この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

『ダークナイト・ライジング』についての最終考察、その三。

2013-04-18 23:46:06 | 旧作映画
 『ダークナイト・ライジング』についての最終考察、その二の続きです。


 バットの操縦中、ブルース・ウェインが瀕死の状態だったというのはただの想像ではないか、と仰る方もいるかもしれませんね。
 あれだけ深い傷を負っていたのであれば、出血多量で意識が朦朧としていたに違いないというのは自分にとって当然の帰結なのですが、まぁいいです。
 次に移りましょう。

 ブルース・ウェインはどうやって飛行中のバットから脱出しえたのか、そのことについて考えてみましょう。
 結論から述べます。
 不可能です。
 今この記事を目にしている誰よりもそのことについて検証を重ねたつもりですが、あの状況下、あの条件での脱出は不可能だという結論に達しました。

 何を言ってるんだ、バットには自動操縦装置がついていたのを知らないのか、ブルース・ウェインはそれを使って脱出したのだ、そう思われる方も多いかもしれませんね。
 確かにバットには自動操縦装置がついていました。
 が、ブルース・ウェインにはそれを起動させるタイミングがないはずです。
 
 唯一可能だったとすれば、浜辺やビルの屋上に一旦バットを着陸させ、機外に脱出、その後自動操縦装置を使ってバットを遠隔操作するというやり方ですが、ブルース・ウェインは生きていたと考える方であっても、一刻一秒を争う状況で、そのような悠長なやり方で彼が脱出するはずはないと思うでしょう。

 単純に飛び降りたのだろう、と考える方もいるかもしれませんが、それもまた不可能です。
 飛び降りたと考える方はおそらく『バットマン・ビギンズ』においてバットマンが暴走する列車から飛び降りたことが頭の片隅にあるのでしょう。
 しかしながら暴走する列車と高速飛行する機体を同一視することは出来ません。
 そもそも飛行する機体から飛び降りようと思ったら、まずキャノピー(風よけ)を開けなければなりません。
 高速飛行中にキャノピーを自動開閉できる飛行機なんて聞いたことがありません。
 技術的に可能だったとしてもそういった事態を事前に想定していなければそういった自動開閉装置をつけるはずがありません。
 
 何を言ってるんだ、飛行機であれば緊急脱出装置がついているのが当然だろう、バットマンはそれを使って脱出したのだ、そう仰る方もいるでしょうが、それはより不可能です。
 緊急脱出装置とはつまり射出座席のことを指すのだと思いますが、射出座席というのは火薬を使って座席ごと射出する脱出装置のことであり、コクピットでバズーカをぶっ放すようなものです。
 コクピットでバズーカをぶっ放して、機体が安定した飛行を続けられるはずがありません。直後に墜落します。

 つまり、バットマンが無事帰還したのであれば、当然何らかの脱出方法を用いてであり、その脱出方法は二つの必須条件があります。
①機体から離脱する際まったく無反動である。→機体が墜落しないため。
②離脱後、さらに高速で移動できなければならない。→核爆発に巻き込まれないため。
 この二つの条件を満たす脱出方法を自分は思いつくことが出来ませんでした。


 では次にブルース・ウェインの性格から考察してみましょう。
 バットの操縦中、瀕死の状態だったブルース・ウェインが何らかの方法を使って、無事に生還したとしましょう。
 そして一ヶ月後、もしくは半年後、パリだかフィレンツェだかで執事のアルフレッドと再会を果たした。ブルースの傍には恐らく恋人であろうセリーナ・カイルがいる。
 このシチュエーションが既におかしくはないですか?
 ゴッサムシティに完全な平和が訪れた、というのであればわからなくもありません。
 しかしそうではありません。
 バットマンによって一時的に平和がもたらされましたが、それは決して恒常的なものではありません。
 そのことはジョン・ブレイクことロビンがブルース・ウェインの後継者になるであろうことが示されるラストからも伺えます。
 
 そう、ラストでは大いなる運命に導かれてロビンがブルース・ウェインの後継者になることが示されます。感動的なラストです。
 そのことに異論はありません。
 しかしながら決してブルースはそのことを画策していたわけではないんですよね。
 ロビンのような若者を好ましく思っていたことは間違いないと思います。また、彼が自分の後継者になってくれればいい、ぐらいのことは思っていたかもしれません。

 しかし決して画策していたわけではない。
 なぜなら彼が背負っていた苦役はあまりにも酷すぎるものだったから。
 自らは満身創痍の状態になり、愛する恋人は救えず、人々から称賛されることもない。
 これほどの苦役を他人に引き継げ、とは口が裂けても言えないでしょう。
 ロビンがブルース・ウェインの後継者となったのはあくまで大いなる運命に導かれて、言い換えれば偶然にすぎません。

 ロビンがたまたま自分のあとを引き継いでくれたからいいようなものの、引き継がない可能性だって大いにあったわけです。
 にもかかわらずすべてを偶然に任せて自分は恋人と観光地でバカンスを楽しむっていうのは無責任ではないですか?
 『ダークナイト』三部作はブルース・ウェインが無責任なろくでなしに成り果てる物語だったのでしょうか?
 そうではないはずです。
 仮に満身創痍となって今後バットマンとして活動するのが難しくなり、誰かに後を引き継いでもらわなければいけないという状況となったとしても、その引き継いでもらった相手のことは最低限全面的にサポートするの彼のやり方ではないでしょうか。
 遠い異国の地から、ロビン、後はよろしく頼む、などとエールを送るのがブルース・ウェインのやり方だとは思えません。
 そういった性格面から検証しても、ブルース・ウェインは死んだ、そう結論付けるのがしっくりくるのです。

 
                               最終考察、その四
コメント (2)
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