世間の趨勢にすがすがしいくらいきれいに流されるウチの高齢家族、NHK大河『天地人』のチビ与六こと人気子役の加藤清史郎くんにもちろんベタ惚れで、放っといたら「免許ないけど飾っとくだけでもいいからトヨタのクルマ補助金で買う」ぐらい言いだしかねない勢いなので、昨日の夜8:30頃「時代劇の格好でも、こども店長でもない清史郎くんが見られるかもしれませんよ」「ただし、昆布しょうゆの着衣復帰作で、極道の若い衆がわけあって介護ヘルパーに転職するみたいな漫画チックなドラマだと思うんで、騙されたと思って見てみて、清史郎くんの出番があんまりなかったら打ち切って寝たらいいんじゃないすか」と知恵つけてみたところ、揃って食い入るように見る見る『仁侠ヘルパー』。
第1話拡大枠。23:00過ぎまで寝ないでドラマ観てるなんて彼らにとっては年に何回あるかという話です。草彅さん扮する彦一に頬っぺたギューされて「れし(弟子)にしれくらしゃい」と言う場面なんか「かわいーー!!」「頬っぺた赤くなってるぅーー!!」とか萌え痙攣起こしそうになってやんの。そりゃギューされたら赤くぐらいなるだろうよ。ガキだって生身の人間なんだからよ。
おまけにいつの間にか、帰宅した非高齢家族まで一緒んなって「かわいー、ふぎゃー」っつってるし。何で人間って、「かわいい」という感想を“バカのようになる”という行動で表すんだ。
ったくね、自民党も民主党も解散総選挙だの何だのガタガタ言ってないで、総理も大臣もみんな8歳か9歳の子供にしちまえばいいんだよ。「しょうひれーりつじゅうごぱーせんとにひきあげましゅ」とか言ったら高齢組全員「かわいーー!!」っつってホイホイ喜んで身上潰すまで税金払い倒すから。
…………ちょっと疲れてるかな月河。
まぁ与六人気あやかり含みのキャスティングではあったかもしれませんが、月河も22:30過ぎぐらいから背中音声視聴で合流したところ、どうしてなかなか、引き込まれるじゃありませんか『仁侠ヘルパー』。
2時間サスペンスでよくある“芸者で弁護士”とか“板前で探偵”とか“ラーメン屋で刑事”みたいな、対照的な職業属性をくっつけた意外性っきりの他愛無いドラマかと思いきや、介護現場の現実、事業者側の本音を、耐え難くならない程度に織り交ぜて、人間の善い面と悪な面、言葉やお為ごかしの優しさと根性入った誠実さの対比、ガチ勝負!という骨太なテーマ性もある。
草彅さんのドラマ主演復帰作というところがいちばん注目されたかもしれませんが、そんな視点から取り扱うのは失礼もはなはだしい。萌え狙いやジャニーズファンに媚びただけではない、十分大人の鑑賞に耐える作品ですよ。
認知症の徘徊おばあちゃん(池内淳子さん)がクルマに傷をつけたとチンピラグループに因縁をつけられて、おばあちゃんを庇って彦一が袋叩きされるに至る一連のシークエンスなんか素晴らしいテンションでした。こんなに演出も洗練されたドラマなら万障繰り合わせて冒頭から観るんだった。再放送ないかな。
彦一が砂浜に引きずられて行く場面で流れていた音楽の、ハイテンポな中にも蹴っつまずいたような、泥沼で足取られたような、じれったくたぎたぎしいリズムの曲も最高。主題歌がSMAPなのはEDクレジットでわかりましたが、劇中曲はCD化されるかしら。
しかもチンピラ軍団の気障なリーダーは昨年夏の『白と黒』の小林且弥さんでしたよ。うわー紫のシャツ。『白と黒』の章吾は清廉すぎておもしろみのない“ミスター良識”でしたが、ぬめーっとふにゃーっと、生ぬるく人をコケにした感じが、持ち前の長身と相俟っていい感じ。基本、コワモテではなく優しい顔立ちだから、いっそう嵌まる。むしろこういう不気味な役のほうが合っているのかも。彦一の所属する組と対立する団体の若手構成員という設定ならば、今後も出番があるかもしれません。
彦一の僚友設定らしき若い衆を演じるヤングイケメンくんたちは、『仮面ライダーカブト』のぼっちゃま山本裕典さんぐらいしか顔と名前が一致しませんが、スケバン刑事か『愛と誠』の高原由紀かという目ヂカラの黒木メイサさん、渋い声と顔でちゃかちゃかあたふた走り回る施設長大杉漣さん(←『コールセンターの恋人』での松重豊さんを思い出しました)、ビジネス現実主義者のものすごいオーラで圧する“女性版和製ハゲタカ”みたいな夏川結衣さんと、終盤20分ぐらいほわぁと視聴しただけでも脇ががっつり締まっています。
気がつけば、清史郎くんマジックで一時的にバカになっていたウチの高齢組も、「暗い情熱をグッとハラにしまい込んだ感じで、“草ナントカ”って子が思っていたよりはるかに演技がうまくて驚いた」「目が細いから、“きむたく”みたいに目ヂカラで演技するタイプではないけどツラダマシイがいい」と、観るべきところは見ていた模様。
木曜日夜22:00~の、このフジテレビ系の枠は、03年『Dr.コトー』『白い巨塔』あたりから、かなり濃くて大人志向なドラマを充てるようになってきていますね。倉本聰さんの『風のガーデン』や山田太一さんの『ありふれた奇跡』となると、かついでる名前が重すぎて月河なんかは1話も見ないで敬遠してしまったクチなんですが、今作は当たりの予感。
少子高齢化社会における介護問題と言えばいま、日本一洒落にならない深刻なテーマですが、重くシリアスなテーマであればあるほど笑いを帯びて表現しなければいけないし、社会のダニ=ヤクザが介護で働くという噴飯ドふざけなモチーフだからこそ、逆に鼻血が出るほどとことんくそまじめに取り扱わなければならない。
まぁそうは言っても所詮はフジ系ゴールデンで、かつSMAP主演ですからどこまでもゴリゴリ硬派というわけにはいかないでしょうけれど、ちょっと期待してウォッチしてみましょうか。