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大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

小説学校時代・05 昔は自習監督なんか無かった

2020-06-05 07:46:49 | エッセー

小説学校時代 05 

昔は自習監督なんか無かった   


 

 教師時代、しんどい仕事の一つが自習監督でした。

 教師も人の子なので、病気もするし、よんどころない用事もあります。
 で、そういう時は受け持ちの授業は自習になります。
 これは昔も今も変わりません。

 ただ、昔の生徒は「大人扱い」されていたので、自習監督の先生が自習課題などという野暮なものを持ってきて監視するというようなことはありません。
「6時間目と4時間目自習なんで、調整してきます」
 てなことを言って、世話女房タイプの副委員長が職員室に掛け合いに行き、授業のコマを弄り、5・6時限を自習にしてクラス全員午前中でおしまいにするというような要領もかましていました。
 むろん普通に自習になっても、自習監督の先生が来ることはありません。

 無茶をやる生徒も居ましたが、たいていは教室か図書室で本当に自習していたように思います。自習時間中の早弁はおろか食堂で早めの昼食もOKだ。OKどころか、昼休みの食堂の込みようは尋常ではないので、合理的なことだと思っていました。
 先生も生徒もハメをはずすことはめったにないので、こういうことができていた。平和な時代です。

 もちろん、当時も後の時代で言うところの困難校はあったわけで、そういう学校の苦しさは後の時代と変わらないようで、クラブの用事で女子高に行った時、一年生の教室の前に『上級生は無断で一年生の教室に入ってはいけない 学校長』という張り紙に驚きました。

 ごくごくたまに酔狂で自習監督に来る先生が居ました。

 大方は生徒が好きな先生で、来ると一時間いろんな話をしていく。学校の裏話であったり、先生の自分史であったり、恋愛論であったり。あの頃の先生は大正生まれが中心で、年配の先生は明治生まれでありました。大陸や半島からの引揚者も多く、話の中身も分厚く豊かでした。
 けして巧みな話術ではありませんが、実際に体験した人の話は面白いもんです。
 戦争で乗っていた船が撃沈され丸二日間海に投げ出された人。疎開先でいじめにあった話。女郎屋でモテたことを話し半分に聞いたこと、モテたことはともかく、その中で話された学生やお女郎さんの生活、関東大震災の体験談、幼児の頃に見た「生きた姿の徳川慶喜」などというものもありました。

 当時の高校生は、そういう話をきちんと聞くという習慣が身についていたし、下手な話でも頭の中でイメージする力が(今よりは)あったような気がします。
 あの時代、まだ知性や経験で人を圧倒することができたし、そういう大人の知性や経験を、とりあえず生徒も尊重するという空気があったように思います。
 あの時代、教師が、もう少しきちんと生徒に向いていたら、学園紛争や校内暴力による荒廃も、少しはちがったものになっていたような気がするのですが、どうでしょう。

 先生が1時間目と6時間目の授業を忌避して講師につけを回しているようではどうにもならない、後の学校の荒廃は自明の理であったと言えるでしょう。

 
 わたしの教師時代の自習監督は、大げさに言えば命がけでありました。

 自習課題をやる生徒は半分もおらず、居ても10分ほどで適当に片づけてしまい、教室は無政府状態です。
「セン(先生という意味)、トイレ」「あ、おれも」「あたしも」「うちも」「拙者も」
 一人にトイレを許可すると、クラスのほとんどが居なくなることもありました。居なくなった生徒は学校の内外で悪さをするので、身体を張って教室を死守する。対教師暴力の多くが自習監督時間内に起こっていたことでも困難さが分かると思います。
 教務では自習監督表というものをつけていて、自分が出した自習と、請け負った自習監督数のバランスを取り不公平が出ないようにしていました。新任三か月で入院を余儀なくされたわたしは体調不良や通院で自習を出すことが多く、自習監督表を見るのがとても苦痛でした。

 この項、続く……かもしれません。

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小説学校時代・04 大人扱い・3

2020-06-03 16:05:18 | エッセー

学校時代 04 

大人扱い・3『書体』  

 

 1970年の安保改定を前にした二三年、全国的に学園紛争の嵐が吹き荒れました。

 大学の正門やピロティーにベニヤ製のパネルに独特の書体でスローガンやアジ文が書かれて、何枚何十枚と立てかけられていました。ヘルメットにタオルの覆面、ハンドスピーカーでアジ演説しながらアジびらが配られ、時にはカンパの募金箱。

 学生会館やクラブハウスには学校はおろか学生自治会の人間も立ち入れません。講義中にメット姿の活動家学生が乗り込んできて、講義を中断して演説したりカンパを募ったり。意に沿わない教授をつるし上げたり、大衆団交をやって高齢の学長や女子学生が倒れて救急車を呼んだり、とりまいたり。ストをやったりピケを張ったり、学内デモをやったり、騒然とした数年間でした。

 

 これを高校でもやっていました。

 

 制服の廃止、進路別学級編成の反対、生徒の職員会議傍聴要求、中教審答申の反対声明の要求、食堂の値上げ反対……。
 要求は様々でしたが、今から思うと無理難題やイチャモンでありました。

 簡単に言えば、カッコいい大学生の真似っこでありました。正門横に張り出されたアジ看板は、向かって右が見事な東大風、左が京大風です。

 

 ある高校では、制服は非人間的な画一化教育の現れであり、廃止すべきと生徒たちが要求しました。

 そもそも詰襟は、明治日本の軍服が元になっている! セーラー服は水兵服だ! 制服で学校が知れてしまう! 高校生にファッションの自由を! まあ、いろんな理屈がありました。

 結局、その学校は次年度からの制服を廃止しして私服に変えましたが、新入生の大半は自由購買になった旧制服を着て入学式に臨みました。

 どういうルートがあったのか、国連で「わたしたちは、こんな制服を強制されているんです!」と演説する機会を得た高校生たちが居ました。

「そんなに良い制服を着られて、どこに文句があるのか?」

「クールじゃない、制服があったら、毎朝着るものに苦労しなくて済むんじゃない?」

 世界は大半、そういう反応でした。

 その学校は今世紀に入って再び無事に制服に戻りました。

 ある学校では、進路別学級編成を教育差別だとして、半年にわたる紛争になりました。校内のあちこちで討論集会や生徒集会、あるいは大衆団交が行われ、その都度授業がストップしました。ガラスが割られ、空き部室が活動拠点として治外法権になり、酒やたばこも持ち込まれていました。

 学校は手を出せません。手を出せない学校を活動家の生徒たちはバカにして、ほとんど授業にも出なくなりました。

 夏休みを挟んで、朝夕が涼しくなると、多くの生徒が冷めていき、活動家の生徒たちも正気に戻って自分の進路が心配になってきました。

 あっさりヘルメットを捨てて、進路相談のために進路指導室に通うようになりました。相談相手は徹夜の大衆団交でドクターストップのかかった進路指導部長。「こんなことをやっても、学校のためにも君らのためにもならない!」と叫んでいた先生に「反動!」「ナンセンス!」と封じてきた生徒君ですが、先生は咎めません。むろん、生徒も「すみませんでした」の一言もありません。

