ざっくばらん(パニックびとのつぶやき)

詩・将棋・病気・芸能・スポーツ・社会・短編小説などいろいろ気まぐれに。2009年「僕とパニック障害の20年戦争出版」

王座戦準決勝、藤井が羽生を制す

2023-06-29 12:31:13 | 将棋

昨日、王座戦挑戦者決定トーナメント準決勝で藤井聡太竜王・名人と羽生善治九段が激突。結果は123手で藤井竜王・名人が羽生九段を下しました。

 

個人的な予測ではほぼ互角と見ていました。最近の藤井さんは村田六段に苦戦。棋聖戦第2局では得意の終盤で見落しがあり、佐々木大地七段に競り負けました。対する羽生九段は内容的にも充実していましたから。

実際に昨日の対局も後手番ながら藤井さんの得意戦法を受けて、中盤までは羽生さんの柔軟な指し回しが光りました。

 

終盤は細い攻めを繋げる羽生、的確に受ける藤井の展開が続きましたが、攻めが切れたと判断した羽生九段が投了、藤井竜王・名人の勝利となりました。

投了時、AIの形勢は藤井80%羽生20%程度だったため、少し投了が早いのではないかと思った方も多かったかもしれませんが、すでに持ち時間を使いきり1分将棋だったこともあり、投了やむなしでした。

 

藤井竜王・名人は王座戦挑戦まであと1勝に迫りました。しかし、その相手が渡辺明九段と豊島将之九段の勝者というのが因縁を感じさせます。

どちらと対局しても王座戦決勝は激戦になりそうです。お互い、藤井さんにタイトルを奪われてきただけに期するものがあるでしょう。

 

個人的に藤井さんの八冠挑戦は最初で最後のチャンスのような気がします。

ひとつには藤井さんが早熟の天才であることと、もうひとつはAIの進化で藤井さんと他の棋士の実力差が縮まってきている事が挙げられます。もしこの機会を逃すと、また7つの防衛戦に全て勝たなければなりません。これは至難です。

 

とにかく、伸び盛りの佐々木大地七段とのダブルタイトル戦を防衛し、王座戦トーナメントの決勝で勝ち、永瀬王座への挑戦権を獲得する。道のりは険しいですが、そこまでは見てみたいですね。

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メンタルフォーム

2023-06-27 16:54:21 | 

例えば澄みわたる空

爽やかな風が吹いて

空気は軽く

それでいて少し潤いがある

 

現実は分厚い雲に覆われて

いつ降りだすか解らぬ豪雨におののく

空気は重たいまま、そこに留まっている

 

僕の長年の心もこれに似ている

心に纏わり付いたものを恐れ

体はだるく重たい

 

それでも、いやだからこそ身に付けなければならない 

僕の思うところの正しく美しいフォームを

日々の重み、生きる重みですぐにそれは崩れるが

それにも耐えきれる強靭なフォームを

死ぬまでに造る

 

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天才は悲しいものだと思っていた

2023-06-26 11:57:52 | 

子供はみな天才だとよく耳にする

だとすれば天才のみならず

人そのものが悲しい存在になる

しかし、大抵の人間は自らの才能に気付かず大人になる

その方が幸せなのかもしれない

 

清原は一流なのに哀しい男

明菜は一流なのに哀しい女

彼らは20才過ぎにはすでに翳りを纏っていた

圧倒的なパフォーマンスの裏側で

キラキラした街に繰り出しても

むしろその光が闇を際立たせるのだ

 

僕の天才への観念が固まって、

長い年月が過ぎた頃

大谷翔平は出現した

登坂日にマウンドに上がり

それ以外の日は左打席に立ち

そして圧倒的なパフォーマンスを披露する

これまでの野球の常識を覆す青年だ

彼は本当に楽しそうだ

悲しみが見えない

彼の圧倒的な熱量が

ネガティブなものを溶かしてしまっているようだ

 

大谷、これからも頼んだよ

クレバーで勇敢な投手でいてほしい

豪快なホームランを打ち続けてほしい

そして何よりも楽しくプレーしてほしい    

 

 

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角砂糖ひとつ

2023-06-23 11:28:58 | 

角砂糖をコーヒーカップに落としたら

白い立体の姿は二度と見られない

コーヒーを飲み

その甘さに角砂糖の姿を思い浮かべるしかない

 

透明なシュガーケースにいくつもの角砂糖

しかし、それらは似て非なるもの

たとえ刹那であっても

甘い生活と錯覚させてくれた君

 

今は角砂糖の姿さえ目にしなくなった

ただただ君の白さと立体と甘さが

少し記憶に残るだけ

 

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藤井、奇跡的な逆転劇

2023-06-22 11:43:45 | 将棋

藤井聡太竜王・名人は20日、王座戦トーナメント準々決勝で村田顕弘六段に94手で勝ちました。

 

