ざっくばらん(パニックびとのつぶやき)

詩・将棋・病気・芸能・スポーツ・社会・短編小説などいろいろ気まぐれに。2009年「僕とパニック障害の20年戦争出版」

藤井聡太、強さの秘密

2018-09-30 09:23:51 | 将棋
ローテーション的にはそろそろ詩を載せたかったのですが、何も浮かびません(泣)そこでまた16歳の少年について書こうと思います。ですがその前に、毎年、この時期になると触れているクライマックスシリーズについて少し。何度も言うように僕は反対です。広島と西武がやればいい。日本シリーズはプロ野球の世界における名人戦七番勝負だったはず。このままでは権威が失墜するばかりです。大谷君のようなワールドクラスの選手を輩出する土壌を持っていながら、システムを決める人間が野球を知らないのが残念です。大谷君は右ひじ手術となりました。心配ですね。

さて、いよいよ藤井聡太。昨夜、ユーチューブでつるの剛士さんが司会で谷川浩司九段、香川愛生女流三段を招いて藤井聡太七段の強さに迫る番組を発見しました。

藤井七段についてよく言われるのが、終盤力と受けの強さなのだと思います。しかし、昨日谷川九段の解説を聞いていてもう一つ、藤井君の強さの秘密を見つけたような気分になりました。番組の中で藤井君の実践の中から、彼が指した次の一手をつるのさんが当てるコーナーがあって、つるのさんの手に対して、谷川九段「自然な手ですね」つるの「つまらない男ですよ」というやり取りをはさみながら、衝撃を受けたのは、藤井君が敢えて香車に取られてしまう位置に角を動かしたことです。

谷川さんによると相手の香車の位置を変えて、そのスペースに桂馬を打つことが狙いだったそうです。空間づくりですね。相手側から眺めて指されてみると厳しい手です。かといって普通は考えもつきません。覚えたての子供なら「駄目だよ。そこは香車に取られてしまう」と教えるところです。

ふつう、将棋を最初に覚えるのは駒の動かし方だと思います。しかし、少し見方を変えると例えば飛車であろうが、歩であろうが玉の隣に並んでいたら、その場所に玉を動かすことはできません。能力の高い飛車も、能力の低い歩も、同じ邪魔駒なのです。
僕もよく壁ドンならぬ、壁銀という形を作って、玉の逃げ道を少なくしてしまう悪い形を作ることがあるのですが、藤井君は空間を作るということを、他の棋士以上に大事にしているのかもしれません。玉の周りの空間は酸素というとらえ方でしょうか。だから、藤井君は玉を固く囲うのがあまり好きではない気がします。いつでも空間を作っておいて酸素を確保したいという考え方が根底にあるのではないでしょうか。

もっと想像を膨らませれば、唯一、合い駒のきかない桂馬は特別な羽が生えていたり、ロマンチックに盤上を眺めているのかもしれません。藤井少年の目に映る81マスの宇宙は、限りなく立体的でカラフルな世界が広がっているような気がします。
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貴乃花、角界を去る

2018-09-25 22:25:27 | スポーツ
 残念ですね。今にして思うと夏巡業中に一時意識不明になり入院したのも、暑さばかりでなく相当心労も重なっていたのかもしれません。貴乃花親方が相撲界を去る決断を下しました。相撲協会が「貴乃花が提出したのは引退届であり、退職届ではないので受理していない」というのはあまりにも稚拙で、またこれ以上騒ぎを大きくしたくないという思惑が見え隠れします。

以前から八角理事長はじめ、他の親方衆と対立することも多かったのでしょう。貴乃花親方は原理主義者で、また人付き合いも見るからに不器用。行き違いがあったことは容易に想像できます。どちらにも反省すべき点はあったでしょうが、貴乃花はやめてしまうので、今度は協会側が大切な伝統的な部分は守りつつ、古く悪しき体質は変えていくことが求められます。

直接の引き金となったのは、元横綱・日馬富士による貴乃花部屋の貴ノ岩に対する暴行事件。これを相撲協会に通さず、警察に届け出たことが直接の引き金になりました。「事実無根であることを認めれば、許してやる」との協会側の圧力。相撲界に残りたい。これまで通り弟子を育てたい。それでも真実を曲げるわけにはいかない。貴乃花は相撲界を去る決断を下し、千賀ノ浦親方に弟子を託すことにしました。


