とても自分には描けない、素敵な絵を見たとき、人は何と言うだろうか。
「上手ね」
かつて、私もそう言ったことがあった。しかし、画家への賞賛としてはまだまだだ。
「なんて素敵なの」
もちろん本心からの言葉であっても、上から目線になっていないだろうか。
こんな絵は見たことがない、お目にかかれて幸せだ、といった気持ちを表すとどうなるか。
「すげえぇ~」
「うめえぇ~」
私の場合、なぜかこんな調子になってしまった。若い子ならいざ知らず、もうじき50歳になるオバさんが、東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館で開催中の「生誕140年 吉田博展」を見に行き、意識しないままに口から転がり出してきた言葉である。
そもそも、吉田博とは何者か、私は知らなかった。
「聞いたことないけど、ちょうど新宿に行くし、時間も余るから寄ってみるか」くらいの軽い気持ちだったのだ。平日の3時にしては、結構人が集まっているなぁと思ったら、それもそのはず、どの絵も仰天するような画力で描かれているではないか。
「へー」
「はー」
「ほー」
私の前で鑑賞していたおじいさんは、ぽかんと口を開けて、ひたすら感嘆の言葉を漏らしている。そのうち、「どうなってんだ、この絵は」とうつろな目をしてブツブツ言い始めた。チョロチョロと頭を動かし、角度を変えて何度も眺めている。
わかるわかる。
画家は、水彩画、油彩画、木版画といったジャンルでたくさんの絵を残しているが、どの絵も普通ではない。迷いのないタッチで山や水を捉え、鮮やかな色彩を加えて質感たっぷりに仕上げている。生真面目な性格そのままに、小さな窓枠や木の葉1枚1枚まで、息を吹き込む丁寧ぶりだ。
ときには、人間離れした細かい作業に両目が吸い寄せられ、前を歩く人にぶつかってしまった。こんなことは今までなかったし、私も周りの人にぶつかられたりした。
わかるわかる。
見れば見るほど、絵に酔ってしまうのだ。足早に歩く人はおらず、時間をかけて細部まで鑑賞している人が多かった。だから、全部見るのに90分はかかる。そして、それくらいの価値はある。酒を飲むより、ずっといい気分になれた。
個人的には水彩画が好きだ。しかし、ポストカードは木版画ばかり。それでも構わないと購入した。
版画のいいところは、色の置き方で印象がまったく変わることだ。朝、昼、夜、霧などのバリエーションを広げ、「この手があったか」と驚かせる技術が憎い。なんというハイレベルな画家であろう。
今日は、吉田博展ではなく、別の記事をアップしようと考えていた。でも、海外では有名だが日本では知られていないこと、8月27日までしか公開されないことなどから、「もっとたくさんの人に見てもらわなくては!」との使命感に駆られて、急遽変更することにした。
こんな稚拙な文章では、絵の魅力が一割も伝わらないかもしれない。
それでも、何かをせずにはいられない。
行こうかどうしようか迷っている人の、背中を押すお手伝いができればうれしい。
↑
クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
「上手ね」
かつて、私もそう言ったことがあった。しかし、画家への賞賛としてはまだまだだ。
「なんて素敵なの」
もちろん本心からの言葉であっても、上から目線になっていないだろうか。
こんな絵は見たことがない、お目にかかれて幸せだ、といった気持ちを表すとどうなるか。
「すげえぇ~」
「うめえぇ~」
私の場合、なぜかこんな調子になってしまった。若い子ならいざ知らず、もうじき50歳になるオバさんが、東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館で開催中の「生誕140年 吉田博展」を見に行き、意識しないままに口から転がり出してきた言葉である。
そもそも、吉田博とは何者か、私は知らなかった。
「聞いたことないけど、ちょうど新宿に行くし、時間も余るから寄ってみるか」くらいの軽い気持ちだったのだ。平日の3時にしては、結構人が集まっているなぁと思ったら、それもそのはず、どの絵も仰天するような画力で描かれているではないか。
「へー」
「はー」
「ほー」
私の前で鑑賞していたおじいさんは、ぽかんと口を開けて、ひたすら感嘆の言葉を漏らしている。そのうち、「どうなってんだ、この絵は」とうつろな目をしてブツブツ言い始めた。チョロチョロと頭を動かし、角度を変えて何度も眺めている。
わかるわかる。
画家は、水彩画、油彩画、木版画といったジャンルでたくさんの絵を残しているが、どの絵も普通ではない。迷いのないタッチで山や水を捉え、鮮やかな色彩を加えて質感たっぷりに仕上げている。生真面目な性格そのままに、小さな窓枠や木の葉1枚1枚まで、息を吹き込む丁寧ぶりだ。
ときには、人間離れした細かい作業に両目が吸い寄せられ、前を歩く人にぶつかってしまった。こんなことは今までなかったし、私も周りの人にぶつかられたりした。
わかるわかる。
見れば見るほど、絵に酔ってしまうのだ。足早に歩く人はおらず、時間をかけて細部まで鑑賞している人が多かった。だから、全部見るのに90分はかかる。そして、それくらいの価値はある。酒を飲むより、ずっといい気分になれた。
個人的には水彩画が好きだ。しかし、ポストカードは木版画ばかり。それでも構わないと購入した。
版画のいいところは、色の置き方で印象がまったく変わることだ。朝、昼、夜、霧などのバリエーションを広げ、「この手があったか」と驚かせる技術が憎い。なんというハイレベルな画家であろう。
今日は、吉田博展ではなく、別の記事をアップしようと考えていた。でも、海外では有名だが日本では知られていないこと、8月27日までしか公開されないことなどから、「もっとたくさんの人に見てもらわなくては!」との使命感に駆られて、急遽変更することにした。
こんな稚拙な文章では、絵の魅力が一割も伝わらないかもしれない。
それでも、何かをせずにはいられない。
行こうかどうしようか迷っている人の、背中を押すお手伝いができればうれしい。
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※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
一瞬、吉田類かと思っちゃった、名前が地味な気がします~ヾ( ̄o ̄;)オイオイ
ほとんどの作品に水面が描かれていますね、何となくですが北斎に影響されているのかな~
会期は3日間。
土日があるから、そこで行ってみようか…と思ったところで、この展覧会の情報がやってきました。
はしご、できるじゃない!!!
是非見てみたいです。
砂希さんは展覧会情報をどうやって手に入れているのですか?
いつも素敵な作品を探し出されていますよね!
画家は福岡出身の九州男児だそうです。
VTRもありましたが、博多弁?のセリフが挿入されていましたよ。
字幕があってよかった。
「水を描かせたら、この人の右に出る者はいない」などとも言われたようです。
絵の鬼との異名もあり、とにかく上手い上手い。
伝統的な浮世絵を「下手くそ」とバッサリ切り捨て、新しいスタイルの日本の画家として、まずアメリカで成功しています。
機会があったらご覧になってくださいね。
実は、この記事を書いているとき、Hikariさんに見てほしいと思っていました。
吉田博はたいそう山が好きで、実際に登ってたくさんの絵を残しています。
ことのほか、穂高連邦が好きだったのですって。
それゆえ、次男に穂高という名をつけています。
山の絵もわんさかありました。
雷鳥もいましたよ(笑)
ちょっと痩せていたけれど。
ぜひ、ご覧になってくださいね。
美術館情報は、ホームページチェックか、新聞・雑誌の展覧会紹介の記事を頼りに集めています。
地道に執念深く(笑)
口コミも大事ですね。