ライオンの詩 ~sing's word & diary 2

~永遠に生きるつもりで僕は生きる~by sing 1.26.2012

海辺に立つ巨木の森

2010-04-14 23:55:22 | 2010春紀伊半島ツーリング~旅日記
三日目の朝、荷物をバイクにくくり付けた後、地図を見ながら今日の行程を整理してみる。
熊野の名所を周りながら、紀伊半島の南端を目指してみることにする。見所満載だ。ただ走るだけなら、なんてことのない距離ではあるが、僕の場合はそうはいかない。どこまで進めるか、それは進んでみなければ分からない。本当に分からない。

古里キャンプ場に別れを告げて、国道42号~熊野街道を走る。尾鷲を過ぎたところで、42号から国道311へ。海岸線の道。右手に山、左手に海。天気はいい。時間も早い。爽快だ。

前にも書いたが、昭文社のツーリングマップル、これはライダーにとっては珠玉の一冊。バイク向きの道が太線で示されている。遠回りでも、その道を通っておけば間違いない。これは妄信ではない。経験による実感。だから、出来るだけ太線の道を通る。
そして名所や名店情報が、オレンジの字で散りばめられている。これもまた役に立つ。特に、下調べの甘い僕にとっては、ガイドブックの役割さえ果たしてしまう。走っていると見過ごしてしまうマイナーな名所が、しっかりとカバーされている。恐るべし、ツーリングマップル。

☆飛鳥神社~千年以上の歴史を持つ神社。海辺に出現する巨木の森。

こんな洒落た謳い文句に釣られて、飛鳥神社に寄ることにした。ツーリングマップルでチェックしていなければ、確実に通り過ぎてしまったことだろう。



いきなり、鳥居の向こう、参道のど真ん中に杉の巨木が立っている。ワオ。巨木に挨拶をしつつ、脇を抜ける。小さな小さな神社が巨木の隙間に申し訳なさそうに佇んでいる。そうか・・・森の中に神社があるわけじゃない。この森が神社なんだ。千年前の人たちは、この森を神様として祀っていたんだ。
数十メートルの参道を歩きながら感じる、生命力の強さ。人が造った石垣など、巨木の根の力の前ではひとたまりも無く壊されていく。



あと千年経って、まだ人間がこの星の上で生き続けていたら、さらに千年分太くなって、参道を完全に塞いでしまった巨木の脇に小さな参道を造って、神様へのお参りを続けているんだろうな。


いや、でも、ちょっと待てよ。。。なぜ、最初から巨木を避けて参道を造らなかったんだ?・・・木は最初からそこにあったはずなのに・・・。・・・千年の歴史のある神社・・・。樹齢数百年の巨木。。。
なるほど・・・参道に生えて来たんだ・・・この巨木。
いやはや・・・千年って・・・途方も無い年月だ。


マンボウの町の入り江にて

2010-04-14 16:46:24 | 2010春紀伊半島ツーリング~旅日記
今回の旅の特徴は、プランが曖昧だということ。
それはいつもと同じだろ?と想うことには想うのだが・・・ならば、「いつも以上に」・・・と付け加えておこう。
その日の予定も、次の日の予定も、その場の時間と天気に寄って決められていく。変えられていく。

パールロードを疾走し、志摩スペイン村の横を通り国道260号に合流する。大まかに言うならば、ここからはずっと海沿いの道だ。海まで僅か1メートルの場所を走る場所なんてのもあったりする。およそ国道とは想えない、普通乗用車がすれ違えない細い道もあったりする。

今日中に、出来るだけ紀伊半島を南下したいと想い直走るが、いかんせん寒い。薄暗くなるとともに、気温の下がり方が尋常ではなくなる。こういう時に何を想いながら走るかと言うと・・・「テント張れる場所・・・ないかな・・・」である。出来れば、冷えた身体を温める「温泉」なんかがそばにあると尚いい。である。

紀伊半島のキャンプ場、無い訳ではない。むしろ、たくさんある。が、、、しかし、、、高い。ひどく高い所は持ち込みテント一泊四千円也。・・・ビジネスホテルに泊まれるってね。温泉旅館に素泊まりで泊まれるってね。こちとら、バイクのミニテント。出せても一泊500円まで。設備なんて何もなくていい。・・・つまり、どこだっていいってことだ。
出来れば、安心して張れる場所がいい。出来れば、目覚めた時の景観が素敵な場所がいい。あぁ、温泉がそばにあると尚いい・・・別に無くてもいいけど。

予想外の寒さと、障害のため想定外の長距離を走ったせいで、二日目にして相当疲れている。この疲労はごく自然に蓄積されていく訳だから、無理は禁物だ。早めにビバークして、早めに寝て、早めに起きる、これがいい。
休憩しながら地図を眺め、iPhoneで検索をして・・・いい場所を見つけた。
紀伊長島の古里キャンプ場。値段はテント一張り二千円。営業期間は夏。・・・つまり今は営業期間外だな。つまり、今はタダだな・・・だって営業していないんだから。いい場所見っけ。そばに古里温泉もある。五百円。
一応言っておくが、場所は借りるが、施設はほぼ借りない。一晩の料理のための水は積んでるし、焚き火で浜を汚したりしない。ゴミはちゃんと持ち帰る。ははは、エコライダー。これ、基本。