一時は一兵卒として出直すことを試みた貴乃花親方ですが、もはや彼の席は相撲協会にはありませんでした。協会を去ることを決断した現在の貴乃花に迷いはないと思われます。相撲界の外部の人間になるわけですから、これまでのように弟子たちに対し直接の指導はできません。間接的にアドバイスを送るぐらいのことはするかもしれませんが。「自宅の土俵は残し、これからは少年たちの育成に力を入れ、角界に送り込むような人材を育てたい」と彼は前向きに話しました。相撲を愛してやまない貴乃花の第2、いや第3の人生が花開くよう願うばかりです。
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青年は悲しく笑った

2018-09-21 19:37:07 | 
色のない空だった
歩いて通り過ぎようとすると
右手に死の海が小さく広がっていた
僕の目の前には丸く赤いボタンがある
注意書きには「ボタンを押すだけで人命が救えます」とある

僕はボタンを押した
多くの人がそうするように
するとUFOキャッチャーのように若い男が死の海から救われた
僕の気分は晴れやかだった

何年かのち、やせ細った青年が僕に話しかけてきた
「その節はお世話になりました」
青年が悲しく笑う
立ち去った後姿が生存に疲れた老人のようだった
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藤井聡太vs山崎隆之

2018-09-15 20:18:34 | 将棋
昨日、王位戦予選で山崎隆之八段対藤井聡太七段の対局が行われ、山崎八段が138手で藤井七段を破りました。藤井七段の連敗は2度目のようです。100局以上戦って、連敗を2度しかしていない事のほうが驚きですが。

僕は山崎八段も好きな棋士なので、正直、勝ち負けはどちらでもよかったです。ただ、先手は藤井君になればいいとは思っていました。ここのところ藤井君は後手続きで、久しぶりに藤井君が先手となりました。ということは振り駒でと金が三枚以上出たということですね。女流の里見さんの時は、里見さんに先手を取らしてあげたいと思いましたが、山崎さんはトップ棋士ですし、20年ほどプロの飯を食っているわけですから、後手番を持ったところで崩れることはないとみていました。

序盤中盤はほぼ互角の展開、しかし少しずつ山崎さんペースとなり、最後は必死に食らいつく藤井君の攻撃を正確に受け、山崎さんの見事な勝利でした。藤井君も対局前から、難しい将棋になることは予想していたと思います。初対局とはいえ、山崎さんの強さはある程度想定していたでしょう。強い相手には何度負けてもぶつかっていけばいい。彼はまだそういう年齢です。

「矢内さんの事はあきらめます」。これはユーチューブに何年も前から挙がっていた山崎八段の迷言(笑)です。矢内さんというのは女流の矢内理絵子女流五段の事ですね。彼女は当時、美人で実力もありました。山崎さんは、色白、眼鏡、スマートな風貌から「西の王子」と言われていたのですが、反面サービス精神が旺盛でユーモアもあり、自虐的な話で笑わすことも多いですね。

将棋は「平成の坂田三吉」。このキャッチフレーズは、いま自分が思いついたものですが、それくらい独創的で見ていて面白いです。アマチュアには参考にならないというか、プロでも彼の真似はできないでしょう。だから藤井聡太とは違った意味での天才なんですね。
こないだの棋聖戦で羽生棋聖に挑戦した豊島将之八段が初タイトルを獲得しました。何局目かは忘れましたが、豊島さんが、詰みを逃した場面がありました。それまで中立を装っていた山崎さんが、「ああ」という声を発し、頭を抱えました。解説者としては褒められたものではないかもしれませんが、彼の人柄がよく出ていたと思います。実は山崎さんもタイトルを取っていないんですが、同じ関西所属、自分より後輩のタイトル獲得を願うことは誰にでもできることではありません。勝負師としては少し性格がよすぎるのかな。しかし昨日は16歳の少年に対し、「鬼の山崎」として勝負の厳しさを教えました。

敗れた藤井聡太少年。感想戦の後、新幹線で帰ったのだろうか。そして、もしかしたら車内で涙を流していたかもしれない。女優の菅野美穂が高校3年で「走らんか」に出演していた時、新幹線で東京から大阪へ移動中、セリフを覚えながら、泣いていたと聞きました。菅野さんは進学校でほとんどの生徒が大学進学のため受験勉強する中、今日明日のためにセリフを覚える作業をしている自分に不安を持ったのかもしれません。そうした多感な年ごろの心の揺れや、無数の人々の笑顔や涙も新幹線は運ぶんですね。

