ざっくばらん(パニックびとのつぶやき)

詩・将棋・病気・芸能・スポーツ・社会・短編小説などいろいろ気まぐれに。2009年「僕とパニック障害の20年戦争出版」

紙ヒコーキのフライト

2016-01-27 11:11:34 | Weblog
君は投げ時を探している棋士のような顔を浮かべているけど

終わりにするのはまだ少し早かろう

君がパンを食べたくなるのは、体や心がまだ生きたいと叫んでいるから

瞼が重くなるのは、細胞が明日の生活に備えるために休息したいと訴えているから

宇宙の歴史から見れば、君の人生は紙ヒコーキのフライト時間と変わりない

どれだけ辛く苦しい時が長く続こうとも、そんなもんだよ

どんなに幸せな人であろうとも、その法則に変わりはない

所詮、紙ヒコーキのフライト


もう春がそこまで来ている

今年もまた桜はきっと咲くだろう

かつて希望と不安が交差した、君の大好きだった春が微笑みながら

もうそこまで歩み寄っているよ

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詩のタイトルだけ見るとAKBの朝ドラの主題歌の模倣かと思われるかもしれませんが、この詩は何年も前に書いたもので、多分、いちばん最初はここのブログだったと思います。今このブログの過去をさかのぼって、掲載されているかは自分も分かりません。何せ10年以上、続けているし、ずいぶん、削除してしまったものもありますからね。

ただし、詩はブクログのパブーの「カナタニ・ソラノ詩集」という電子書籍に保存しています。「紙ヒコーキのフライト」も収めてありました。

阿久悠、松本隆、秋元康で育った世代ですが、秋元さんは心身ともに骨太の人で、自分とは正反対で共通点などないと思っていましたが、「人生は紙飛行機のようなもの」という発想を共有できて、少し親近感が沸きました。
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親が自分に求めたもの(自分語り)

2016-01-23 23:47:20 | Weblog
初めて自分が小説を書いたのは「肉体を盗んだ魂」だと思っていました。しかし、その遥か昔、小学生の頃に、短編ともいえぬほど短い、ノンフィクション風のフィクションを書いたことを思い出しました。本もろくに読まないくせにね(笑)

なぜ、この記憶が心の奥底に沈んでいたのか?おそらく親に褒められなかったからだと思います。たぶん、母親にでしょうね。書いたものを見せたんです。そうしたら「こんなもの、お前に書けるはずがない」と機嫌を悪くしたんです。そして「丸写ししたに違いない」と今で言うコピペ扱い(笑)する訳です。この年頃の文章にしては、まとまりがあるぐらいのレベルだったと思うんですけどね。

将棋で大人たちを負かしたりしても褒めてはくれなかった。その代わり、通知表やテストの点が良かったり、部活で賞状を貰ってきたりすると喜んでくれるのです。

大人になってわかるのですが、親が自分に求めていたのははみ出した才能ではなく、もっと常識内のできの良い子、理想は秀才だったんだと思います。その証拠に私の名前には「秀」という字が入っています(笑)自分もそれに合わせようとするんですが、これが非情に難しい。

親は言いませんが、自分は本来、左利きだったと思います。最初に変だなと思ったのは、僕は走り幅跳びを右足で踏み切るのですが、他のクラスメイトは左足で踏み切るんです。今は字も右で下手なりに書き、箸も右ですが、歯ブラシは左手に持って磨きますね。

学校にしても家庭にしても、昭和の画一化の教育は、自分のような変わり者には合っていなかったと思います。今はそうした教育が残ってはいても、随分、型にはめないで育てる文化が育ちつつあるように見えます。自分のような変わり者の子も、生きやすくなってきているんでしょうね。
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スマップ、ドラマ、近況など

2016-01-20 21:44:12 | Weblog
ようやく「将王」を書き終えました。読んでいただいた方には重ねて御礼申し上げます。読んだ方にとって、あの小説は100点満点中、何点ぐらいだったのかなと気になります。幼い頃見てたロボコンのような点数は避けたいですね(笑)次回は自分の店が今年10年になるので、それをモチーフにしたものが書けたらなあとは少し思います。

「スマップはあります」と小保方さんに力強く断言して欲しいところですが、こないだ久しぶりにスマスマを見て、難しいのかなと個人的には思いました。もう中居君が端に追いやられ、しょんぼりしている映像は見たくない。