 ノンポリの大学生の兄に見てもらった書類は完璧な内容でした。生徒は内心『どんなもんだ』とつまらないプライドを守りました。ありがとうございましたの一言も言わずに席を立ちました。

「あ、ひとつだけねえ」

「なに?」

「内容には問題ないがね、その字はだめだよ。アジビラの書体でしょ、書き直した方がいいよ。ま、君の自由だけど」

 そいつは、近場の京大に通って一年がかりで書体を身に着けたのですが、なかなか元に戻らず、それが原因なのか、志望校は全て落ちました。



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小説学校時代・03 大人扱い・2

2020-05-28 15:35:50 | エッセー

小説 

03 大人扱い・2   


 

 もう40年前もむかしになりますでしょうか、一年間に三人の生徒が自殺したことがありました。

 一件は異性との交際を反対されて、もう一件は不登校の果て、三件目の原因は不明です。

 三件目が起こった時、さすがに新聞社の車が学校を取り巻きました。
 三件の自殺に関連は無いように思います。が、この年齢の多感な心理からくる連鎖であったかもしれません。

 しかし、その土壌の、ある成分は共通だと思いました……大人扱い。

 生徒がなにか悩んでいる気配があっても、教師が積極的に関わりを持とうとすることは無かったように思います。「いつも通りで、自殺の気配など無かった」「いつもは普通の子で、こんな飛躍をするとは思わなかった」というのが先生たちの大方の反応だったように記憶しています。
 ここでいう「いつも」と言うのは、日常、あまり生徒と関わろうとしない先生たちの「いつも」です。

 朝礼をやる習慣も六限終了後の終礼もありません。必要な時は昼休みと五限の間に担任が行って一分に満たない昼礼で諸連絡の伝達があるだけです。掃除に付き添うこともありません。月曜と木曜にあるホームルームも担任不在ということが多かったように思います。

 先生たちと生徒の接触の場は、生徒会活動、部活、生徒と教師のサロン(改めて取り上げます)などでした。帰宅部でコミニケーション苦手な生徒は懇談の時ぐらいしか先生と話す機会はありませんでした。

 あの頃の先生は1時間目と6時間目の授業を嫌がりました。

 遅く来て早く帰りたいからです。

 わたしが初めて、週11時間の非常勤講師をやった時、教務から受け持ち時間の希望を聞かれました。
 わたしは学校大好きニイチャンだったので「特に希望はありません」と答えました。
 数日後いただいた時間割表は、見事に1時間目と6時間目で埋まっていました( ´艸`)。つまり1時間目に授業をやったら6時間目までありません。

 大学を出たばかりで、授業内容に自信のなかったわたしは、空き時間で教材研究や教案が作れるので苦にはなりませんでした。

 一か月もすると、わたしを常勤講師だと思い込む先生ばかりになった。

 常勤講師と云うのは、担任業務が無い以外は正規の先生と同じです。分掌の仕事もあれば、会議にもでなければなりません。

 非常勤講師にとってはオフである定期考査の日に家にいると「試験監督入ってるから出てこならあかんがな」と教務の先生から電話が入って来ました。当時非常勤講師が試験監督をすることはあり得ません。常勤講師と勘違いされていました(;^_^A

 三学期に別の高校で休職者が出て非常勤講師の掛け持ちをすることになりました。

 午前中の授業を終えて次の学校に行こうとすると、年配の先生に呼び止められた。

「あんた、こんな早よ帰ったらあかんやろ?」
「え……次の学校の授業なんですけど」
「……え?」

 当時の教職員組合はストをやりました。

 ストの朝「出勤されている先生方、視聴覚教室にお集まりください」と放送が入ったので、非組の先生たちといっしょに視聴覚教室に向かいました。
「今朝は授業が成立しません、ご出勤されている先生方で全教室を周って頂き、出欠点呼をお願いいたします」
 教務部長からお達しがあり、わたしも出席簿を持って2クラスほどの出欠確認に行きました。生徒の校内生活の点検確認ができるのは専任の教師に限られます。厳密な言い方をすれば、わたしが取った出欠点呼は無効とまでは言いませんが、ちょっとイレギュラーです。

 話が逸れかけてきました(^_^;)。

 生徒への対応としての「大人扱い」は、非常勤であるわたしへの対応と近似値であったのではと思います。

「非常勤講師の試験監督はあり得ないと思うんですが」
「え……君が非常勤講師やて思てへんかった!」

「〇〇が自殺しました」
「え……〇〇が自殺するなんて思てへんかった!」

 この項つづく

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小説学校時代・02 大人扱い

2020-05-23 08:10:52 | エッセー

小説時代 02 

大人扱い       


 

 良くも悪くも大人扱い

 わたしの時代、中学と高校の違いを一言で言うと、このフレーズになる。

 今の高校と違って、ホームルームというのは、ロング、ショート共に生徒任せだった。
 学級委員が三か月ぐらいのスパンでスケジュールを組んでホームルームを運営していて、ホームルームの時間に担任が来ないこともしばしばだった。中には授業以外では、ひと月近くクラスの生徒と接触のない担任も居た。

 もう高校生なんだから

 先生たちの建て前は、この言葉に集約された。
 本当に生徒の自主性を思っている先生も居たが、かなりの先生が意味のない放任であった。
 三年生の担任の中には生徒との接触が少なすぎ、卒業式の名簿でクラスの生徒の名前が読めないという豪傑も居たから恐れ入る。

「佐藤信子、高井美代子、小鳥遊(え、なんて読むんやったかな!?)……」という具合。

 委員長の朝一番の仕事は職員室前の『本日の授業』という黒板を確認することだった。全クラスのマス目があって、一日の授業偏向が書かれている。そこに自習時間の表示があると、委員長は六時間目の先生と交渉して授業を繰り上げてもらって早く帰ったりしていた。六時間目の融通が効かないと、他の時間の先生と交渉して入れ替えてもらい、なんとか六時間目が空くようにする。稀に自習が二コマもあると五限も空きにして昼前に下校することもあった。
 昼休みに限らず校門の出入りは自由で、食堂がいっぱいの時などは近所のお好み焼き屋さんなどに行っていた。そういう店は売り上げのかなりの部分を高校に頼っているので、学校もムゲに禁止に出来ないという事情もあったのかもしれない。

「放課後職員室に来るように」

 担任のF先生に申し渡された。
 正直者のわたしは、その日の放課後に職員室に向かった。
 ドアノブに手を掛けてフリーズしてしまった。

『定期考査一週間前につき生徒の入室禁止』の札がかかっていたのだ。

 わたしは、F先生が説明を間違えたのだと思った。また改めて指示があるだろう。
 二日たっても指示が無く、その二日目の昼礼で、こう言われた。
「テスト前だというのにたるんどる。成績悪いから呼び出したのに来ないやつが居る! クラスの順位を一人で下げて自覚も無い!」
 名指しではなく、クラス全員に言うのである。ほかのクラスメートは事情を知っているので、まるで晒し者、凹んだことは言うまでもない。

