すみません。再録です。
2017年3月28日投稿「現実的な話をします6-2」&2017年3月31日投稿「現実的な話をします7」の「おまけ」のみ。
「おまけ」の話、探すのが面倒なので短編として抜き出してます
-------------
インフルエンザに罹った場合、別々に暮らすことにしている二人。
2016年の「つきあった記念日」は、浩介インフル罹患中のため、慶は高校時代の友人溝部のマンションに泊まっています。
【浩介視点】
おれがインフルエンザになってしまったため、別居中のおれ達……
慶は様子を見に来てくれて、着替えさせてくれたり、洗濯、洗い物、掃除をしてくれるけれども、マスク着用でほとんど話さない。必要以上には触れてくれない。しょうがないこととはいえ、さみしい……
3日目の夕方……。
熱は下がっているけれど、食べられなかったせいか体力が落ちていて、むしろ熱があったころよりも朦朧としていた。
(あー……今日は記念日だったのになあ)
12月23日は付き合った記念日。いつもならば食事に行ったりするのに……
慶はおれをベッドの上に座らせ、淡々と、蒸したタオルでおれの体を拭いてくれ、新しいパジャマに着替えさせてくれる。
(慶……お医者さんみたい)
って、本当に医者だった……って当たり前のことを思う。
でも、本当に、おれは単なる患者って感じで、この着替えも作業でしかなくて……
(慶は寂しくないのかな……)
溝部と楽しく過ごしてるのかな。溝部がラインで教えてくれたけど、今日から鈴木さんの息子の陽太君が来てるんだもんな。楽しそうだな……
会えない寂しさと、朦朧とした頭とで、なんだか泣きそうになっていたのだけれども……
「………浩介」
ぼそっと小さなつぶやき……
そして。
「!」
後ろからぎゅっと抱きしめられた。
(………慶)
愛おしい気持ちが伝わってくる。その愛に包まれていると実感できる……
でも、そのぬくもりはすぐに離れてしまった。そして容赦なく寝かされてしまう。そのまま、また、淡々とした作業に戻り、慶は出て行ってしまった。
「慶………」
でも……背中が温かい。
離れていても、少しの時間でも、その愛は確かにここにある。
「早く良くならないと……」
よくなったら記念日のお祝いをしよう。どこに行こうかな……
そんなことを思っていたら、いつの間に眠っていた。
-------------------------------
【慶視点】
(↑のちょっと前の話。鈴木さんの息子・陽太君がお母さんの卒アル見たい、というので、溝部が出してきてくれました)
卒業アルバムなんて久しぶりに見た。
おれと浩介は高2の時だけ同じクラスだったので、卒業アルバムは別々のページに載っている。でも、唯一、修学旅行は高2の時だったので、このページにだけ一緒に写った写真がある。
『おれ達にはどんな将来が待ち受けてるんだろうなー?』
松陰神社で、長谷川委員長が空に傘を突き上げて叫んでいた言葉を思い出す。
あの時おれは、どんな将来が待ち受けているとしても、おれの隣には浩介がいると信じたい、と思った。祈るように、思った。思いは、叶う。
『慶ー寂しいー』
浩介からのメールに苦笑してしまう。せっかくの『付き合った記念日』なのに、浩介がインフルエンザになったため、おれは溝部の家に避難しにきているのだ。
『うちに帰ってきてー』
「…………」
うちに帰る。そう言えることが、何よりも嬉しい。
うち。おれと浩介の、『うち』。
『わかった。ちょっとだけ帰るから』
そう書くと、たまらないほどの温かい気持ちに包まれた。
-------------------------------
お読みくださりありがとうございました!
一緒に暮らせることや、自分たちを「うち」っていえることって、本当に幸せなことです。
にほんブログ村
BLランキング
↑↑
ランキングに参加しています。よろしければクリックお願いいたします。
してくださった方、ありがとうございました!
「風のゆくえには」シリーズ目次 → こちら
「現実的な話をします」目次 → こちら