イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

北ーーー!

2008-12-13 18:30:18 | お笑い

ものまねの山本高広さんという人、駄洒落じゃないですが“ピン芸人の極北”ですね。

初めて顔と名前と持ち芸が一致したのは、夏頃、確か『お試しかっ!』の“女子中学生にウケる芸人No.1は?”だったような気がしますが、とにかく文脈は忘れたけどなぜかタキシード上下で出ていて、ヘンに生っ白いアバウトな顔立ちと若メタボな体型とも相俟って、プロものまね芸人と言うより、局のおもしろ(いと内輪では言われている)スタッフさんがサブMCとして引っ張り出されて来たのかと思いました。

唯一の印象は、看板芸ということになっている織田裕二さんのものまねが、微妙も微妙、超大微妙だったということ。例によって仕込み臭い、妙にルックス平均値の高い女子中学生ちゃんたちにも30%ぐらいしかウケてなかったと思います。TV露出し始めた頃の小島よしお、小梅太夫、波田陽区など、一目瞭然に一発屋だったピン芸人と比べても、抜きん出た微妙さでした。ひょっとしたらこの人、月河が知らないうちにすでにブレイクして、売れ方の旬も技量のピークも過ぎた人だったのか?と首をかしげたほど。

90年代前半のものまね番組で、“横顔だけ(それも右向き限定)吉田栄作”という人がいて、ブリーチジーンズに白Tインして歌ってる間も、歌後のMCとのトークの間もカメラ探しては必死に右向き続けて逆に笑いを取っていたものですが、山本さんの織田裕二マネは、“微妙であることをネタにしてもいいかどうか周囲が逡巡する感じ。

すでに『お試し』収録の頃から、織田裕二さんの事務所サイドから圧力的な動きがあってやり辛くなっていたのかな?と後から考えてみたりもしましたが、織田さん側に肩入れするわけじゃないけどあれくらいの実績とキャリアと、安定した人気のある俳優さんが、笑かし路線のモノマネされたこと単体でそんなに神経質になるともどうも思えないんですけどね。ひょっとしたら月河同様「TVで披露してギャラ発生するプロレベルの芸として認めていいのか?」というところで当惑したんじゃないのかなぁ。そこらの居酒屋のコンパでアホ学生や職場のひょうきん者が演って座を寒くしてるレベルと大差ないんだもの。

世界陸上MC限定なら、キャン×キャンのほうがずっと前から演っていたし、ご本人たちも“オンバトヒーローズ”で、「“似てるモノマネ”より“(観客が誰某のモノマネだと)わかるモノマネ”を目指した」と回顧している通りの催笑感もずっと強かった。報じられているように織田さん側が「本人のイメージを大切にしてもらいたい」とか何とかケチくさいことを言い出すのであれば、キャンのほうに先に行ってもよかったですよね。露出量が桁違いに少なかったからか。あくまで漫才メインのネタの、“接続詞”みたいな一部分だったから看過されたのかな。

俳優さんでも、政治家でも、それ以外の有名人でも、ものまねのプロにマネされてウケるというのは、“有名さ”“認知度”において世間のライセンスが得られたようなものですからね。「贋物が出回ってこそ一流ブランド」というのと似ている。イメージどうこうと言うなら、『オレたちひょうきん族』で若かりし頃の明石家さんまさんが眉細く描いて演ってた幸田シャーミンさんや、ビートたけしさんが顔に肝斑描いてた岡本太郎画伯、78年前のラサール石井さんによる和泉元彌ママのほうがずっと毒気があり、「本物が見たら、いろんな意味でたまらないだろうな」と思わせてくれた。

俳優さんとモノマネの関係で言えば、いちばん強烈だったのは『ひょうきん族』時代の片岡鶴太郎さんによる近藤正臣さんでしょうね。もうちょっと前、小堺一機さんも(田村正和さんとの抱き合わせで)演ってたかな。青春もの、文芸原作ものなどシリアスなドラマの重い二枚目役が多く、遅咲き(三十路近くなって高校生役)だったことも相俟ってますます重いキャラが固定しかかっていた近藤さん、「シリアスで二枚目だけどこの人、なんかどっかヘンだよな?」と皆が思っていた、その“ヘンさ”がどこからどう来るものなのか、鶴太郎さんや小堺さんのモノマネによって初めてつまびらかにされた。「この人の演技や存在感にはこういう可笑しがりどころがあるんだから、シリアスなドラマでシリアスな役を演っていても、この角度から見てこうツッコむのもアリなんだ」ということも同時にわかり、近藤正臣という俳優の“消費の方法論”が格段の飛翔を遂げた瞬間でもあったのです。

現在の近藤さんは『秘太刀 馬の骨』や『陽炎の辻』などの時代劇でも現代劇でも、二の線な、あるいは気障なだけでない味のある、クセのある老け役を見事に披露してくれていますが、彼の演技力量や努力単体ではこんなにスムーズに方向修正できなかったかもしれない。

その点、織田裕二さんは、“ツッコまれ開眼”前の近藤さんらに比べ、あらかじめ消費の間口が広いと言えば広い。

『踊る大捜査線』シリーズがあまり口に合わなかった月河は、いまだに織田さんと言えば『振り返れば奴がいる』のような作品で、司馬先生のような役をもう一度演ってくれないかなと思っているのですが、『東京ラブストーリー』のカンチに始まり『お金がない!』『冗談じゃない!』のようなシチュエーションコメディに近い作品、『真夜中の雨』のようなラブサスペンスメロ、「“月9”という世間イメージのパロディ」に等しかった『ラストクリスマス』、『椿三十郎』リメイクのような企画モノ(と言っていいでしょう)、数々の主題歌歌唱、そしてご存知青島刑事、世陸MCまで、とにかくストライクゾーン…と言って甘ければ“バットに当てられるゾーン”が広いので、「コレを演れば織田裕二に見える、織田裕二モノマネだと皆がわかる」取っ掛かりが多すぎる。逆に織田さん側からすれば、ひと頃の近藤正臣さんや、コロッケさんを得た美川憲一さんのように“モノマネされて、販路が広がってラッキー”を感じる要素が極めて少ないでしょう。

今回の騒ぎ(ってほどでもないのかな)で、「大物俳優のくせに一介の一発屋モノマネ芸人に目くじら立てるなんてスケールの小さい人だ」とイメージを悪くしたとしたら、先般の久々の月9主演作が不振に終わった後でもありちょっとお気の毒。

月河としては、山本高広さんと2ショットで、大塚製薬“ULOSCMパロを披露してくれたら一気に好感度上昇………いや、やっぱり司馬先生リターンズのほうが観たいかな。

企画的に無理ならば、戦隊シリーズでリオ様(@獣拳戦隊ゲキレンジャー)、ガジャ様(@轟轟戦隊ボウケンジャー)のような顔出し悪の幹部に扮してハジけてくれたらもう、めちゃめちゃ大歓迎です(もっと無理か)。

コメント
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