7月6日(日)より
「朝7時。
私が犬の散歩に出かけようとすると、母が起きてきた。
20分ほど散歩をして帰ってきたら、
先日買ったばかりの半袖のTシャツに母が着替えていた。
私と母は、おしゃべりしながら朝食を食べ、
久しぶりに美術館へ行くことになった」。
これだけ聞いたら、何気ない普通の生活の一コマだろう。
しかし、この一コマにどれほどの「驚き」があることか!
① 「空気清浄機」を覚えていた!
夕べ寝る前に空気清浄機を設置した。
あまりにも空気が汚れていたのだろう。
空気清浄機は、自動的に
最大限の威力を出して作動し始めた。
ブォ~~~~!!
娘:これは、空気を綺麗にしてくれているんよ。
この部屋の臭いを取ってくれるの。
だから、音がしとっても安心してな。
母:ふーん。ほっといていいんやな。
娘:そうよ。じゃ、おやすみ。
翌日のことーーーー。
母:これ、空気を綺麗にしてくれるんやったか?
娘:そうよ、そうよ。
(夕べ言ったことを覚えているんだ!すごい!)
母:これ、気持ちがええんよ。
夜中もよう眠れて、朝起きたら、ええ気持ちなんやわ。
娘:そうなんや~。よかったな~!
② デイサービスの翌日に早起き?
昨日はデイサービスだったのだ。
デイーサービスの翌日の疲れは、母にとっては特別。
デイサービスで、よほどがんばっているのだろう。
朝ごはんの時間に起きるなんてことは、これまでなかった。
10時ごろ起きて、再び眠りの世界に入り、ほぼ一日を過すことになる。
デイサービスに通い出してから1年、
「デイサービスの翌日は一日寝るものだ」と
私はあきらめざるを得なかったのだ。
それが、私が起こさなくても起きてきたのだ!
③ 着替えに20分!
日頃着る服は、私に相談しないと着ることができない。
着ることができたとしても、昨日と同じもの。
また、新しいものは、「もったいない」と言って着ないのだ。
そして、その所要時間は、1時間から2時間。
ところが、私が散歩に行っている時間から考えて・・・
20分!
しかも「一人で!」
私は、自分の目を疑った。
④ 暑いから、Tシャツ?
気温の感覚が鈍っているのか、
夏だと言うのに、長袖と毛糸のベストが離せなかったのだ。
娘:もう夏よ。みんなもう半袖よ。
母:私は、寒いわ。
(そう言って、いつの間にかベストを身に着けている・・・)
それが、「もう夏やもんなあ」と澄ましてTシャツを着ているなんて!
しかもそのTシャツは、私が買っておいたもの。
見慣れぬ新品を気に入って選んでいたのだ!
⑤ 食事中にイキイキおしゃべり!
食事中は、「一人目をつむって味わう」のが、最近の習性。
テーブルに一緒にいる人を遮断するかのような様に
食事中母との会話は生まれようがなかった。
それがだ!
今日は、食事をしながら母が話している。
しかも、目をキラキラさせて!
⑥ 「今」と「これまで」を比較・・・?
母:今朝は、朝から気持ちよく目覚めたわ。
これまでは、朝起きると、
「何となっとるんやろ。私は生きとるんやなあ。
何したらいいんやろ」って考えとるうちに、
さっき考えていたことが何やったかわからんようになってきて、
ワケがわからんようになってくるんやわ。
それが、今朝は、なんかスッキリして、
『晴子の手伝いせなあかんわ』と思って起きてきたんよ。
今もこうやってあんたと話していると
頭がつながっていくようやわ。
なんと? 私は思わずメモをとりたい衝動にかられた程、
はっきりとした面持ちで母の言葉が、なめらかに出てくる。
そういうことだったんだぁ。
自分で、これまでの自分と比較しているというのにも驚く。
●何年ぶりかの美術館へ
母の様子が、まるで「何年か前の母」のように思い、
私は言ってみた。
娘:お母さん、今日は美術館へ行こうか。
今、佐伯祐三展をしているんよ。
お母さんは前に『佐伯祐三の絵が好きや』って言って、
名古屋まで見に来たことがあったよ」。
母:名古屋まで?
佐伯祐三? どんな人やったかいなぁ・・・?
娘:ま、見ればわかるよ。
前は好きやったけど、今はどうかな? って。
それだけでもいいんじゃない?
ちょうどただ券があるから」
母:そうお。ほな、行こか。
そして、本当に美術館で鑑賞することができたのだ!
いったい何年ぶりのことだろうか?
「外出」とて、直腸脱をしてから初めてであった。
「佐伯祐三」よりも「母」の動きに
私は、感動していた。
その後、
おそばを食べて、花の苗を買って帰ってきたのである。
この驚くべき母の変化に思い当たるのは、空気清浄機。
寝ている間、
空気は、脳にどのような影響を及ぼしているのか・・・?
しばらく様子を見てみよう。