 十数年後、自分が担任になった。

 朝礼と終礼は毎日やった。成績などで呼び出すときは必ず時間と場所を書いたメモを渡し、入室禁止の部屋に入る時のお作法も教えた。
 
「おまえが、こんな成績とるとは思わんかった」

 生徒の時によく言われたお説教の枕詞だ。

 教師になって、こういう枕詞を使ったことはない。この枕詞は、教師が生徒の実態を把握していないことを自白したようなもので、意識はしていなかったけれど(お前のことはしっかり分かってんねんからな)という意識で接していた。事実成績だけではなく、欠時数・欠課字数・遅刻・早退、他の教師からの指導や注意、本人や保護者との連絡履歴などはリアルタイムで把握していた。中には生徒相互の関係のソシオメトリを付けている先生も居て、本人だけでは無くてマスとしてのクラスを把握しておられた。

 いつの時代であったか、ある高校で一年間に三人の生徒が死ぬという事態に至ったことがあった……。

 この項つづく
 

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小説学校時代・01化学変化の匂い

2020-05-19 12:01:28 | エッセー

小説学校時代 

01 化学変化の匂い     

 

 

 学校はいろんな匂いがするところだ。

 特に、昭和のころの学校は、木造、鉄筋にかかわらず様々なニオイがした。

 床や廊下の油引きの匂い、給食の匂い、脱脂粉乳のニオイ、特別教室のかび臭い匂い、トイレの匂い(水洗か汲み取りかでニオイが違う)、日向臭い子どもの匂い、飼育小屋のニオイ、学級菜園の土の匂い、印刷室のインクの匂い……などなど。

 同じ時代でも、小学校、中学校、高校ではニオイも違った。

 その匂いの中でも中学校の理科室の匂いが好きだった。

 いろんな薬品の匂いがした。理科部とか化学部なんかがあって、そこの三年生などは生徒でありながら放課後は制服の上に白衣を着ていたりして、なんだかそこだけ学校の平均的な雰囲気から突き抜けていた。

 中学三年生の晩秋、担任のU先生に理科準備室に呼び出された。

 U先生は理科の先生なので理科準備室が根城だったのだ。
 新しい実験でもやったんだろうか、放課後の理科準備室は、それまでと違う匂いがしていた。

 弱い塩素系のニオイに、なにか栗でも焼いたような香ばしく甘い匂いが混じっている。

「時をかける少女」で、主人公の七瀬は理科準備室でラベンダーの匂いを嗅いで気を失いタイムリープの能力を身に付けた。
 わたしはタイムリープするような能力はないが、この何か新しい実験をやったような匂いで運命が変わった。

「……ほら大橋、これがA高校を受ける生徒の一覧や」

 数日前から「公立の受験校を変えろ」と指導されていたが、友だちと同じ高校を受けたいわたしはウンとは言わなかった。この日も説得されるだろうと覚悟し、きちんと返事しなければならない、場合によっては受験校を変えなければと覚悟していたが、理科室の匂いで思考も覚悟も緩んでしまう。業を煮やした担任のU先生は、生徒に見せてはいけない受験指導のファイルを開いて見せてくださった。
 それは数ページにわたる成績順に80人ほどが並んだ名列だった。
 見知った友だちの名前がいくつも並んでいて、私の名前は4ページほどめくった最後にあった。
「大橋は、A高受験者の中ではドンケツや。ええか、2ページ戻ったとこに赤い線が引いたあるやろ。ここから下の生徒は受けても落ちる」
「は、はあ……」

 わたしは、受験のことよりも、いつもとは違う理科室の匂いに気を取られてしまっていた。なんだか化学変化を遂げた匂いで、理科が苦手なわたしでも15歳の中学生相応に、どんな実験をしたら、こういうニオイになるのか……少し時めいてしまった。

 小中学校では薬品を使うような過激な化学実験は、まずやらない。
 小中学校の化学実験と検索しても科学実験としか出てこない。中学で化学実験をやっていたのは化学部だけだった。
 放課後は、生徒でありながら白衣を着て、いつも怪しげな薬品の匂いをさせていた賢そうな化学部員たち。
 みんな私とは違う人種に見えた。

 中に一人髪の長い女子がいて、なにかの化学変化の結果ではないかと思うくらいきれいな上級生だった。その時の準備室のニオイは、その上級生を思わせた。

 その化学部の顧問がU先生だったのだ。

「で、どや、志望校変えへんか?」
 先生は目を覗き込みながらとどめを刺すようにおっしゃった。
「あ…………アカン時は私学に行きます。枚方のS学院やから、ま、通りますから」
 滑り止めには、学力相応なS学院に決めていた。
「…………そうか、まあ、ほんなら私学も覚悟の上いうことでええねんな?」

 U先生は、生徒の意思を尊重してくださる方で、わたしの無茶な受験を許可してくださった。根負けされたのかもしれない。

 あの化学変化の薬品の匂いに気を取られていなければ、もう少し突っ込んで話をしたかもしれない。いま振り返っても簡単で無茶な決心をしてしまったものだと思う。

 そして翌春、わたしはA高校の入学試験に受かってしまった。

 K中学始まって以来の快挙だったらしい。

 わたしの合格を知らされたU先生は職員室の椅子に座ったまま30センチほど飛び上がってしまわれたという。

 いま思い返すと、あれはニオイからくる化学変化の一種だったような気がしないでもない。

 人生には、時々、こういう化学変化のようなことが起こる。

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乃木坂学院高校演劇部物語・31『ん……まだ違和感』

2019-11-10 06:30:22 | エッセー
まどか 乃木坂学院高校演劇部物語・31   

『ん……まだ違和感』 


 
 ……薄暗がりの中、ぼんやりと時計が見えてきた。

 リモコンで明かりをつける……まる三日眠っていたんだ。
 目覚めると自分の部屋。当たり前っちゃ当たり前なんだけど、なんだか違和感……。

「あ」

 小さな声が出た。目の前に倉庫から命がけで持ち出した衣装が掛けられている。
 わたしと潤香先輩の舞台衣装。セーラー服と花柄のワンピース。ベッドから見た限り、傷みや汚れはなかった。四日前の舞台が思い出された。なんだかとても昔のことのように思い出された。潤香先輩もこうやってベッドに寝ている。もう先輩は意識も戻って……何を考えているんだろう。わたしはもう起きられるだろう。二三日もしたら外出だってできるかもしれない。しかし先輩はもう少し時間がかかるんだろうなあ……よし、良くなったら、この衣装持ってお見舞いにいこう。そう思い定めて、少し楽になる。

 ん……まだ違和感。

 あ、パジャマが新しくなっている……新品の匂いがする。着替えさせてくれたんだ、お母さん。
 ……まだ違和感。ウ……下着も新しくなっている。これは、お母さんでも恥ずかしい。

「あら、目が覚めたの?」

 お母さんが、薬を持って入ってきた。
「ありがとう、お母さん。着替えさせてくれたんだね」
「二回ね、なんせひどい汗だったから。シーツも二回替えたんだよ。熱計ろうか」
「うん」
 体温計を脇に挟んだ。
「お腹空いてないかい」
「う、ううん」
「そう、寝付いてから水分しか採ってないからね……」
「飲ませてくれたの?」
「自分で飲んでたわよ。覚えてないの?」
「うん」
「薬だって自分で飲んでたんだよ」
「ほんと?」
「ハハ、じゃ、あれみんな眠りながらやってたんだ。ちゃんと返事もしてたよ」
「うそ」
「パジャマは、わたしが着替えさせたけど、『下着は?』って聞いたら『自分でやるから』って。器用にお布団の中で穿きかえてたわよ」
「そうなんだ……フフ、やっぱ、なんだかお腹空いてきた」
「そう、じゃあ、お粥でも作ったげよう」
「あの衣装、お母さん掛けてくれたの?」
「ああ、『衣装……衣装』ってうわごと言ってたから。目が覚めたら、すぐ分かるようにね。今まで気づかないと思ったら、そうなんだ眠っていたのよね」
「ありがとう、お母さん」
 ピピ、ピピ、と検温終了のシグナル。
「……七度二分。もうちょっとだね」
 そのとき、締め切った窓の外から明るいラジオ体操が流れてきた……ちょっと変だ。
「お母さん、カーテン開けてくれる」
「ああ、もう朝だものね」
「あ……朝?」
 カーテンが開け放たれると、朝日がサッと差し込んできた。

 わたしは三日ではなく、三日と半日眠っていたことに気がついた。
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高安女子高生物語・112『惜別 それはバンジージャンプから』

2019-10-09 06:22:33 | エッセー
高安女子高生物語・112
『惜別 それはバンジージャンプから』
   


 

 MNB47の母体はユニオシ興行。日本で一番人使いが荒い。

 当たるとなると、半日の休みもくれへん。これでは、先日の仲間美紀みたいな子も出てくる(リスカやったけど、命に別状は無し。せやけど、休んでる間に、ゴーストライター付きで手記を書かされてる。ほんまに無駄のない会社や)
 あたしらは、まだ売り出し中なんで、来た仕事はなんでもやる……やらされる……やらせていただく。

 今日は、わざわざ新幹線とバスを乗り継いで、バンジージャンプのメッカ岡山鷲尾ハイランドにまできた。

 あたしらはAKBみたいに自分の番組持てるとこまでいってないんで、ヒルバラ(お昼のバラエティー)に10分のコーナーをもろてて、メンバーが、とっかえひっかえ、いろんなことをやらされる。
「ええー、どうしてもMNBの明日香がやりたいというので(だれも言うてません!)この岡山鷲尾ハイランドのバンジージャンプにやってきました。ここはジャンプしながら願い事を叫ぶと叶うそうです。デビューからたった2カ月、どんな願いがあるのでしょうか(決まってるやん、ゆっくり寝かせて!)でも、ここの願い事は、ジャンプするまでは口にできません。しゃべってしまうと効果が無いそうです。で、明日香にはカメラ付きの……」

 ヘルメットを被せられた。顔の前には自撮り、メットの上には、あたしの視線とシンクロさせたチビカメラ。

 ホンマは、メンバー二人が飛ぶはずで、ジャンケンに負けたカヨさんも飛ぶはずやったんやけど、リハでちびってしまうぐらいの緊張なんで、急きょチームリーダーのうちが二人分の内容=おもろさを出して飛ぶことになった。
「なんで、明日香が選ばれたか分かる?」
 MCのタムリが聞いてくる(おまえやんけ、やれ言うたん!)
「え、あ、センターだから?」
「いや、明日香だけが、自分の部屋3階にあるから」
「ええ、マンションの五階とかに住んでるのもいますよ」
「戸建てで、三階は自分一人やから。で、準備は万端?」
「うん、トイレも二回もいってきたし……たぶん大丈夫」
「よし、絶対成功する御呪いしてあげる……」
 そう言うて、タムリはあたしのすぐ横に寄ってきた……と思たら、突き飛ばされた!

 ギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!

 そう叫んだとこまでは覚えてる。
 
 そのあと、あたしはモニターの中からも、みんなの視界からも一瞬で消えて……何かが抜けていったような気がした。
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真夏ダイアリー・29『終日ゴロゴロ』

2019-10-04 06:42:35 | エッセー
真夏ダイアリー・29 
『終日ゴロゴロ』         
 
 
 
 
 千通の年賀状は問題だった。
 
 嬉しかったことは確かだけれど、直ぐに問題に気が付いた。それだけ、わたしの住所、個人情報が漏れているということだ。 
「入りきらない分が、これね」
 千通の年賀状の上に、何通かの年賀状がポンと投げ出された。
  で、この何通かが本物で、段ボールの中味は古新聞だった……やられた、悪ノリのお母さんに。
「どう、目が覚めたでしょ」 
「冗談きついよ、お母さん」
 お雑煮と簡単なおせちをいただきながら、年賀状を見る……簡単なものから手の込んだのまで、いろいろだけれど、パソコンとプリンターで作ったものばかり。その中に、ただ一通手書きのがあった。
 
 あけまして、おめでとうございます。仲間になれてうれしかったです!
 
 エヴァンゲリオン事件で、お仲間になった春野うららからだった。年末のゴタゴタで、クリスマスパーティー以来だったけど、仲間が増えたことは嬉しい。省吾とうまくいけばいいと思った。省吾のお父さんに事実を教えられて以来、省吾は友だちとか、それ以上の関係とかじゃなくて同志、バディーという言葉が相応しい関係になるんだろうなあ……という予感がしていた。
――初詣いこうよ~(^O^)~  と、省吾にメールを打った。 
――今、行って帰ってきたとこ。真夏忙しいんじゃね?  つれない返事が、すぐに返ってきた。
――四日まで、オフだからあ。  これへの返事は、すぐには返ってこなかった。
 で、年賀状の返事を三通ほど書いて、もう一度メール。 
――まあだ? 
――ちょっとタンマ。  と、返ってきた。
 
 書き終えた年賀状を近くのポストまで出しにいった。 
 
「紅白たいへんだったみたいね」 
 ポストに年賀状を入れた直後に、声をかけられた。しまった、変装用のメガネを忘れた。 
「いや、どーも(n*´ω`*n)」  
 振り返ると、わたしが急にアイドルになっちゃった、そもそもの原因である美容師の大谷さんが立っていた。 
「You Tubeで見たよ。クララちゃん大丈夫だった?」 「あ、はい。ただのお腹痛でしたから」 「そうか、わたし、応援してるからね」  
 それ以上カラまれてはかなわないので、そそくさと新年の挨拶して家に帰る。
 ――4日、昼から俺の家で。    
 省吾から、メールが返ってきていた。簡単な内容だったけど、その間に、いろいろ調整してくれたんだろうなあ、と感謝。
 
 で、新年二日目の今日は、梅と葉ボタンにお水をやって、終日ゴロゴロ……。
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真夏ダイアリー・26『時間よ止まれ!』

2019-10-01 07:04:49 | エッセー
真夏ダイアリー・26
『時間よ止まれ!』     




 それはサビの部分でおこった。

 ハッピー ハッピークローバー 奇跡のクローバー♪

 そこで、バーチャルアイドルの拓美が現れる寸前、頭の上がムズムズすると思ったら……なんとライトが落ちてきた!

