東伊豆のほぼ中央に位置する熱川温泉。その駅は急な斜面の中腹にあり、さらにその上にあるいくつかのリゾート・マンションは温泉街と大海原を見おろす景観がウリ。いずれもバブル崩壊前後に建てられたもので、温泉大浴場がある典型的大型リゾート・マンションである。なかでもエリーゼ熱川(175戸)は部屋のサイズが小さいものでも99.9m2あり、標準的マンションより格段に広い。露天風呂や屋外プール、サウナ、ジムもあり、ロビーも広々してバブル期の高揚感を物語る。
このマンションの売り物件をHOME’Sから検索すると、11件の売り物が見つかる。そして、その中に108m2で280万円という物件が…! いくら築後26年で古いとはいえこれは超格安だ。そのほかにも500万円台の格安物件がいくつもある。その一方で99.9m2で1,400万円というリーズナブルな価格の物件もある。端的に言って、このマンション全体の相場が乱れている。(この問題は3年ほど前に取り上げたが、事態は悪化したようだ)
なぜこういう事態になったのか。その訳は管理費・修繕積立金(管理費等)が最低でも月間62,000円と高いから。温泉大浴場の管理に多額の費用がかかるのである。固定資産税を加えたら、年間80万円以上の出費になるだろう。
問題点は、このマンションが所有者の世代交代の時期になっていること。購入者から遺産相続した子どもがこのマンションを利用すればいいが、現役だったら年間せいぜい数回訪れるのが関の山だろう。経済性を考えれば、出来るだけ早く処分して出費を食い止めたいと思うに違いない。これが格安物件がでてくる背景である。
高い管理費等がマンションの価格を押し下げているのは熱川だけではない。熱海から伊東・伊豆高原に至る海岸地域、箱根、新潟県苗場(69m2が100万円!)など、日本全国至る所で起きている。
それだったら採算的には会員制リゾートの方が、多額の入会金(例えば5百万円)を払っても、得だと考えるのは当然である。実際に、会員制リゾートの東急ハーヴェスト熱海は連日満室の盛況で、予約もとれないこともある(私は会員ではないが、知人から時折宿泊券をもらって泊まっている)。
そもそも、戸建ての別荘にせよリゾート・マンションにせよ、温泉付きであろうとなかろうと、別宅は所有すること自体に価値(満足感)がある。富裕層なら採算を考える必要がないが、一般庶民にとってはバカバカしい。そして、いわゆる「失われた二十年」は所有することに満足感を覚える層を大幅に減らしたのではなかろうか。リゾート・マンションの値崩れの根底には価値観の変化がある。