となりの宇宙人・18
『石室の屋根』
鈴木聖也は、あたし(渡辺愛華)のとなりの家に住んでいる幼馴染(?)の亡命宇宙人。
秋のある日、駅で暴漢に襲われ、学校では食堂の工事現場の鉄骨に潰されそうになるけど、聖也が時間を止めて救けてくれた。
犯人は、なんと、これまた幼馴染(?)の吉永紗耶香。紗耶香も宇宙人で、聖也を抹殺するために、あたしを殺そうとした。
あたしは聖也の命の素になる宇宙エネルギーを、聖也に合うように変換できるから。
そのために殺されそうになり、救けられもしたんだって……でも、それだけ?
ミニチュアピラミッドの石室の屋根は、あっけなく落ちてしまった。
ところがグランドのピラミッドの屋根は何トンもあるのに、きちんと屋根の形に組み合わさっている。
あたしたちは「なんで!?」「すごい!」「まじ!?」という慣用句を叫ぶしかなかった。
「ほんとうに載せるのは、これからだよ」と言って、南先生は右手を大きく回した。石室の前にいた学生さんが、それを見て石室の一番下のコンクリートブロックを外した。外したところにポッコリ穴が開き、一呼吸して穴からサラサラと砂が流れ出てきた。
――あ、そうだったのか!――
石室の屋根は、石室一杯に詰め込まれた砂の上に載っていただけなんだ。その砂が抜け出ることによって、石はがっちりと屋根の形に組み合わされる。「先生、すごい!」「アイデア賞!」「ノーベル賞!」と掛け声があがる。
「いやあ、ボクのアイデアじゃないよ。すでに実証済みのことさ、ただ、こうやってやってみると感動もするし、実感としてエジプトの技術が分かるんだ」
先生は頭を掻きながら、照れくさそうに種明かし。そこに四方から学生さんやスタッフが集まって、先生の胴上げになった。むろんあたしたちも参加して、感動のお裾分けにあずかり、ヨッコも自然に加わった。聖也もあたしも、ヨッコとは仲のいい友達でやっていけそう。
「これで心置きなく、エジプトにいけます。早慶大学の諸君、街中中学の卒業生諸君、ほんとうにありがとう! 乾杯!」
胴上げのあと記念の宴会になり、鍋を囲んだ真ん中で、南先生が自分で音頭をとり乾杯になった。
先生はシナイ半島で墜落事故があったりして、出発が遅れ、やりかけのピラミッド建造事業、その山場である石室を完成に立ち会うことができたのだ。で、ことのついでに街中中学のあたしたちも呼び、期せずして壊れかけていたヨッコとの関係が元にもどった。
「先生、先生が戻られるまで、キャップストーンの工程には進まないでおこうと思います!」
乾杯のグラスを置くやいなや、リーダーらしい学生さんが宣言した。で、キャップストーンて?
「テッペンにある四角錐、冠石とも言う、ピラミッドの帽子みたいなやつだよ」
顔つきで分かったのか、先生がテーブルの向こう側から教えてくれた。
「気持ちはありがたいけど、このピラミッドは君たち学生のものだ、石室の完成に立ち会えただけで満足……そうだ、ボクは、公開に間に合うよう、ピラミッドの石室に入れるのにふさわしいものを探しておくよ。それと全てのピラミッドが、あの作り方をしたかどうかは未知数だ、ギザのピラミッドなんか化け物みたいに大きいからね。君たちが異説を出すのを楽しみにしているよ」
先生はずり落ちたズボンをゆすりあげ、紅の豚みたく豪快に笑った。
「立派な先生だとは思ってたけど、あそこまで偉い先生だとは思わなかった~」
改札を出ると、ヨッコがため息のように言った。打ち上げの宴会は深夜まで続きそうだったので、街中中学組は電車で帰ることにしたのだ。
「だよね、中学にきたときは、ただのメタボおじさんだったもんね」
「見かけにによらない見本みたいな人だな」
「……あたしも少しは自信もっていいかな」
「なによ、ヨッコ」
「ヨッコは十分かわいいよ」
「エヘヘ……でも、それって逆に言えば、かわいいと中身は大したことないってことに……」
「なに言ってんの、かわいくて大したのもいるわよ」
「え……?」
あたしは自分の鼻を指さした。一瞬間があって聖也が笑う。
「聖也が笑うことないでしょ!」
聖也の頭をポコンとしてやる。
ヨッコもようやく笑った。
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そのために殺されそうになり、救けられもしたんだって……でも、それだけ?
