創作小説屋

創作小説置き場。BL・R18あるのでご注意を。

再録・(BL小説)風のゆくえには~インフルの日々

2017年07月24日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 短編読切

すみません。再録です。
2017年3月28日投稿「現実的な話をします6-2」&2017年3月31日投稿「現実的な話をします7」の「おまけ」のみ。
「おまけ」の話、探すのが面倒なので短編として抜き出してます


-------------

インフルエンザに罹った場合、別々に暮らすことにしている二人。
2016年の「つきあった記念日」は、浩介インフル罹患中のため、慶は高校時代の友人溝部のマンションに泊まっています。


【浩介視点】


 おれがインフルエンザになってしまったため、別居中のおれ達……

 慶は様子を見に来てくれて、着替えさせてくれたり、洗濯、洗い物、掃除をしてくれるけれども、マスク着用でほとんど話さない。必要以上には触れてくれない。しょうがないこととはいえ、さみしい……

 3日目の夕方……。
 熱は下がっているけれど、食べられなかったせいか体力が落ちていて、むしろ熱があったころよりも朦朧としていた。

(あー……今日は記念日だったのになあ)

 12月23日は付き合った記念日。いつもならば食事に行ったりするのに……

 慶はおれをベッドの上に座らせ、淡々と、蒸したタオルでおれの体を拭いてくれ、新しいパジャマに着替えさせてくれる。

(慶……お医者さんみたい)

 って、本当に医者だった……って当たり前のことを思う。
 でも、本当に、おれは単なる患者って感じで、この着替えも作業でしかなくて……

(慶は寂しくないのかな……)

 溝部と楽しく過ごしてるのかな。溝部がラインで教えてくれたけど、今日から鈴木さんの息子の陽太君が来てるんだもんな。楽しそうだな……

 会えない寂しさと、朦朧とした頭とで、なんだか泣きそうになっていたのだけれども……

「………浩介」

 ぼそっと小さなつぶやき……

 そして。

「!」

 後ろからぎゅっと抱きしめられた。

(………慶)

 愛おしい気持ちが伝わってくる。その愛に包まれていると実感できる……

 でも、そのぬくもりはすぐに離れてしまった。そして容赦なく寝かされてしまう。そのまま、また、淡々とした作業に戻り、慶は出て行ってしまった。

「慶………」

 でも……背中が温かい。
 離れていても、少しの時間でも、その愛は確かにここにある。

「早く良くならないと……」

 よくなったら記念日のお祝いをしよう。どこに行こうかな……
 そんなことを思っていたら、いつの間に眠っていた。


-------------------------------


【慶視点】
(↑のちょっと前の話。鈴木さんの息子・陽太君がお母さんの卒アル見たい、というので、溝部が出してきてくれました)



 卒業アルバムなんて久しぶりに見た。

 おれと浩介は高2の時だけ同じクラスだったので、卒業アルバムは別々のページに載っている。でも、唯一、修学旅行は高2の時だったので、このページにだけ一緒に写った写真がある。

『おれ達にはどんな将来が待ち受けてるんだろうなー?』

 松陰神社で、長谷川委員長が空に傘を突き上げて叫んでいた言葉を思い出す。

 あの時おれは、どんな将来が待ち受けているとしても、おれの隣には浩介がいると信じたい、と思った。祈るように、思った。思いは、叶う。

『慶ー寂しいー』
 浩介からのメールに苦笑してしまう。せっかくの『付き合った記念日』なのに、浩介がインフルエンザになったため、おれは溝部の家に避難しにきているのだ。

『うちに帰ってきてー』
「…………」

 うちに帰る。そう言えることが、何よりも嬉しい。
 うち。おれと浩介の、『うち』。

『わかった。ちょっとだけ帰るから』

 そう書くと、たまらないほどの温かい気持ちに包まれた。



-------------------------------

お読みくださりありがとうございました!
一緒に暮らせることや、自分たちを「うち」っていえることって、本当に幸せなことです。

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へにほんブログ村

BLランキング
↑↑
ランキングに参加しています。よろしければクリックお願いいたします。
してくださった方、ありがとうございました!

「風のゆくえには」シリーズ目次 → こちら
「現実的な話をします」目次 → こちら
コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする