ここ数年、金冠が欠けたり、親知らずが痛んだり、歯科系の調子が悪くなるのは決まって正月明け、さもなければ寒の真っ最中。雪国住人にとっていっちばん通院したくない時期にピンポイント。それでも痛い、噛めないのは辛いから雪道を押してかよって、その挙句歯は治っても風邪をもらってくる、というのも恒例になっています。
歯医者に行くと、なぜもれなく風邪がついてくるんでしょう。空気中に悪玉菌たっぷりの歯垢を削った微粒子が飛散してるのか、ギーギーシューシュー削られる時の身のすくむ緊張感が免疫力を低下させるのか、ただ単に風邪の流行ってる時期めがけて歯を悪くする自分の日頃の行いが問題なのかは不明。
今年もその定番コースをまっしぐら。三回めの通院から帰宅した途端、たちまち寒気と頭痛、鼻水。薬より温ったかくして早寝をと高齢家族の経験知にあふれたお勧めで、早々と床に就いてはみましたがいまどきお子ちゃまだって9:00台にはお寝んねできないっつの。結局火曜ドラマゴールド『らんぼう2』を寝床視聴。
『~2』ってくらいだから『~1』もしくは無印も放送されたんでしょうね。評判が良かったからの『~2』なんでしょうか。
赤池ことイケ(坂口憲二さん)と大浦ことウラ(哀川翔さん)の熱血刑事コンビ。刑事もので、対照的な個性のふたりがときに衝突し合い、ドヤしたりドヤされたりしながら結局相互補完し合って事件解決…というお馴染みのフォーマット、最近はテレ朝『相棒』が出世頭ですね。古くは『あぶない刑事』シリーズも、ちょっと色合いが違うけどこの系列でしょう。テレ東水曜ミステリー『黒豆コンビ』も定着してきてるか。なんとなく、コンビのキャスティングさえうまくいけば、まずハズレのない系統、という気もします。
然るに『らんぼう』、イケとウラ、なんだかオサマリが悪いんです。『わるいやつら』のテレ朝金9清張シリーズじゃありませんが、こちらはUS製パルプフィクション風質感を狙ったのか、画面が青い。清張シリーズが蒼黒いとすれば、青黄色い。
それはまぁ好みだからいいんですが、肝心の刑事コンビが、うまいこと凸凹していない。対照性が薄いんです。Vシネ王哀川さんが、ヤクザっぽい、闇社会に精通してそう、規則も前例も吹っ飛ばせな感じなら、対する坂口さんはおっとりボンボン然としているかといえば、そうでもないし、四角四面で融通が利かない感じでもない。アタマで計算するタイプでもない。両方とも同じくらいはみだしで、同じくらい体育会系、同じくらい巻き舌でガラッパチ。
かと言って「アニキ、ついて行きます」的上下関係もなさげ。要するに、どっちが凸でどっちが凹なのか、ある局面でどっちがアクセルでどっちがブレーキなのか、どっちが実働要員でどっちが司令塔なのか、どっちが何を得意とし何を不得意にしてるのかがよくわからないから、ふたりの共闘にも、単独行動シーンにもいまいち痛快味がないのです。コンビで居る意味があんまりない。
加えて、ウラの元相棒という設定の小沢真珠さん、この人はこういう“男ふたりの紅一点”ポジションはまったく似合わないですね。『劇場版・仮面ライダーアギト』で野望を持つ女自衛隊幹部を好演していたように、組織人間、上昇志向、男社会に肩肘張って…といった属性は向いている女優さんなんですが。鋭角的なお顔立ちだから、コミカルなタッチが似合わないってことなのかしら。昼ドラでは有名な「あんたなんかブタよ!」「誰のマワシモノだぁー!」とか、ストーカー男にフォーーーって唸りながら粉末消火器噴射など、伝説の大爆笑ゼリフ、抱腹絶倒シーンを数々演じてくれているのに。
『アギト』のタイトルが出たついでみたいですが、コンビの潜入捜査先がホストクラブということもあって、このドラマ、美形俳優、特に特撮系の大博覧会。『仮面ライダーThe First』の黄川田将也さんが変温動物的、両棲類的ヌメッとした存在感でそこそこ凄みある主犯役。ちょっと見よりミズっぽくない、性格いい子?と思わせてだんだん変貌していく辺り、演技的にいちばん噛み応えがありました。
父親の復讐に燃えるあまり彼の企みにまんまと利用される、痛い系かわいそ役で『特捜戦隊デカレンジャー』のレッド載寧龍二さん。彼には『富豪刑事』の美和子様あこがれの西島刑事というもうひとつの嵌まり役もあるので、逮捕する側の役じゃないと、まだ違和感がありますね。て言うか出番の絶対量が少な過ぎ。『デカレン』でのバンがすでに振り幅のかなり広いキャラだったので、芝居の引き出しはもっともっとあるはず。
『龍騎』のナイト松田悟志さんに至っては、アレ、いま蓮いたよな?と思った途端に、セリフらしいセリフもなく殴り倒されて逮捕されてやんの。美形ついでみたいに高杉瑞穂さんもくだんの店の№1ホスト役で出ていましたが、酒井敏也さん扮するおかまバーのママ(ヅラがナイス!)に惚れられ貢がれてるという設定からいってもっと美味しい場面があるかと思いきや、ただ悪かっただけ、それも頭目じゃなく、手先。せめて黄川田さんぐらいの役あげられないものでしょうか。
お子さまたちのヒーローも、ママさんたちの昼下がりの王子さまも、役者として輝き続けるための道は細く険しいのね…と感慨に浸りそうになったとき、ふと気がつけば、このドラマ、ホストクラブが主要舞台になるお話とは言え、“女の子使ったエロ”要素がほとんど皆無なのね。つまり、刑事ドラマとは言っても、おじさま、お父さん、お兄ちゃんの客はお呼びでなく、ひたすらF1~F3の女性軍御用達仕様なわけ。
刑事コンビの凸凹ぶりがもうひとつ冴えてない原因も、そこらへんにあるのかも知れません。