間違った言い回しでも、それが主流になれば間違いではなくなる、ということはわきまえている。それでも、今の日本語にはヘンな言い回しが多い。
きわめつけは、「○○させていただく」である。これは元来、相手の意向に沿って行動します、という謙譲語ではなかったか。その典型的な用例は「ではお言葉に甘えてそうさせていただきます」である。この場合は相手の許可を得ての行為だが、勝手に相手の意向を忖度した場合の行為でも、「させていただく」という言い方は正しい。しかし、相手の意向には関係ない行動に、「させていただく」と言うのはいかがなものか。中国が領空識別圏を宣言したとき、防衛大臣が「しっかりと抗議させていただきます」と言ったには仰天した。これは誰に対する敬語なのか。まさか、中国様ではなかろうに。
「させていただく」は謙譲語から丁寧語に変化したらしいから、それでよしとしよう。しかし、一つの文章の中に、2回も3回も「させていただく」を連発されると、耳障りである。本人は丁寧にすればいいと思っているのだろうけど…。
次に気になる言い方は、「~してもらってもいいですか?」である。銀行の窓口で、「ここに判を押してもらってもいいですか?」と言われた。いいも悪いも、そこに判を押さなければ書類は完成しないのだから、「ここに判を押してください」で十分だ。この言い方はすでに一般的に使われているから、批判するほうがヘンなのかも知れない。
よくわからない言い方に「のほう」がある。「本日、父は東北のほうへ行っておりまして、留守です」の「のほう」は正しい。東北のどこかまで特定して伝える必要はないが、遠方に行っているという状況が伝わるからである。しかし、「書類のほうお持ちしました」とか「お味のほうはいかがですか」などと、やたらに「のほう」をつけるのは意味がない。言葉を曖昧にするほうが丁寧な言い方だと思っているのか。
人に嫌われまいと顔色をうかがい、表現を曖昧にして、やたらとへりくだる態度は、自信喪失を意味する。それだけ世の中が住みにくくなったことの証左だろう。
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