それにしても危なかった。将棋としては藤井さん負けでしたね。しかし、勝負では勝ちました。奇跡の呼び水になったのは藤井竜王・名人の6四銀と指した奇手でした。凄い手でした。

AIはこの手を否定し、藤井さんの勝利確率を2%まで下げました。しかし、AIの最善手通りに指していたら藤井さんは負けていました。あの6四銀に村田六段は迷い、時間も切迫していて正確に指すことが出来ませんでした。

互いに1分将棋になってからの叩き合いの中、久し振りに鬼の藤井を見た思いでした。最後は時間のない中、25手詰めを見事に読み切り、大逆転勝利となり、八冠制覇に辛うじて望みを繋げました。

 

次戦の準決勝は予想通り羽生善治九段です。対村田戦のような内容では羽生さんには厳しいでしょう。藤井さんは快勝でも反省点を探すので、この日の将棋は彼にとって反省点だらけでしょう。羽生さんの巧みな序中盤に互角についていけるかが、勝負のカギになりそうです。

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夏に罪なし

2023-06-19 11:05:08 | 

雲の覆面外したら

いつの間にか太陽は強い力をつけていて

人々を落胆させる

夏が好きでなくなったのは

地球温暖化の影響か

それとも僕らが大人になったからか

とにもかくにも太陽に罪なし

 

覆面の在庫は多く残っていない

それが切れれば本物の夏が来る

誰かにとって迷惑な夏が

誰かにとって忘れられない夏が

 

夏の終わりの教室で、少年少女の焼けた肌

太陽が愛された時代は遥か遠くに

 

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射撃場発砲事件と東福岡の体罰辞任

2023-06-15 11:57:12 | 社会

昨日、岐阜市の自衛隊射撃場で、18才の自衛官候補生の男が隊員に向けて小銃を発砲しました。それにより52才と25才の自営隊員が死亡しました。

時を同じくして、東福岡高校サッカー部の総監督が、部員に平手打ちをしたとして辞任していた事が分かりました。個人的にこの2つのニュースは関連性が強いと見ています。

 

平手打ちというのは、中年以上の人にとって学生時代の日常の風景でした。しかし、時が流れるにしたがって、体罰への社会の目が厳しくなり、ビンタがニュースで大きく取り上げられる時代になったのです。

東福岡高校のサッカー部といえば有名な強豪校で、この70代の総監督も全国優勝を果たし、多くのJリーガーを育てた名伯楽です。おそらく時代の変化に気づきながらも、変化に対応出来なかったのだと思います。

 

まず体罰はいけません。昔のやり方は間違っていました。生徒が悪いことをしたら、言葉で注意し、理解させるのが正しい方法です。しかし、多くの教師は萎縮してしまい、注意さえしなくなってしまったのではないかと推測します。子供に対し親が甘くなった。世間の大人も優しくなった。教師も何も言わない。大人に叱られることがなくなった子供たちは叱られる免疫がないまま社会に出ていきます。

 

そして、叱られ免疫のないまま18才で自衛隊という特殊な世界に入り、厳しく叱られた結果、最悪の形となって表れたのが自衛官候補生の殺人事件です。

この根本を見直さない限り、対処療法のみでは解決は難しいと考えます。

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才能鑑定士(女優篇5)

2023-06-13 15:47:49 | 短編

「女優になりたいという女性は多いです。中には大人になってからずいぶん経った人もいますが、彩乃さんの年代は特に多く、彼女たちにとって女優は憧れの職業なのでしょう。しかし、鑑定結果で50ポイントを越えるのは10人に1人から2人です。彩乃さんの数値は高いといえます」

「そうですか。50を超えてよかったです」

言葉とは裏腹に彩乃の声からは喜びが伝わってこない。

「彩乃。先生が高い数値とおっしゃっているんだから、もうちょっと嬉しそうにしたらどうなの?」

母が娘をたしなめる。

「彩乃さんは優等生だから、テストで64点なら嬉しくはないでしょう。しかし、それとは全くの別物。確率を示しているというのも半分外れています。確率ならば51と49の差は気にする必要のない細かなものです。しかし、この鑑定は50を境に才能の川が流れています。それは泳いで渡れる距離ではありません。彩乃さんは基準の50からさらに14ポイント加算されています。そのように理解して下さい」

藤田の口調はいつもながらに冷静だ。彩乃も藤田の説明を聴いて納得したのか、鑑定結果を見た直後と比べると、見違えるような明るさを纏っていた。

 

「それでは私はここで失礼します」

応接室を出た廊下で藤田は言った。

「先生、本当にありがとうございました。これから娘も目標に向かって前向きに取り組んでいくと思います。主人も納得せざるを得ないでしょう。彩乃からも先生にお礼を言って」

