頑固爺の言いたい放題

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続 税理士の大チョンボ(1)

2017-10-04 16:06:27 | メモ帳

今回は8月9日に投稿した「税理士の大チョンボ」の続編である。

【前回の要旨】

私が住んでいるマンションの管理組合法人(「組合」)は事情があって、一階の道路に面した区分を所有し、それを事業者に賃貸している。そこに生じる家賃収入に対して法人税を申告する必要があり、管理会社が選任したN税理士に納税申告書の作成を依頼している。

3年前に、私はその税務申告の元になる店舗会計(ほかには管理費会計と修繕積立金がある)の収支報告書に誤りがあることに気づいた。そのミステークとは経費の二重計上で、納税額の過小申告を意味する。将来、税務署がその間違いに気づいたら、過去の過小申告に追徴税を課せられる可能性があると懸念した。

それ以降、私は「組合」にそのミステークをたびたび指摘してきたが、「組合」は聞く耳を持たなかった。この状況では、今期もまた同じミステークを繰り返すに違いない。

そこで去る8月、私はN氏にそのミステークを指摘した書面を送付し、コピーを「組合」理事長と管理会社の担当者に送った。

【税理士の契約打ち切り】

私はN氏がミステークに気づいて、何らかの対応策を取ったものと思っていたが、理事長から次のような連絡があった。

(1)  N氏は「経費の過大計上は解釈の違いである」と主張している。

(2)  N氏は「組合」との契約を打ち切った。理由は、「解釈の違いで争っても、時間の無駄であり、他の仕事に支障をきたすから」。

とんでもない言い分だ。N氏はミステークに気づいて、厄介ごとから逃げ出そうとしている! 理事長と管理会社はN氏の言い分を「ごもっとも」と思ったのか。それともミステークには気づいたが、そっとしておく方がいいと思ったのか。

N氏に逃げられたらどうなるか。次にこの仕事を引き継ぐ税理士は正しい税務申告書を作成するだろうから、その時に過去の申告書との間に食い違いが発生するが、それをどうするのか。N氏が辞めるのは構わないが、辞める前に過去の書類を修正してもらわないと「組合」が困る。

【ミステークの詳細】

N氏のミステークを理解するには、店舗会計の収支構造を知ってもらう必要があるので、以下に前期の収支報告書の概略を示す。「組合」のプライバシー保護のために、ミステークに関係ない数字はxxxxxとし、表示した数字も実際の数字とは多少異なっていることをご了承願う。

収入                                               

家賃                                xxxxx

支出

管理費分担金                  650,000

修繕積立金分担金               xxxxx

店舗間接経費                  100,000

建物減価償却費等               xxxxx

支出合計                          xxxxx

当期利益                         60,000

管理費分担金とは管理費会計の収入の部に記載されている管理費総額に店舗会計の負担率(店舗専有面積÷総面積)を掛けたもの。店舗間接経費とは管理費会計の支出の部に記載されている各費目の内から、N氏が店舗会計が負担すべき費目を選んで、それぞれの金額に店舗会計の負担率を掛けて合計したもの。

ところが、店舗間接経費として計上されている100,000円は管理費分担金の650,000円の一部であるから、明らかに二重計上だ。店舗も一般組合員と同様、定められた管理費を支払えば義務を果たしており、それ以上の経費負担を要求されるのは不合理である。つまり、この二重計上は、N氏が主張しているような“解釈の違い” ではなく、明々白々なミステークなのである。

二重計上が明らかである以上、次の問題点は店舗会計が負担すべき管理費は上記の65万円なのか、それとも店舗間接経費の10万円なのか、である。もしも10万円が正しいなら、当期利益は6万円ではなく65万円を加えた71万円となり、これが法人税対象額となって「組合」にとって不利である。

結局、私が直接税務署の意見を聞くことにした。狙いは、なんとかして税務署に管理費分担金65万円をそっくり経費計上することを認めてもらうことである。

下にある(2)に続く

 


続 税理士の大チョンボ (2)

2017-10-04 16:00:59 | メモ帳

この事案がわかりにくい理由は、「組合」が「組合」に管理費を支払うこと。そこで全体像をわかりやすくするため、かりにA氏という人物が店舗部分の区分を所有し、それをテナントである事業者に賃貸していると仮定して考えてみよう。

A氏の賃貸事業において、テナントから徴収する家賃には管理費が含まれており、管理費は固定資産税・建物減価償却費などと同列にある売上原価の一部である。したがって、「組合」に支払った管理費がどのように支出されたかは、A氏の関心事ではあっても、賃貸事業の損益計算には関係ない。すなわち、N氏が主導した“経費の選別”は無用な作業であって、“店舗間接経費”という概念が誤りなのである。

【チョンボ発生の原因】

経費の二重計上は論外のチョンボだが、ではなぜN氏がもう一つのチョンボである“店舗間接経費”という概念を導入したのか、を考えてみる。

(実は、経費を選別することについては、つい最近まで私も理屈に合っているように思っていたのだから、大きなことは言えないのだ(注)。

この事案の特質は、店舗が1階にあることと店舗事業者がテナントであること。

(1)  マンションの分譲契約において、すべての買い手は購入する区分の専有面積に応じた割合で、管理費・修繕積立金を負担することに同意している。つまり、1階部分の所有者だからといって特定の費用が免除されるということはないのだから、この属性によって“店舗間接経費”という概念が導入されたということはありえない。

(2)  したがって、N氏は店舗事業者がテナントであるという属性から“店舗間接経費”の概念を思いついたことになる。それにしては、植栽費(マンションのイメージアップに寄与する)や清掃費(店舗従業員も同じゴミ捨て場を利用している)を経費計上から除外しており、経費計上すべきか否かの基準があいまいである。

いずれにせよ、N氏は“店舗間接経費”をこの事案の基本的条件と考え、これを全てに優先させたたために、全体像を見失ったのではないか。

結論として、N氏は税理士にあるまじき大チョンボをやらかしたのである。さらに、N氏はチョンボ(したとわかったはず)から逃げ出そうとしているのは無責任であり、人間性にも疑問がある。

【税務署の立場】

税務署に相談するに当たり、上記のように論点を整理して臨んだ結果、税務署担当者は私の主張を100%認め、管理費をそのまま(前掲の経費構造を例にとれば65万円)経費計上することに同意した。そして、関係者から問合せがあった場合、私の主張をそのまま伝えてくれることになった。

今後は、前出の収支構造において、店舗間接経費の10万円がなくなるので利益が16万円となり、「組合」の納税額は現行の脱税ベースより増えるが(笑い)、これは公正に納税する結果であるから、やむをえない。

この結果を理事長と管理会社に伝え、私の出番は終わった。

これで一件落着だが、今後は正しく申告するとして、過去の申告との整合性をどうするかという問題がまだ残っている。しかし、それは私の出る幕ではない。組合執行部、管理会社および次の税理士が適切に対処してくれるだろうと期待している。

                                                            終

 注 8月9日投稿では“(経費の選別は)理に適っている”と述べている。赤面の至りである。