●無謀な企画・実現に感謝
「垂水城で雲龍さんの演奏会をしてほしい」。
今回は、その一声で始まりました。
私にとって、
垂水に垂水城があった、という事実は、
驚きであり、興味深いことでした。
そこで、「垂水城のことをもっと知りたい。
他の人にも知っていただけるチャンスだ!」
と企画することにしました。
垂水たんけん隊では、垂水城の勉強会もしました。
風に吹かれ、
雲龍さんの笛とともに夕陽を見ながら、
古に今に思いを馳せていただきたい。
なーんて、ロマンチックなことを考えたものの、
公園の使用許可や駐車場や諸々に対処していたら、
皆さんにお知らせできたのが、当日2週間前。
雨続きでお天気もどうなることかと心配しましたが、
寒いもののお天気に恵まれ、
43人もの方々に参加していただけました。
無謀な企画だったかもしれませんが、
いろいろなお助けで無事終わることができました。
本当に本当に感謝感謝でした。
●垂水を感じながら
演奏会の前に、私から垂水城の案内をさせていただきました。
5月14日の勉強会の講師の方にも来ていただいておりました。
勉強の成果はいかに・・・!?
「垂水城のことも、この公園にも初めて来ました」。
近隣に住む人でも、そういう方がほとんどでした。
お話の内容は、
垂水たんけん隊活動日誌VOL.3をご覧ください。
http://www7.plala.or.jp/tarumitanken/
●晴れても雨が降っても、大丈夫!
会場が屋外ということで、
「雨降ったらどうするの?」と何度も聞かれました。
どうしたものかと考えるうちにふと気がつきました。
そうだ、雨が降ったら、S.L.S.すぎなですればいいんだ。
そうすれば、雲龍さんの笛を身近で聞いていただけるのだし、
垂水城の話を聞いてから、また垂水城に足を運んでいただけばいい。
だから、晴れても雨がふっても、大丈夫!
「晴れたら、よし」という縛りから解き放たれた瞬間でした。
●風は、あまのじゃく
演奏会が始まって間もなく、私は自分の耳を疑いました。
雲龍さんの笛の音が小さくこもってしまっているのです。
「そうか・・・風が吹き込んでいるんだ!」
野外なら、風に乗ってどこまで笛の音が届くことだろう。
なんて胸を膨らませていましたが、
四方八方上から下から吹く風なんて、
想像もしていませんでした。
私は主催者として、
自分の浅はかさに、申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
しかし、雲龍さんは、顔色一つ変えず、
言い訳一つせず、吹いていらっしゃいます。
風と吹き込む息との加減を探るべく、
全神経を集中していらっしゃるかのようでした。
そうか・・・雲龍さんは、この風を承知でここに立たれたのだ。
聞かせるだけの笛の演奏家なら、こんな状況ではきっと吹かない。
自然と一体になって感じるままを音にしようという雲龍さんだから、
この風と向き合っておられるのだ。
「風のあまのじゃく!いい加減にして!」
と言いたいところですが、仕方がありません。
私にできることは、何だろう?
しっかりと耳を傾けること。
この貴重な場に専心すること。
私は緊張した体の力を抜きました。
●自然とのコラボレーション
時とともに風も次第に穏やかになり、
雲龍さんの笛も風に乗ってきていました。
あの風のおかげでしょうか。
すっかり雲も晴れています。
陽は、西の空低くなり、
布引山や広がる雲は黄金色から茜色に染まり始めました。
最後の曲を吹き終わり、
雲龍さんが唇から笛を離す・・・夕陽の最後の影が山の端に落ちる。
その絶妙なタイミングにため息、歓声、拍手!
笛の音とともに、夕景をお届けしたい。
そんな私の思い以上の状況に言葉も出ませんでした。
「自然とのコラボレーション」とは、こういうことでしょうか。
●風を受け入れる
演奏会後、
雲龍さんは、演奏中の胸中をこのように語ってくださいました。
「どんな状況でも吹かせていただく。それが私の原点です。
『大丈夫かな』と思いながらも向かうことが大事。
後は、任せるしかありません。
風に逆らわない。風を受け入れる。
それは、祈り。
自分で何かをしようと思わず、身を任せること。
背に風と陽を受け、大地のぬくもりを感じながら、
風に乗っかっていくんだな、と思いました。
また、皆さんの思いが伝わってきて、助けられました。
最後は、『完結した。それまでの笛は必要だった』と思いました。
でも・・・正直言って、必死。『時間』の観念がなくなりました。
穴があったら入りたい気持ちがありましたよ(笑)」。
自然は思い通りいくものではない。
いつも味方をしてくれるとも限らない。
晴れもよし、雨もよし、風もまたよし。
どんな状況も逆らうことなく、
すべてを受け入れる。
その結果、
思いもしない贈り物があるものだ。
夕陽を背に笛を吹く雲龍さんのシルエット、
名も知れぬ公園に43名もの人が耳を傾けている。
私には、忘れえぬ光景になることでしょう。
この贅沢なひとときを皆様とともに迎えられましたことを
心より感謝申し上げます。ありがとうございました。