母親は娘に促した。

「ありがとうございました」

彩乃は軽く会釈した。

母親には物足りなかったのか「全くしょうがない子だね。先生すみません」

と言ったが、声色は明るかった。

「佐藤君、お二人を出口まで見送って」

「あっ、はい」

佐藤は白い歯を見せた。

藤田は遠ざかっていく母と娘の背中を見送った。

突然、彩乃が振り返り「先生、私、必ず女優になります」とはっきりとした声で言った。

「楽しみにしているよ」

藤田は彼女の目を見て大丈夫との意味を込め、頷いた。(終)

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才能鑑定士(女優篇4)

2023-06-12 13:05:43 | 短編

「まさか50を切らすようなことはしないですよね」

佐藤の顔は不安に覆われている。

「君らしくもない。ポイントの5や10動かすことがあるのは君もよく知っているはずだ。その判断が出来ないなら私は単なるインタビュアーだよ。確かに私は演技について全くの素人だ。しかしそれでいい。才能鑑定がプロであれば。一流であればそれでいい」

佐藤は沈黙していた。体の動きも止まっている。その様子を見て藤田は笑顔を作った。

「ほら佐藤君。応接室にケーキでも持っていってやりなさい。待たされると人は不安になるものだ」

「そうですね。いま持っていきます」

佐藤は再び動き出し、鑑定室から出ていった。   

 

佐藤は応接室の前で一旦立ち止まった後、ノックして入りケーキと紅茶を運んだ。

「美味しいですよ。遠慮なく食べてください」

佐藤の笑顔がややぎこちない。二人が手をつけようとしないので佐藤がもう一度促すと、彩乃がケーキを一口食べた。

「美味しいです」

彼女は微笑んだ。少しだけ場が和んだ。しかし、それも束の間のことだった。藤田が応接室に戻ってきた。藤田は彩乃の前に封筒を置いた。

「この中に数値が記されています。当初のご依頼通り、女優を職業に出来るかどうかに対する、こちらからの鑑定結果です。ここで見ても構いませんし、自宅に帰ってからゆっくり確認するのもいいでしょう」 

藤田は優しい口調で彩乃に語りかける。

「彩乃、家に帰ってからにしようか」

母が娘に問い掛けた。

 

彩乃は母親の顔を見てから、藤田に目を向けた。

「ここで確認します」

彩乃の声に迷いの色はなかった。

「分かりました。では確認して下さい」

彩乃がハサミを入れ、中身を取り出す。佐藤は彼女の期待と不安の混じった顔を見た。彼はこの瞬間が苦手だ。藤田のもとで働き始めて2年が過ぎたが、この痛々しさにはなれることが出来なかった。

彩乃の眼が数字の上に止まった。両手が小刻みに震えている。

「彩乃、どうした?」

母親が娘を不安げに見た。

「64」

彩乃の声はかすれていた。

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才能鑑定士(女優篇3)

2023-06-11 16:58:44 | 短編

「それもあって先生に女優になれる確率を知りたいと思い、家族で相談した上で先生に依頼することを決めました」

母親が穏やかな口調で付け加えた。

「分かりました。お約束通り数字を出します」

藤田は母親に笑いかけた。そして、一転して真顔になり彩乃に目を向けた。

「最後の質問です。どんな女優になりたいですか?」

彩乃は少し沈黙した。彼女の息遣いが聞こえるようだった。そして意を決した。

「主演女優です。そして見ている人の心を動かせる女優になりたいです」

藤田は彩乃から目を離した。そして事務的な調子で「30分から遅くとも1時間あれば判定できると思います。それまでお待ちください」と言い残し、応接室を出た。後から佐藤もついていく。

 

感情のない部屋で佐藤がパソコンにデータを入力していく。それを藤田は少し距離をおいて凝視する。そして時折、注文をつける。その繰り返しの中、藤田の着信音が鳴った。

「はい、アナライズクオリティーの藤田ですが、ああ、はい。そうですか。了解しました。それでは失礼します」

藤田は表情ひとつ変えずスマートフォンをしまった。

「3日前、銀行から生命保険の会社に転職しようとしていた男性からだ」

「はい。30代半ばの方ですよね。で何と?」

「うん。銀行に残ることにしたらしい」

「ああ、あの方のポイントは29でしたね」

「賢明な判断だと思うよ」

言いながら藤田は軽く頷いた。

「AIの数値が出ました。54です」

「そうか。何とかクリアしているな」

そういった後、しばらく考え込んでいる藤田の様子が気になり佐藤は尋ねた。

「そのままの数値でいきますか?」

「いや、それはない」

藤田はきっぱりと言った。

 

 

 

 

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