昔、JR東海のコマーシャルで山下達郎の曲が流れ、牧瀬里穂が恋人に会うために駅のホームへ駆け込むような場面がありました。僕はパニック障害ともわからない正体不明の病気になり、かなり嫉妬していたのではないかと思います。でも今は少し、病気は治ることはなくても、そこに様々なドラマがあったことを想像できる。年を取りましたね。
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前を向いた君

2018-09-12 19:10:03 | 
夏の疲れを癒しながら
秋の色を加えていく街並み
いつものように俯きながら歩いていた君が
少しずつ速度を落とし、やがて立ち止まった
人々の忙しい足取りが強調される

ほどなく君は再び歩き出した
少しだけ顔を上げながら
相変わらず重たそうな影を引きずって
今更、何も見つからないことは君もわかっているだろうに


愁いを帯びたその白い顔に
灼熱を緩めた眩しい光が射し込んだ
君の不幸を暴くように

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大坂なおみ全米オープン初優勝、打者・大谷が止まらない

2018-09-09 09:29:50 | スポーツ
快挙ですね。テニスの全米オープンで大坂なおみ選手が元世界ランキング1位のセリーナ・ウイリアムズ選手を6-2、6-4のストレートで下し、四大大会初優勝を成し遂げました。

ウイリアムズ選手は終始、荒れ気味でラケットを叩きつける場面もあったようです。怒りは審判にも向けられましたが、セリーナが本当に苛立っていたのは、時の流れの非情さに対してだったのではないでしょうか。セリーナ・ウイリアムズ36歳、大坂なおみ20歳。テニス界の未来予想図は誰から見ても明白なのです。荒れるウイリアムズに対して、冷静さを失わず自分のプレーに徹した大坂選手が日本人初の快挙を手にしました。男子の錦織選手は準決勝で天敵ジョコビッチに敗れましたが、大坂選手のサーブで押し込むスタイルがあれば、すぐにでも頂点に立てるんですけどね。

随分、セリーナ寄りの観客からブーイングを受けたようですが、コートを去り、時間がたつにつれ、大きな喜びが湧いてくるのではないでしょうか。大坂選手、おめでとうございます。


変わって、大リーグ。打者・大谷翔平の快進撃が止まりません。エンゼルスの大谷翔平選手がここ3試合で4本ですか。日本人1年目では新記録ということですが、本人はまったく気にしていないでしょう。今までアメリカに渡った打者とはスケールが比べ物になりません。唯一、パワーで匹敵できるのは松井秀喜さんだとは思いますが、大谷君と比べると逆方向に飛距離が出ないのが難点でした。


それにしてもエンゼルスはなぜ、大谷を投げさせてしまったのだろうか?案の定、大谷投手は右ひじの靭帯を損傷してしまい、オフには手術の可能性もあります。幸いにも打者・大谷としては今のところ悪影響は出ておらず、むしろ投げられない悔しさを打撃にぶつけているような印象です。僕は一貫して打者・大谷の才能を評価していますが、やはり、投手・大谷も捨てがたい。あれだけのストレートを投げられるのはメジャーでも何人もいませんからね。二刀流に関しては本人の意思と運命に任せるしかないのだと思います。まだ左投手にやや難があるなど、未完成の部分があるだけに打者としては今後さらに伸びる余地があると思います。打撃の才能は世界トップクラスであることは間違いありません。大谷翔平は21世紀のベーブ・ルースですから。
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またひとつ、下手になってゆく

2018-09-01 10:32:05 | 
芸術や娯楽は生きる過酷さのひと時の緩和
情熱を傾けることは、苦悩悲哀のつかの間の忘却
それを持たざる者は快適さを求め
座り心地の良い椅子を探し
体が喜ぶ食を求める

幸福難民の長蛇の列は遅々として進まず
日はあっさりと暮れてゆく
並び疲れた者たちはボロボロと列から零れ落ち
ジョギングや散歩に精を出したり
酒で気分を変えてみたり
自ら死を選んだり
周辺の砂場では小さな幸福の達人たちが大きな笑い声を発してはしゃぐ

またひとつ季節が進み
またひとつ生きるのが下手になってゆく
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