 グワー!

 アイドルらしからぬ声を上げて、頭を抱えた……てっきり頭の上にライトが落ちてくる……と覚悟した。
 十秒……二十秒……何事もおこらない。
 おそるおそる目を開けると、ライトは空中で静止していた……だけじゃない。スタジオの全てがバグったように静止していた。知井子は、落ちてくるライトにいち早く反応し、椅子から転げ落ちる姿勢のまま固まり、萌と潤は気づかずに、「え?」という顔のまま。その視線の先にはADさん達が落ちてくるライトに気づき、みなライトの方角を見ていた。吉岡さんは、反射神経がよく、わたしたちを助けようとして、フライングした姿勢。
 ディレクターは「危ない!」の「ぶ」の口をして、唾が五十センチほどのところで、壊れたスプレーからふきだしたように、止まっていた。

「やっぱり、キミの力は本物だ」

 スタジオにだれかが入ってきた。
「……だれ!?」
「おどかして、すまん。わたしだよ、真夏さん」
 その人は、明かりの中に入ってきた……。
「……省吾のお父さん」
「最後に、もう一度、真夏さんの力を試すことを条件にしてもらったんだ」
「条件……わたしの力?」
「キミは、時間を止めたんだよ」
「わたしが……?」
 わたしは、世界中が静止してしまった中で、省吾のお父さんと向き合っていることが苦痛で、心臓がバクバクしてきた。
「無理もない、こんなことが起こっちゃ混乱するよね……」
 お父さんは、手のひらをヒラリとさせた。頭が一瞬グラリとしたが、全ての情報がいっぺんに頭の中に入ってきた……。
「……歴史を変えるんですか……このわたしが?」
「そう、わたしたちの時代の人間が遡れるのは、この時代が限界なんだよ。省吾の能力が高いので、しばらくやらせてみたが、あの子だけじゃ無理なんだ。もうバグが出始めている」
「省吾が過年度生だっていうのは、作った情報なんですね」
「ああ、何度か過去とこの時代を行き来させているうちにずれてきてしまってね。それに、なにより……」

「……もう省吾は限界なんですね」

「無理をして過去に行かせているうちに歳をくってしまった。省吾の実年齢は二十歳だ」
「で、自覚もないんですよね、過去に行ってるって」
「そう、任務を与えられ、過去にいっている間は分かっているが、この時代に戻ってきたら記憶は消えている。だから、任務の経験が積み重ならず成果ががあがらない」
「……ばかりか、省吾に障害が出てくるんですね」
「ああ、行ったきり戻ってこられなくなるか、精神に障害が出てくる」
「で、わたしに、これを渡したんですね」
「ああ、真夏さんは使いこなしている。異母姉妹の潤さんにソックリにもなれるし、こうやって時間を止めることもできる。あのライトをもとにもどしてごらん」
「そんなこと……」
「できるよ、キミなら」
 
 わたしは――ライトよもどれ――と念じた。ライトは静かにもとに戻った。

「真夏さん。キミにやってもらっても、遡れる過去には限界がある。我々も研究はしているが、今のところ八十年が限界だ。その限界の中で何ができるか、分かり次第伝えるよ。他の情報は圧縮してキミの頭脳にダウンロードしておいた。ゆっくり解凍して理解してほしい。さあ、もう時間をもどした方がいい。二秒前を念じて、時間を動かしてくれるかい」
「はい……」

 時間が戻り、スタジオの喧噪が蘇った。

「真夏、なに上見てんの。イケメンの照明さんでも見つけたか?」
 MCのユニオシが振ってきた。
「あ、棚からぼた餅!」
「だよな、お前、アイドルになったの、ほんの一週間前の棚ぼただもんな」
「はい、ラッキーガールなんです。ラッキービーム! ビビビビ!」
 みんなにウケた。
「じゃ、ラッキービームで厄落とし。潤と漫才やれ!」
 ユニオシがムチャブリ。

 しかし、めげることなく。潤と漫才をやってのけ、今年も、あと一日となった……。
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高校ライトノベル:連載戯曲:ユキとねねことルブランと…… 5

2019-08-28 05:49:53 | エッセー
 ユキとねねことルブランと…… 5
栄町犬猫騒動記
 
 大橋むつお
 
 ※ 無料上演の場合上演料は頂きませんが上演許可はとるようにしてください  最終回に連絡先を記します

時  ある春の日のある時

所  栄町の公園

人物

ユキ    犬(犬塚まどかの姿)
ねねこ    猫(三田村麻衣と二役)
ルブラン   猫(貴井幸子と二役)
 
 
携帯電話を奪って、もどってくるユキ。その後を血相を変えたルブランが追ってくる。
 
ルブラン: この泥棒犬! 今度邪魔をしたら、許さないって言ったでしょ!
ユキ: 血相変えて追いかけてきたわね。
ルブラン: 誰でも、大事なものをかっぱらわれたら、頭に血がのぼるわよ。さあ、返しなさい、わたしの携帯電話!
ユキ: よほど大事な携帯ね。でも、いまどき携帯をわざわざケースにしまってる人なんているかしら……
ルブラン: 出すな、ケースから!
麻衣: スンゲー! 見たこともない高級品!
ルブラン: いじくるんじゃない!
ユキ: ルブラン……あなた、幸子さんを携帯に変えたわね?
麻衣: え、その携帯が幸子!?
ユキ: そしてこのケースは、携帯にされた幸子さんが逃げ出さないためのイマシメ。
麻衣: そうか、万一ポロリと落っことして、人が拾っちゃったら……幸子って、携帯になっても、お嬢様なんだ……
ユキ: 考えたものよね、携帯に変えれば、肌身離さず持っていても怪しまれないし。そして、思う存分ネチネチ、ビシバシ言葉のパンチをあびせても自然だものね……ケースにもどしては……かわいそう、必要以上にしめあげたのね、皮ひものあとがこんなに……
ルブラン: なにをデタラメを……
 
麻衣、なにかひらめいたらしく、力いっぱい携帯電話に水をかける。携帯といっしょに、ビショビショになるユキ。
 
ユキ: 麻衣ちゃん……そういうことはヒトコト言ってからしてくれる。
麻衣: ごめん、携帯に薬かけたら、幸子にもどるかなって……だって化代にかけたらもどるって……
ユキ: わたしも、そう思ったんだけど……ハックション!
ルブラン: ハハハ……まるで水に落ちた犬だね。さあ返しな。それは高級品だけど、ただの携帯電話。化代なんかじゃないんだよ!
麻衣: くそ!
ルブラン: 知っているかい、こんな言葉……水に落ちた犬はたたけってね!
 
