『わるいやつら』に引き込まれるのは、すでにこのブログで何回触れたかわからない昨年夏の昼ドラ『美しい罠』との共通点が非常に多いからかも知れません。
まず何と言っても①ヒロインが看護師であること。
『美しい罠』の類子(櫻井淳子さん)は元・看護師、『わるいやつら』の豊美(米倉涼子さん)は現役勤務中の看護師という違いはありますが、看護師の資格に基づき、看護師以外ではできない技術をもって悪事にかかわっていくのは一緒。
②ヒロインが悪に手を染める動機の根底に、主犯たる悪い男への、不確かな恋愛感情があること。
豊美は、一度は二股三股の不実を知って振ったはずの戸谷(上川隆也さん)が、不倫相手の深情けに追いつめられ窮地に陥っている現場に居合わせて、看護師独特の“困ってる人は助けなきゃ”本能と「いま助ければ、この男にとって唯一無二の存在になれるかも」という無意識の打算とで、思わず完全犯罪を示唆してしまいます。
類子は表向き「人生は退屈な日常の繰り返しではなく云々カンヌン」とか何とか理由を並べてはいたけど、ナニ、要は計略結婚をもちかけた槐(高杉瑞穂さん)に軽く一目惚れ、「女としてじゅうぶん使える(魅力ある)私を、この男、本当に道具としてしか見ない気?上等じゃない」という一種の意地、「企みに乗って、成功させてのければ、他に想う女(=槐幼なじみの澪)がいたって、私から離れられなくなるわ」というこちらも打算がはたらいて、富豪への色仕掛けを承諾。
いずれも“共犯になることで男との絆を築き、不動にする”という動機。
さらに局面が進むと、今度は、
③やはり看護師という立場と技術を使って“男の殺人計画を食い止め、共犯継続を拒否することで男と敵味方になるが、実は、男が罪を重ねるのを阻止している”。これも両ドラマに共通の展開。
すべての女性に共通とは思いません、個人差はあると思うので軽率に一般化はできないのですが、世間的に感心されない、素行も良くない男に「悪い人だけれど、根は他の人にない純粋さ(孤独、情深さ、優しさetc.)を持っていて、それは私にしかわからない」「世界中で私ひとりだけが、あの人を理解して、救ってあげることができる」というタームで惚れる。そういう状況を好む心理が、女性にはあるんじゃないでしょうか(月河はあります)。
この両ドラマ、そんな潜在的嗜好を遠回しにツンツン、ズンズンつついてくるストーリーになっているんです。
『わるいやつら』のほうは現在進行で放送中なので、今後はどう構図が変わってくるかわかりませんが、④男が、ヒロイン目線で見ると“いっちばん自分と対照的な、自分が持っていないものばかりを何不自由なく持ち合わせた女(『美罠』の澪=木内晶子さん、『わるやつ』の隆子=笛木優子さん)”に夢中になっている、というフラストレーティングな図式も一緒。
さらに、⑤くだんの男とは対照的な、善意や忠誠心そのものでヒロインに好意を寄せる純朴な青年(『美罠』草太=水谷百輔さん、『わるやつ』葉山=平山広行さん)が、ヒロインと男との間を勘ぐって邪魔する、という脇ストーリーも。
ここまで重層してくると、何となく、『美罠』のラストの感動を、そっくり裏焼きにしたような、ネガティヴのカッタマリな結末を『わるやつ』には予想したくなるのですが、さて、どうなりますか。