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ところがグランドのピラミッドの屋根は何トンもあるのに、きちんと屋根の形に組み合わさっている。
あたしたちは「なんで!?」「すごい!」「まじ!?」という慣用句を叫ぶしかなかった。
「ほんとうに載せるのは、これからだよ」と言って、南先生は右手を大きく回した。石室の前にいた学生さんが、それを見て石室の一番下のコンクリートブロックを外した。外したところにポッコリ穴が開き、一呼吸して穴からサラサラと砂が流れ出てきた。
――あ、そうだったのか!――
石室の屋根は、石室一杯に詰め込まれた砂の上に載っていただけなんだ。その砂が抜け出ることによって、石はがっちりと屋根の形に組み合わされる。「先生、すごい!」「アイデア賞!」「ノーベル賞!」と掛け声があがる。
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先生は頭を掻きながら、照れくさそうに種明かし。そこに四方から学生さんやスタッフが集まって、先生の胴上げになった。むろんあたしたちも参加して、感動のお裾分けにあずかり、ヨッコも自然に加わった。聖也もあたしも、ヨッコとは仲のいい友達でやっていけそう。
「これで心置きなく、エジプトにいけます。早慶大学の諸君、街中中学の卒業生諸君、ほんとうにありがとう! 乾杯!」
胴上げのあと記念の宴会になり、鍋を囲んだ真ん中で、南先生が自分で音頭をとり乾杯になった。
先生はシナイ半島で墜落事故があったりして、出発が遅れ、やりかけのピラミッド建造事業、その山場である石室を完成に立ち会うことができたのだ。で、ことのついでに街中中学のあたしたちも呼び、期せずして壊れかけていたヨッコとの関係が元にもどった。
「先生、先生が戻られるまで、キャップストーンの工程には進まないでおこうと思います!」
乾杯のグラスを置くやいなや、リーダーらしい学生さんが宣言した。で、キャップストーンて?
「テッペンにある四角錐、冠石とも言う、ピラミッドの帽子みたいなやつだよ」
顔つきで分かったのか、先生がテーブルの向こう側から教えてくれた。
「気持ちはありがたいけど、このピラミッドは君たち学生のものだ、石室の完成に立ち会えただけで満足……そうだ、ボクは、公開に間に合うよう、ピラミッドの石室に入れるのにふさわしいものを探しておくよ。それと全てのピラミッドが、あの作り方をしたかどうかは未知数だ、ギザのピラミッドなんか化け物みたいに大きいからね。君たちが異説を出すのを楽しみにしているよ」
先生はずり落ちたズボンをゆすりあげ、紅の豚みたく豪快に笑った。
「立派な先生だとは思ってたけど、あそこまで偉い先生だとは思わなかった~」
改札を出ると、ヨッコがため息のように言った。打ち上げの宴会は深夜まで続きそうだったので、街中中学組は電車で帰ることにしたのだ。
「だよね、中学にきたときは、ただのメタボおじさんだったもんね」
「見かけにによらない見本みたいな人だな」
「……あたしも少しは自信もっていいかな」
「なによ、ヨッコ」
「ヨッコは十分かわいいよ」
「エヘヘ……でも、それって逆に言えば、かわいいと中身は大したことないってことに……」
「なに言ってんの、かわいくて大したのもいるわよ」
「え……?」
あたしは自分の鼻を指さした。一瞬間があって聖也が笑う。
「聖也が笑うことないでしょ!」
聖也の頭をポコンとしてやる。
ヨッコもようやく笑った。
『ノラ バーチャルからの旅立ち』

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