●9月19日(土)「星星の扉」さつき里香・一人舞台より
芝居を見る前、「星星の扉」の意味が私にはわかりませんでした。
空にきらめく星星、
それは、この世もあの世も含めたあらゆるもの命のきらめき。
そして、そのきらめきにも扉がある。
その扉は、どうやって開かれるのか?
これが、この芝居の隠しテーマだったのではないでしょうか。
私が初めて見る「一人舞台」。
どうやって一人三役をこなすのだろう?
伝えたいことをどのように伝えるのだろう?
そんな関心を持って、会場に向かいました。
●一人三役には、配慮がいっぱい!
さつきさんの舞台から最も伝わってきたのは、
「やさしさ」。
命ある一人一人へのやさしさ。
そして、見る人へのやさしさ。
さつきさんから「やさしさ」が、
静かに温かくにじみ出始めてきたのは、
介護の先輩佐々木さんとおばあさんとの会話を
そっとかなたが覗いているシーンから。
ここで面白かったのは、
覗いているかなた、
おばあさんの言葉を受け止める佐々木さん、
元気を取り戻してくおばあさん
この三役を移行する表現の工夫。
これには惹きつけられるものがありました。
ゆっくりと丁寧に・・・・
見ている者の混乱がないように。
しかも、静かな穏やかな空気を壊さぬように。
そんな配慮を感じました。
こればっかりは、見なくちゃわからないかも!
● 近づきたい!「共感」を携えて
自然な会話でありながら、
おばあさんの気持ちが和らいでいくのを目の当たりにし、
かなたは、初めて対応の参考書のようなものを開きます。
老人ホームの歌の指導係で、
過去に生きた歌の世界にしがみついているかなた。
「すぐにお茶碗を割るような乱暴で話しもろくにできない人」と、
認知症のハナさんをかなたは、ばかにしていました。
ある日、
そのハナさんが自分の歌に心で反応してくれていることに気づきます。
ハナさんが気になって、
事実を確かめたい。
ハナさんと近づきたい。
その一心からでしょう。
気をつけたい14か条や「共感」を心に留め、
かなたは、ハナさんの部屋に通います。
ハナさんが反応してくれた歌「ふるさと」を通して
何かが通じ合ったのでしょう。
しゃべることのないハナさんがお茶の場所を教えてくれて、
いっしょにお茶を飲んだひととき。
それがハナさんとの最後の思い出となりました。
●若かりしハナさん語る
ハナさんが亡くなった夜のこと。
ハナさんが夢に出てきて、大事なことを伝えてくれるのです。
若かりしイキイキとしたハナさんが幸せに過ごしていた思いを語り、
一気に心が粉々に砕けてしまったいきさつを
年老いたハナさんが、語ってくれるのです。
お茶碗を割っていたのは、この心の傷から来ていたのでした。
心の傷をずっと引きずってはいたものの、
実は、それは夢とうらはらのものでもあったこと。
そして、かなたの歌で、幼き頃の温かい思い出が蘇り、
かなたが共感してくれたことで、気が楽になった。
そう伝えてくれるのです。
夢の最後の「またいつかお茶をしましょうね」が、なかなか効いていました。
それにしても、
年齢が推移するハナさんの演技は、お見事でした!
●人には、かならず理由(わけ)がある
人にはいろいろな過去がある。
今どんなに理由(わけ)がわらからないように見えていても、
過去も感情も消えはしない。
しかし、心の扉を開けることで、
その過去が違う意味をもたらしてもくれることもある。
人とのちょっとしたふれあいが、
その扉を開けるきっかけになることもある。
その時、人は輝ききらめく。
いくら理由がわからないように見えていても、
何か理由がある。
一人の人間として、そこに寄り添ってほしい。
若くてもお年寄りでも同じよ。
それを忘れないで。
私は、そんなふうに受け取りました。
さつきさんのしぐさ、指先、表情、声色、言葉・・・
すべてから、伝わってくるようでした。
説教じみた「教える」という臭いは全くありません。
ああ、こんなやさしい伝え方があるんだ。
それが、私には最もインパクトのあることでした。
●忘れ得ない舞台
私にとりまして、
子どもが通う小学校の校長先生の奥様で
インタビューをさせていただいた方が、
その時語っていた通り、本当に津で公演してくださったのです。
裏方、ボランティアと少し関わらせてもいただけて、
これまでにない忘れ得ない舞台となりました。
これだけの舞台を作るのにどれほど練習されたことか、
ピアノとのコラボの絶妙さ、
同じ衣装の違和感を感じさせない照明・・・・・
などたくさんたくさん、実に実に面白く見せていただきました。
チームの方々から元気も頂きました。
よく津で公演してくださいました。
ただただ、感謝するばかりです。
これからは、全国展開されていくとのこと。
陰ながら、応援しています!!
また津で公演していただける日をお待ちしています。
さつきさん、
舞台つくりの皆さん、
ボランティアにかけつけてくださった皆さん
ありがとうございました!!