政治家がスマップ人気を利用しようとしているのも気に食わないですね。どうせ「世界にひとつだけの花」がらいしか知らないくせに。私個人はオレンジっていう曲が好きで、あとはオリジナルスマイルとかシェイクとか青いイナズマ、セロリなど自分も彼らも若かった頃の曲が懐かしいです。あと、らいおんハートの2番で稲垣君のパートで「もし君に子供が生まれたら、世界で二番目に好きだと話そう」っていう歌詞があって彼は菅野美穂を思い浮かべながら歌っているのかなあと思ったりしました。

寒さが年々きつくなってくる自覚はあったのですが、こないだ雪が降った日、実は寒さと不安感から帰り道で調子がおかしくなって、少し過呼吸になりました。2度ほど首が凄い力で引っ張られるように下を向き、両手が両膝を掴んでいました。マラソンを走り終えた後のように。発作というほどではなく、数秒でまた歩き出すのですが、帰宅後は正直「もう駄目かな」と落ち込みました。でも同世代の、まあ特に中居君なんですが、彼も苦しいだろうな。自分ももう少しやってみようかと思い直しているところです。

ドラマも何本か見ました。真田丸は菅野ファン目線で見ると、勿論、主役の堺さんは夫だし、草刈正雄さんは20年前、彼女の初主演ドラマ「イグアナの娘」で父親役でした。母親役は今は亡き川島なお美さん。その草刈さんが今回は堺さんの父親役。感慨深いですね。「彼女は生母のような子です」という草刈さんの台詞は忘れられません。

あと有村架純主演の月9ドラマも見ました。最後、手紙を読んでいる時の彼女の表情が良かった。あまちゃんで小泉さんの若い頃の役から注目してたので、大きな女優になってもらいたいです。

長嶋さんが清原さんにかけた温かい言葉、北川景子さんの結婚についても書きたかったのですが、長くなったのでこの辺で失礼します。
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将王 最終手「郷愁」

2016-01-19 21:34:23 | Weblog
「小倉先生、残り10分です」。記録係の戸前の声。小倉の耳にも届いているはずだが、その若々しい声に何の反応も示さず、視線を盤上から動かさない。

「寄りそうもない。ここまでなのか」。小倉にはヘボンが笑ったように見えた。土井の顔は見たくない。小倉は静かに目を伏せた。脳内でオクラホマミキサーが流れ出した。

小学校の校庭、初恋の女の子の姿が浮かぶ。それに続き、さして仲がいい訳でもなかったクラスメートとのたわいもない話、将棋道場に現れた小太りのおじさん。学生服姿で対局するプロになりたての自分。中多を破り、初めて将王のタイトルを手にした時の喜びの感情。そしてかつての恋人、高林梨奈の顔が浮かび、その後、「この対局の勝ち負けによって、あなたの価値が変わることはないですよ」と川野の声が聞こえ、オクラホマミキサーが止んだ。

「小倉先生、残り5分です」

小倉は胸の辺りが、しだいに熱くなってきたのを感じ取った。そして、それが上へと流れていく。

「あれ、どうしたんだろう?」。小倉の目から涙がこぼれ、頬を伝った。「涙って、温かいものなんだな。すっかり忘れていた」

小倉が最後の力を振り絞るように、重りをつけたような駒を指でようやく持ち上げ、升目に落とし込んだ。そこから手がパタパタと進んだのち、小倉の手が、そして少し揺れていた体がぴたりと止まった。

「どうも、負けました」。小倉は淡々とした口調で敗戦を認めた。ヘボンは相変わらず無表情で何も言わず、代わりに土井が少しかすれた声で「ありがとうございました」と頭を下げた。(完)

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これまで読んでいただいた皆さん、有難うございました。
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将王 25手目「どよめき」

2016-01-18 22:47:30 | 小説
勝負は形勢不明のまま、最終盤に突入していた。ヘボンの攻め手を受けることをせず、小倉もヘボンの玉に迫る手を選択したのだ。激しく攻め合う両者。ヘボンの隣で駒を動かす土井も切迫した局面を肌で感じたのだろうか、心なしか青ざめていた。

小倉はジレンマに陥っていた。もう少し時間を使って考えたい。しかし、すでに残り時間は30分を切っている。やはり直感に頼らざるを得ない状況だった。

数手、攻めの応酬が続いたが、先に受けたのはヘボンの方だった。別室で観戦しながら、形勢判断を試みていた多くの棋士たちから、どよめきが起こった。川野は表情を変えず、静かに見守っている。

