やっとノッてきたかなと思った『華麗なる一族』、第5話はちょっと中だるみ。鉄平が岳父の献金スキャンダルリーク元追及に感情的になってた分、小が大を食う銀行合併と高炉建設という、企業もの、謀略サスペンスとしての本筋があんまり進まなかったし、昭和40年代になお色濃い封建的家父長制度に圧し潰されっぱなしな女性キャラ陣の情けなさ、まだるっこしさがここへ来てなんとも目障りになってきました。
豪邸に住んで高い服を着てはいても、結局“女はいい家に嫁いで、夫の出世のために尽くし、跡継ぎを産んでナンボ”という価値観のもと、みんなウジウジ、オドオド、ビクビクしながら暮らしているだけで、贅沢や社会的地位をひとつも楽しんでない感じ。
まぁ当時の“旧家”“名家”と呼ばれる一族の女性は、スケールの大小に応じてみんな多かれ少なかれこんなふうだったのだろうから、ことさら情けなく描写しているわけではないのでしょうけど。
原作にあった万俵家三女・三子が今回のドラマ化では抹消されているのが惜しまれます。上の兄姉たちに比べて躾けも厳しくなかったこともあって、自分の出生や環境をひとつも否定的にとらえず、何不自由ない財閥の娘という立場をエンジョイしているキャラで、我々名もなく貧しい一般庶民がイメージする“金持ちお嬢さん”にいちばん近く、わかりやすい人物。74年版では当時の新人女優・山添多佳子さんがおっとりした雰囲気を出して好演していました。
親世代、兄姉たちのシャレにならない情念シリアス度合いを対照的に浮かび上がらせる意味でも、惜しいキャラをカットしちゃったなと思います。
第5話で独走で輝いていたのは、鈴木京香さん扮する高須相子。“万俵家の閨閥作りは私にオ・マ・カ・セ”状態だけれど、考えてみれば、お妾さんですからね。この日も二子の見合い相手を紹介してもらうために駐仏大使夫人と会う場面がありましたが、もし月河が名家の夫人で、年頃の独身の息子に“家柄育ちのいい娘さんを嫁にもらいたい”と考えていたとして、財閥総帥=都銀頭取の次女と縁が繋がったらそりゃ嬉しいけど、どうぞどうぞと引き会わせてくれるのが、頭取の奥さんでも姉妹でも、伯父伯母でもなく“頭取のお妾”だったら、そんな家で育った女の子じゃちょっと…って引くと思うんですけど。
大蔵省次長である美馬(=万俵長女の嫁ぎ先)とも懇意(夫の東大後輩?)らしき駐仏大使小泉夫人、相子に「あなたも大したものね、頭のいい女性はワタクシ、嫌いじゃありませんわよ」って、聞きようによってはえらい皮肉とも取れる言い方をしてましたが、ラマンの国・フランス生活が長いからそういうことにはさばけているセレブを取っ掛かりに選んだ相子の眼力、政治力恐るべし、ってことなのか。
こうなったら、…さぁ万俵家の閨閥プロジェクト発動!と同時にBGMを007のOPテーマ、もしくは『ミッション・インポッシブル』のテーマにして、相子が脳内の電話帳のページをサァ~と繰って「奥様はご在宅でいらっしゃいますか」「折り入ってお願いがございますの」と電話かけまくったり、クロゼットをバーン開けてVIP夫人と会談のためのスーツを選んだり、パンプスカッカッ言わせて見合い場所の下見に赴いたり、呉服屋を座敷に呼んで「違うわね」「もっと格調の高い柄ゆきはないの」「これでは先様に釣り合わないわ」と駄目出ししながら着物見立てさせたり…という1分30秒ぐらいのシークエンスが欲しいですね。
企業の買収だ合併だより、ずっとサスペンスフルで華もある知略ドラマになるじゃないですか。