イギリスが誇る中世の偉大なる詩人、ミルトンの子供版とたとえられたわずか8歳のジェラルド・ボストックによる叙事詩にジェスロタルのイアン・アンダーソンがメロディーを付け完成させた1972年のジェスロ・タルのトータル・アルバム、Thick As A Brick(ジェラルドの汚れなき世界)でも。
タイトル曲1曲のみがアルバム両サイドまたがって収録された大作で、わずか8歳の子供の創作した叙事詩としてはあまりに比喩的かつシニカルな内容で難解。
もちろん、ジェラルドなる少年は存在せずイアン・アンダーソンの創作で彼らしいジョークの一つで、アルバム・ジャケを飾る新聞記事もバンド・メンバーによる手の込んだ創作。
Thick As A Brick、直訳では“レンガのように厚い”で、即ち“頭が鈍い”とか“愚か者”って意味で、聴き手に対して結構挑発的なタイトル。ただジェラルドと一緒に写真に映っている彼の友達のジュリアがスカートを捲っているので聴かずとも本作が何らかのジョークなんだろうって分かる。
英語がかなり達者な人でもこのアルバムを聴いて難解なジェラルド(イアン)の主張を瞬時に理解出来る人は少ないであろう。
こんな時は何回聴いても難解な歌詞は諦め、彼らのシャープでキレのある演奏のみを楽しむ一択ですかね。
私にとっては難解なプログレ・バンドのジェスロ・タルではあるが欧米ではかなりの人気者。このアルバムは全米・英それぞれ1位と5位を獲得。