しばし、みつどもえの立回り。おされ気味のユキと麻衣(戦いを表す歌と、ダンスになってもいい)
 
麻衣: ユキ、もうだめだ。こいつにはかなわないよ。
ユキ: あきらめないで。ルブランのこの真剣さ、この携帯、化代に違いない!
麻衣: だって、いくらやっても効き目がないよ……(片隅に追い詰められる二人)
ルブラン: フフフ、バカの知恵もそこまでさ。覚悟をおし……
ユキ: この携帯、高級品……ひょっとして……(携帯の裏側をさわる)
ルブラン: やめろ、さわるな!
ユキ: この携帯は……高級品のウォータープルーフ。つまり防水仕様になっている。
麻衣: さすが、ゼネコン社長のお嬢様!
ユキ: でも、防水仕様は外側だけ、電池ボックスを開けて、内側に、その水鉄砲を……どうやら図星ね……麻衣ちゃん、もう一度この携帯を撃って!
麻衣: よっしゃ!
ルブラン: させるか!
 
ユキが素早く電池ボックスを開けた携帯に、あやまたず麻衣の水鉄砲が命中!
 
ルブラン: ギャアアアアアアアアアアアアアアアアア!
麻衣: やった!
ユキ: どうやら、正解だったようね。わたしの手の中で、幸子さんが、自分の鼓動をうちはじめている。
ルブラン: ……なんてこと……せっかく、せっかく、ルブランの夢がかなうところだったのに……(断末魔のBG、ルブラン倒れる)
 
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高校ライトノベル・『はるか 真田山学院高校演劇部物語・34』

2019-06-13 05:57:48 | エッセー
はるか 真田山学院高校演劇部物語・34 


『第四章 二転三転・5』

「ここには、何度もきてるんですね」

「ああ、サックスのレッスンに行く前とかね」

 先輩が豆粒ほどの小石を池に投げ込んだ。
 小さな波紋が大きく広がっていく。
 アマガエルが驚いて、池に飛び込んだ

「ねねちゃん……クラブには戻らないぜ」
「話してくれたんですね」
「ねねちゃんは、仲良しクラブがいいんだ」
「え?」
「あんな専門的にやられちゃうと、引いちゃうんだって。分かるよ、そういう気持ちは。しょせんクラブなんて、そんなもんだ」
「そんなもん?」
「そうだよ、放課後の二時間足らずで、なにができるってもんじゃない。しょせんは演劇ごっこ。あ、悪い意味じゃないぜ。学校のクラブってそれでいいと思う。前の学校じゃ、それ誤解して失敗したからな。で、分かったんだ。クラブは楽しむところだって。もし、本気でやりたかったら、外で専門的なレッスン受けた方がいい。だから、オレは外で専門にやっている。はるかだって本気じゃないんだろ?」
「え?」

「だって、まだ入部届も出してないんだろ」

「……それはね、説明できないけど、いろいろあるんです」

「はるかはさ、芝居よりも文学に向いてんじゃない?」
「文学?」
「うん、A書房のエッセー募集にノミネートされるんだもん。あれ、三千六百人が応募してたんだろ」
「三千六百人!?」
「なんだ、知らなかったのか」
「うん……」
「十人しかノミネートされてないから、三百六十分の一。これって才能だよ」

 言われて悪い気はしなかったけど、作品も読まずに、ただ数字だけで評価されるのは、違和感があった。

「作品読ませてくれよ」

「うん……賞がとれたら」

 タマちゃん先輩のときと同じ返事をした。
「オレ、大橋サンて人にはフェイクなとこを感じる」
「どうして?」
「検索したら、いろんなことが出てきたけど。売れない本と、中高生の上演記録がほとんど。受賞歴も見たとこ無いみたい。専門的な劇団とか、養成所出た形跡もないし、高校も早期退職。劇作家としても二線……三線級ってとこ」
「でも、熱心な先生ですよ」
「そこが曲者。オレは、教師時代の見果てぬち夢を、はるかたちを手足に使って『今度こそ!』って感じに見える」
「それって……」
「あの人、現役時代に近畿大会の二位までいってるんだ」
「へえ、そうなんだ!」
「おいおい、感心なんかすんなよ。言っちゃなんだけど、たかが高校演劇。その中で勝ったって……それも近畿で二位程度じゃな。それであの人は、真田山の演劇部を使って、あわよくば全国大会に出したい。ま、その程度のオタクだと思う」
「……オタク」
 頭の中が、スクランブルになってきた。

「オレたち、つき合わないか……」

「え……」
「お互い、東京と横浜から、大阪くんだりまでオチてきた身。なんか、支え合えるような気がしてサ」
 池の面をさざ波立てて、ザワっと風が吹いた。

 思いもかけず冷たいと感じた。

「わたし、東京のことはみんな捨ててきたから……」
「え?」
 わたしの心は、そのときの空模様のように曇り始めた。にわか雨の予感。
「ごめんなさい、わたし帰る。テスト前だし」
「おい……付き合ってくれるんだろ?」
「お付き合いは……ワンノブゼムってことで」
「ああ、もちろんそれで……」
 あとの言葉は、降り出した雨音と、早足で歩いた距離のために聞こえなかった。
 背後で、折りたたみ傘を広げて追いかけてくる先輩の気配がしたが、雨宿りのために出口に殺到した子供たち(さっきの)のためにさえぎられたようで、すぐに消えてしまった。

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高校ライトノベル・時かける少女・89・スタートラック『ミナコ コンプリート・1』

2019-05-05 06:00:31 | エッセー
時かける少女・89スタートラック 
『ミナコ コンプリート・1』  
 





 第3惑星にみとれて、気づくとコクピットのみんなが静止していた。

 バルスは、反重力エンジンのモニターを見つめたまま。
 コスモスは、第3惑星をアナライズしようと、アナライザーを起動させようとしたまま。
 ポチは、第3惑星の姿を見ようとして、背が足りない分、ジャンプしたまま。
 船長は、驚愕の眼差しで第3惑星を見つめたまま。
 ミナホは……立ったまま。だけど、呼吸はしていた。ガイノイドの擬似呼吸ではない自然な呼吸に見えた。

「ミナホ、あなた意識があるの……?」

 数秒遅れて、ミナホは小さく頷いた。
「でも、体が動かない……こんなの初めて」
「他のみんなは、人形みたいにフリーズしている。まともに動けるのは、あたしだけ……?」
「そうみたい。わたしは……」
「動き出した、どこへ行くの?」
「分からない。自分の意志じゃないわ……」

