文句を言われても
「見直すとは言ったけど、ストップするとは言ってないよ?」
で問題無し。


本日の教訓

行政は、新規事業を起こしてはいけません。
始めるのは簡単ですが、動き出したら止めるのが大変です。
新規事業を起こすのではなく、既存事業の縮小・廃止に全力を注ぐのです。
本気で縮小・廃止に取り組んで、ちょこっとだけ縮小できるのが関の山かもしれないけど。
形だけ・ポーズだけの見直しなら、何も変わりません。