アントニオ猪木さんが亡くなりました。難病と闘って、やせ衰えた猪木さんを見ていたので、それほど驚きはありませんでした。むしろ僕の心の中ではこれから猪木さんの存在感は大きくなるのだと思います。いま50才前後の人は「長嶋茂雄のプレーは知らないけれど、アントニオ猪木の戦いは知っている」。それだけのスーパースターでした。
ジャイアント馬場さんも好きでした。馬場さんの試合は楽しかった。対して猪木さんはかっこよかった。美しかった。そして芸術だった。
子供の頃から僕は体が細かったので、長身ではあるものの体格で劣る猪木さんが、人間山脈と言われたアンドレ・ザ・ジャイアントをはじめ、ハルク・ホーガンやスタン・ハンセンなどパワーで勝る外国人選手と勇敢に闘う姿が、今でも目に焼きついています。
「プロレスは八百長」とよく言われましたが、過酷なスポーツであることに間違いはないでしょう。猪木さんは長生きな方で、早死にした人が多いことからも命を削って闘ってきた事が伺えます。
そんななかで、猪木さんが絶対に勝たなければならない戦いがありました。ボクシングのベビー級チャンピオン、モハメド・アリとの一線です。数年前に初めて見たのですが、物凄く内容の濃い戦いでした。立ち上がっての勝負は無謀とみた猪木さんは、寝転がり、アリの足を徹底的に狙います。アリは打ち降ろしのパンチを繰り出しますが、猪木さんは巧く交わして地道にアリの足を狙い続けます。その成果が終盤になって表れ、アリの動きが鈍り、猪木さんが攻勢になったところで終了のゴング。実質的には猪木さんの勝ちだったと思います。確かに地味な試合内容でしたが、あれを茶番といった当時のNHK某キャスターは、まるでわかってないですね。
「元気があれば何でもできる」という猪木さんの決まり文句がきつい時期もありました。しかし、これからは自分を鼓舞する意味でたまには自分に問いかけてみたいです。「元気ですか!」と。
猪木さん、長い間お疲れ様でした。そしてありがとうございました。ゆっくり休んでください。ご冥福をお祈りします。