柳沢厚労相、もう何言っても、クシャミしてもシャックリしてもドツボですね。
彼が「若者の大多数は結婚して、子供を二人以上持ちたいという健全な希望を持っているので、健全な希望にこたえる政策を打って行きたい」と言ったのに対して「じゃ、子供一人か、子供を持たない者は、健全ではないのか。撤回せよ」と言われ「撤回しなければならない理由がない」と言って、これがまた反感を買いデフレスパイラル、蟻地獄。
でも前回の“女性を産む機械に喩(たと)えた”発言と、今回の発言とは、反感の買い方のコードが違っているような気がします。
前回のは、思いきり善意に解釈すれば、わかりやすく表現しようとしての勇み足ともとれるけど、今回ばかりは、彼の思考回路の中の“1匹いれば100匹いる”ゴキブリの巣窟をさらけ出しちゃった感。
子供何人だって一緒。ある種の人生の選択、もしくは選択の結果おかれたある種の状況を指して“健全”と称すれば、そこに該当しない者を“不健全”と称することになって、いまの日本人、特に出産子育てコンシャスな年頃の女性はこういう言われ方にものすごく神経を逆撫でされるわけ。
そもそも、すでに合計特殊出生率は2.0を割って久しい、つまり好むと好まざるとにかかわらず、生涯に子供一人未満のほうが多数派になっている現況で、この発言の文脈に“健全”という表現を選ぶ言語センスが信じられません。世の多数派を“不健全”にくくっているに等しいんですから。
「撤回しなければならない理由がない」…この人のセンスならむべなるかな。理由は歴然とあるんだけど、彼のセンスでは見つけられないんです。
彼の頭の中には、このたぐいの、非現実的な“健全”概念が、少なくともあと100はあるはずです。
この人に、強いて同情の余地を見出すとすれば、“健全”とか“普通”“当たり前”などという言葉に対して、日本人が史上かつて無いほどナーバスに狭量になっている時代に、“厚生”“労働”大臣を仰せつかってしまった巡り合わせの悪さでしょう。