 ミナホは、中央のエレベーターに向かった。

「ミナホ……!」
「ミナコ、あなたも付いてきて……」
「待って、行っちゃだめよ!」
 ミナコは、ミナホの腕を掴もうとしたが、逆に腕を掴まれてしまった。
「ミナホ、どこに行くつもり!?」
「分からない……貨物室のよう……」
 ミナホは、第一層の貨物室のボタンを押した。
「ミナホ、いったい……」
 ミナホは、なにか言おうと唇を動かすが、もう声にはなっていなかった。

 貨物室につくと、驚いた。ハッチが開いている。開いたハッチからは第3惑星が大きく、いっぱいに見えた。船は、惑星の周回軌道を回っているようだった。

「うそ……成層圏なのに空気が漏れない」
 その信じられない状況に驚いている暇は無かった。ミナホがミナコの腕を掴んだまま、ハッチから船外に身を躍らせた。
「ミナホ、死んじゃうよ!」

 二人は手を繋いだムササビのように、成層圏を滑空し、やがて大気圏に突入。当たり前だが、空気との摩擦で熱くなりはじめた。
「あ、熱い……!」

 二人は隕石のように燃えながら、地上に落下していき、地上5000メートルあたりで燃え尽きて消えてしまった。

 あたし流れ星……それがミナコの最後の意識だった。

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高校ライトノベル・時かける少女・85・スタートラック『さよならアルルカン・1』

2019-05-01 06:31:23 | エッセー
時かける少女・85スタートラック
『さよならアルルカン・1』     




 ターベの反乱は四:六で、反星府軍の旗色が悪くなったところで終わった。

 ベータ星内のもめごとは、ある程度のところまでいくと国王がタオルを投げる。けして片方を殲滅するところまではやらない。
 長年のベータ星の歴史の中で、ベータ星人が身につけた知恵である。
 最初は、母星のガンマ星と同じく共和制をとっていたが、争い事が絶えず、その度に多くの犠牲者を出し、星府の方針もコロコロ変わり、ガンマ星につけいる隙を与えてしまった。それが今のガンマ星との戦争になっている。

「ラムダ将軍。あなたが、このベータ星を思う気持ちは、わたしも、星府も同じなのです。ただ、やり方が違うのです。わたしたちは、あくまでベータ星とガンマ星の共存を……将軍は、禍根を断つためにガンマ星との決戦を主張しています。そこだけが違うのです」
「わたくしは……」
「ベータ星を繁栄させることで、手を取り合いましょう。ベータ星人同士が戦って、ただでも少なくなってきているベータ星の若者の命を危険に晒すことは避けましょう」
「殿下……」

 これで一件落着である。王室という権威が間に入ることによって、敗北した者も誇りを失わずに済む。そして、いくらかの意見を勝った方が飲み、丸くおさめるのである。
 こういう権威のあり方が優れていることは、地球でも、タイや日本で立証されている。

 今回の場合、問題は、ガンマ星であった。

 どうやら、ガンマ星は、ベータ星の水銀還元プラントに興味があるようだった。副産物としてできる金のことを嗅ぎつけ、それを我がモノにせんと虎視眈々の様子である。

「先帝ご葬儀に臨席した地球の大使が……」
「承知しています、将軍。手は打ちつつあります。ほんのしばらくわたしに任せてください。そして、それがダメなら、星府と話し合い、必要な処置を講じてください」
「しばらくとは……?」
「僭越であるぞ、ラムダ」
「よいのです、ゼムラ大臣。一週間と思ってください。おそらくうまくいくと思います。成否いずれにせよ、これは国王としては越権になります。記録には残さないでください」
「殿下は、まだ女王に即位されておられません。王女の行動記録は、今までとったことがございません」
「ありがとうゼムラ大臣。では、三日は連絡をとりません。万一のときには帝室典範にのっとり妹のアンに皇位を」
「殿下……!」
 大臣と将軍が同時に声と腰を上げたが、王女は笑顔で、それを制した。

「本気ですか、王女!?」

 マーク船長が悲鳴のように言った。
「この三日間は、ただのマリアと思って。あなたたちと力を合わせなければ、この銀河の危機は救えません。そう、たった今から、わたしは予備役のマリア中尉です」
「中尉? 王族の人間なら、訓練中に大尉にはなっているんじゃ……」
「内緒だけど、シュミレーション戦闘で、間違えて味方の一個大隊を全滅させちゃったの。で、頑固なラムダ将軍が、大尉にしてくれなかったのよね。成功したら大尉にしてもらうわ。みなさんよろしく!」
 ミナコたち、クルーは驚いたが、マリア王女……マリア近衛中尉は、さっさと自分の荷物をキャビンに運び入れた。

 さよならアルルカン作戦が始まった……。

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高校ライトノベル・ライトノベルセレクト№79『ホームラン王 残念さん』

2019-02-20 11:26:17 | エッセー

ライトノベルセレクト
『ホームラン王 残念さん』


 

 三郎は今日も不採用通知を受け取った。これで59社目である。

 最初のころは封筒を開けるまでドキドキした。「ひょっとしたら!?」という気持ちがあったからである。
 友だちが合格通知を封筒ごと見せてくれて分かった。

 合格通知はその後に必要な書類や注意書きが入っていて分厚いのである。友だちのそれは80円で足りず90円切手が貼ってあった。
 それから、三郎は封筒を持っただけで分かるようになった。定形最大は25グラムまでである。不採用通知はA4の紙切れ一枚。10グラムもない。持てばすぐに分かる。
 次ぎに、三郎はポストの中のそれを見ただけで分かるようになった。二枚以上の書類が入っているものは、微妙に膨らみ方が違う。
 次ぎに、三郎はポストに入る封筒の音で分かるようになった。A4一枚の封筒が郵便受けに入る音は、ハカナイほどに軽い。

 三郎は、名前の通り三男ではない。単に父が二郎であったことから付けられた名前である。しいて理由を探すと三人姉弟で、上二人が女で、男女雇用機会均等法の精神からすれば不思議ではない。これを思いついたときは、自分でおかしくなり、だらしなく、ヤケクソ気味に笑った。

 運動不足で、緩んだ体から緩んだ屁がでた。まるで老人のアクビのように締まり無く、長ったらしい屁で、自分でもイヤになった。

 ヤケクソ半分でバットを持ち出して銀行強盗……などは思いもせずに、淀川の河川敷に行った。
 河川敷の石ころを拾っては、川に向かっていい音をさせてバットで打ち込んだ。高校時代から使っている金属バットで、それなりに大事にしていたが、万年一回戦敗退の4番バッターでは、煩わしいだけのシロモノに成り果てていた。

 カキーン…………!

 ええなあ……音だけは。

 そのささやかな、ウサバラシも、心ないお巡りの一言ですっとんだ。
「ニイチャン、ここでバット振ったらあかん。そこの看板に書いたあるやろ」
「野球はアカンとは、書いたあるけど……」
「バット振るのも野球のうちや」
「あの……」
「なんや……」
 また緩んだ屁が出た。偶然お巡りは風下に居た。
「わ、く、臭い! イヤガラセのつもりか!」
「そんなん、ちゃいます……」

 お巡りが行ったあと、三郎は、つくづく情けなく、落ち武者のように河原に座り込んでしまった。
「懐かしい臭いであったのう……」
 気づくと、三郎の横に本物の落ち武者が座り込んでいた。
「あ、あんたは……!?」
「素直な性格をしておるの。お察しの通り、わしは落ち武者じゃ。もう、かれこれ四百年ほど、ここにおる」
 落ち武者は、槍の穂先で大きな頭ほどの石を示した。
「墓……ですか?」
「土地の者は『残年さん』と呼んでおる。少しは御利益のある、まあ、神さまのなり損ない、成仏のし損ないじゃ」
「はあ……」
「慶長二十年、わしは、ここで討ち死にした。徳川方二十余名に囲まれてのう。名乗りをあげようとすると、さっきのおぬしのように長い締まりのない屁が出てな。臭いはおぬしそっくりであった。臭いにひるんだ三人ほどは槍先にかけたが、所詮多勢に無勢。ここで朽ち果てることになったのよ」
「はあ……」
「同じ臭いの縁じゃ。なにか一つだけ願いを叶えてやろう。ただし、残念さんゆえ、大した願いは叶えてやれんがな」
「就職とか……」
「無理無理、ワシ自身が仕官の道が無いゆえ大坂方についたんじゃからの」
「じゃ、彼女とか……」
「……無理じゃのう、その面体では」
「じゃ、じゃあ、ホームラン打たせてくださいよ!」
「ほ、ほーむらん?」
「あ、このバットで、このボールを向こう岸まで打ち込みたいんです!」
「おお、武芸の類じゃのう。それなら容易い。今ここで打ってみるがよい」
 
 三郎は、高校時代の思い出のボールを思い切り打ち込んだ。

 カキーン…………!

「また、おまえか!?」
 さっきのお巡りが、本気で怒ってやってきた。落ち武者の姿はすでになかった。

 偶然だが、このボールは、向こう岸で女の人を刺し殺そうとしていたオッサンの頭に当たって気絶せしめた。あとで、そのことが分かり、府警本部長から表彰状をもらった。

 その後、三郎は阪神タイガースのテスト生の試験を受けて合格した。バッターとしての腕を買われたのである。
 半年後、目出度く一軍入り。代打者として、またたくうちに名を馳せた。満塁ツーアウトなどで代打に出ると、必ずホームランをうち逆転優勝に持ち込んだ。

 そして、その年、タイガースはリーグ優勝してしまった。
 三郎はめでたくベンチ入り、日本シリーズも優勝し、いちやく時の人になった。

『イチローより三倍強いサブロー』がキャッチフレーズになった。『神さま、仏さま、サブローさま』ともよばれた。

 そして、これが三年続いた。

 なぜか、タイガースの人気が落ちてきた。必ず勝つタイガースは関西人の趣味に合わなかったのだ。
 阪神は、三郎を自由契約として、事実上首にし、ほどよく負けるようになって、チームの人気が戻ってきた。

 その後の三郎が、どうなったか、3年もするとだれも分からなくなり、甲子園球場の脇に石ころがおかれ、誰言うともなく、サブローの残念塚と呼ばれるようになった……とさ。

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高校ライトノベル・ムッチャンのイレギュラーマガジン34『乃木坂エレジー』

2018-07-31 06:34:23 | エッセー

ムッチャンのイレギュラーマガジン34
『乃木坂エレジー』

 初出:2015-05-02 16:27:34

 




 乃木坂学院高校は乃木坂46のパクリではない!!

 と、言えるものなら声をにして言いたい。

 わたしのブログには、毎回下に広告がある。グーブログのスポンサーではない、わたし自身の広告である。
『ノラ バーチャルからの旅立ち』『あたし今日から魔女!? え うっそー!?』という戯曲集と『はるか ワケあり転校生の7ヵ月』『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』という小説の4冊です。

                 

 以前は、ここに『自由の翼』という戯曲集が入っていましたが。完売したので、今は載せていません。

 問題は『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』なのです!

 戯曲集はひとまずおいて、小説に関する限り『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』が最初で『はるか ワケあり転校生の7ヵ月』が一番新しくなります。
 で『乃木坂』です。

 横浜の出版社の依頼で、2011年にネットマガジンで連載していたものを明くる2012年に単行本にしたものです。記憶は定かではありませんが、2011年の春の終わりごろから夏にかけて書いていました。
 
 もともとは『ホンワカ女子高生HBが本格的に演劇部に取り組むまで』という長ったらしいタイトルでネットマガジンに連載していた『はるか ワケあり転校生の7ヵ月』のアンサーノベルでした。
 細かいところはすっとばします。
 アンサーノベルを書くにあたって、主人公の学校に困りました。舞台は東京と決まっています。

 実在の学校とかぶらないこと、どこか伝統女子高の雰囲気がする名前ということで、丸一日東京の地図とにらめっこ。

 で、青学にも近い『乃木坂』に決めました。グーグルのマップで歩いてみたり、動画サイトで乃木坂界隈を調べました。

 これはイケる!

 そう思って、初回分を書き上げ出版社に送り、周辺のロケーションを調べるためにネットで検索すると『乃木坂46』がヒットしました。
 読んでみると秋元康氏が、AKB48のシャドウキャビネットとしてアイドルグループを作るというもので、初期メンバーと概略が書いてありました。まあ乃木坂というのは普通の地名で特に問題は無いと思っていました。ネットで検索しても、わたしの乃木坂学院が乃木坂46と並ぶようにして出てきました。

 正直乃木坂46は「柳の下の何匹目のドジョウやねん?」ぐらいに思っていました。

 しかし、恐るべし秋元康! みるみる乃木坂46はメジャーになっていき「大橋、あんまりパクリはみっともないで」と友達に言われる始末。
 だいたい乃木坂46は。たまたまオーディション会場の「SME乃木坂ビル」にちなんでいるだけで、オーディションが神楽坂で行われていれば神楽坂だし、赤坂ならば赤坂46になっていたはずです。

 いやはや、知名度が低いというのは辛いもんですなあ。だれが見ても、わたしの方がパクリだと思われるでしょう。

 ちなみに乃木坂で検索すると、今やウィキペディアの『乃木坂』をしのいでトップに46が出てきます。
『乃木坂学院』で検索すると、『ラブライブ』の音乃木坂学院がトップ30を占め、わが乃木坂学院は40番台に転落。

 いやはや、もう少し高尚で面白いことを書こうと思ったが、ただのグチでおしまい。

 読者諸氏! 書いた本人が言うのです。『まどか 乃木坂学院高校物語』は面白い。むろん他の4冊も!

 嗚呼、乃木坂エレジー哉!



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