紀伊長島古里・・・町の魚はマンボウ。マンボウ食べちゃう。
夏は海水浴客で賑わうんだろうな。今はひとっこひとりいない砂利浜。入り江になっているせいで波は静かだ。

初めて行った北海道キャンプツーリングの時と比べると、荷物の量は減った気がする。余計なものは持たなくなった。洗練されてきたってことだな。
今回のニューグッズの目玉はガスランタン。今まではコールマンの電池式。小さいくせに恐ろしいくらい明るい。明るいのはいいが、電池が5時間しか持たない。そしてその灯りが白い。白い灯りは優しくない。・・・灯りはオレンジ色がいい。ほのかにボワーーーがいい。
ガスランタンはUNIFLAME製のコンパクト。家では試したが、外では初めて。ワクワクしながらガスをセットして点火する。ボワーーー・・・あれ?暗いな。・・・あれ?暗いぞ。・・・あぁぁ、なるほど・・・このランタン、暗いんだ。
結局、電池式ランタンも点ける。だって・・・鶏肉の焼け具合が見えないんだもの。ははは。
でも、役に立たない訳ではない。なんとなくボワーーーっとしていて、気分はいい。ははは。



晩ご飯は、伊勢のスーパーで買った伊勢鶏とネギと白米。ロゴスの焚き火台「ピラミッドグリル」で豆炭を燃やして炭焼きにする。いいねぇ、キャンプ。いいねぇ、地場モノを使ったご飯。旅だねぇ。あぁ、旅だ。



明日の朝ご飯のために、伊勢うどんも買っておけば良かったと、ほんの少し後悔しながら、温泉で温まったカラダを寝袋に入れるのであった。


胸に残るチクリチクリ

2010-04-14 05:06:37 | 2010春紀伊半島ツーリング~旅日記
☆おじさんからの指令~その弐。パールロードを走れ。

前出の松坂牛の牛丼を教えてくれた、道の駅で出会ったおじさん。伊勢近辺の地図を見ながら、何度もこう言った。
「パールロードは走らないといけん」「若い頃は良く走ったもんだ」「パールロードは美しい」「絶対に走って来い」等々。
とにかくパールロード一押しなのだ。

結局、前回の京都伊勢ツーリングの時は、時間の都合で走れなかった。そういうのは胸に残る。少し後悔めいたものとして、記憶の隅や胸の奥の方やカラダのどこかしらがチクリチクリとする。
時間外で入れなかったヴァチカンのサンピエトロ寺院も、修復中だったパリのノートルダム寺院も、駅員に意地悪されて行けなかったフランスのモンサンミシェルも、ついついプランから外してしまったフィレンツェの最後の晩餐も、自分の無力さのせいで行けなかったモロッコのマラケシュも、4WDの車じゃなかったから行けなかったオーストラリア・ノーザンテリトリーのバングルバングルも、最小催行人員に達せずに乗れなかったエアーズロック近郊を上空から眺めるセスナ機も、芸術に溺れ過ぎて見逃したスペイン・フィゲラスのサルバドール・ダリの美術館も、五日間寝坊を繰り返して結局行けなかった深夜特急に出て来るポルトガル・サグレスの岬も・・・全部が・・・他にも数えきれないほどの場所が・・・チクリチクリと僕を刺す。

とにかく僕は、パールロードを走らなければならないのだ。地図を見る限り、良い道そうだけど・・・まぁ何と言うか・・・くらいの感覚。おやじに薦められていなければ、パールロードは走らずに県道32号で志摩に向かうか、県道12号の峠を越えて南伊勢に出る。ルート的に選択肢はいくつもある。がしかしだ、僕はパールロードを走らなければならない。なぜなら、おやじが走れと言ってくれたから。なぜなら、チクリチクリはごめんだからさ。モノの価値なんて自分の目で確かめなければ決して分からない。そう、いいんだよ・・・それがただの海沿いの道だったとしても。


伊勢神宮を出たのは午後三時。ツーリングとして考えると・・・もうすぐ一日が終わってしまう。だが、僕の今日の行程は、まだ半分も来ていない。
パールロードを走るためには、まず鳥羽へ出なければならない。伊勢自動車道と伊勢志摩スカイラインがあるが、二つとも有料道路なので使わない。二つの道路の真ん中を通る県道37号を行く。ここら辺の道は、交通量は少ないし信号も少ない。快適に走れる。天気もいい。鳥羽で海に出て、ここからはずっと海沿いの道。海産物屋が数多く立ち並ぶ。休憩がてらちょこちょこ寄り道をしながら行く。もちろん、海産物屋もひやかしながら行く。牡蠣は安いが、他のものは結構高いな・・・。









いよいよパールロードが近づいてくると、対向車線に大量のライダーを見かけるようになる。つまり、メッカだ。ライダーのメッカだ。やっぱりね、良い道なんだよ。心が躍る。

パールロード・・・山あいを走る整備された道。伊勢湾、熊野灘、太平洋を見下ろしながら延々と続く道。これは気持ちがいい。ははは・・・パールロードだ。真珠の養殖が盛んな土地だ。だからパールロードなんだ。

走れて良かったよ、パールロード。おやじに感謝だ。胸に残り続けるチクリチクリにも感謝だ。チクリチクリが残っていなければ、こんな風に旅をすることもなかったのかもしれないからね。
きっと僕は、これからもずっと、こんな風に旅を続けていくのだと想う。胸のチクリチクリに導かれながらね。

志摩の牡蠣・・・食べてない・・・チクリチクリ。・・・牡蠣が美味しいのは寒い時期だな。いつか寒い時期に食べに来よう(笑)。