なおも攻める小倉。固く結ばれていたはずの土井の口が、少しずつ開いていく。攻めがつながるのか、切れるのか小倉自身にも分からなかった。
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将王 24手目「覚悟」

2016-01-17 22:20:02 | 小説
小倉はいわば将棋界の長い長い歴史と戦っている。「通りで強いわけだ」と心の中で苦笑いを浮かべてみる。

「小倉先生、残り1時間です」

記録係の戸前三段の声が小倉の耳に届き、視線を声の主に向ける。若者は気押されたように俯いた。

あと1時間。小倉の形勢判断では少し苦しいが、まだはっきり悪い訳ではなかった。しかし、このままの状態で時間を使いきり、秒読みにでもなれば、勝ち目のない事は分かりきっていた。残り時間のあるうちに、勝負を決したい。小倉は直感を頼らざるを得ないと覚悟した。
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将王 23手目「結晶」

2016-01-16 21:35:50 | 小説
昼食休憩を挟み、午後1時に再開されてから、さらにしばらくの時がたった。6時間あったはずの小倉の持ち時間も、すでに2時間を切った。勝負はすでに中盤、いや終盤の入り口といった方が的確かもしれない。この時点でもプロ棋士たちが形勢判断に困るほど、優劣をつけるには難しい戦況だった。

小倉の額からは汗が滲んでいる。ハンカチで汗を拭いながら、盤面を食い入るように見る彼の姿は「ロボット」「冷徹」という彼のイメージからは程遠かった。まるで時限爆弾を処理しているような緊迫感で、彼は駒を移動させる。時に10分、時に30分という時間を費やしながら、少し震えた指で駒を挟むのだ。

小倉は少し意識が遠のくような、盤面に吸い込まれるような感覚の中で、感じていた。ヘボンの指し手は、決して冷たくない。むしろ温かみのある人間味のある手を指してくる。どこか懐かしい手。それもそのはずで、ヘボンのデータには小倉は勿論、川野、遠山、中多らあまたの棋士たちの努力の結晶が詰まっているのだ。
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将王 22手目「勝算」

2016-01-15 23:36:14 | 小説
「勝つ。勝ちたい。いや、それよりも負けたくない」。小倉の偽らざる気持ちだった。そしてかなり弱々しい決意だった。

かつてこれほど勝算のない対局があっただろうか?いやプロに入ってから、これほど分の悪い戦いはなかった。プロになりたての頃、当時の将王との対局の時も、結果はともあれ、気持ち的には五分五分のつもりだった。この戦いに勝てる確率は2割。ここ数年、小倉なりにヘボンについて研究はしていた。圧倒的に強い。かつては隙のあった序盤も、ほとんど見当たらなくなった。偽らざる小倉のヘボンに対する評価だった。

「奇策でいこうか?」。小倉は今朝の朝食の時まで迷っていた。しかし、対局室に入り、いまや宿敵となったヘボン、そして隣に座る土井、そしてその手前に置かれている将棋盤を見た時、心の揺れは止まった。そして決意を固めた。

「自分は将王である。弱者の戦術は採れない」

戦いはこれまでに何度も見られた定跡の手順で淡々と進んだ。
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将王 21手目「実現」

2016-01-14 21:12:20 | 小説
コンピュータソフト・ヘボンの開発グループの中心人物である土井は、突然、降って沸いた話に驚き、そして瞬時に喜びに変わった。彼は「どれだけ時間をかけて研究してもらってもかまいません。半年でも1年でも」と弾んだ声で川野に伝えた。しかし小倉の答えは意外なものだった。「できるだけ早く対戦したいです」。

かくして川野・ヘボン戦からわずか一ヶ月足らずで小倉将王対ヘボン戦は実現した。将棋盤を挟んで小倉とヘボンはついに向かい合った。ヘボンの代理人の土井が素人の手つきで駒を動かすと、一斉にフラッシュがたかれ、その2分後、小倉が駒を指に挟み、それをこすり付けるように盤上に落とすと、さらに眩しく無数の光が飛び交った。

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将王 20手目「電話」

2016-01-13 17:59:00 | 小説
明くる朝、といっても午前11時を過ぎていた。自室ベッドの上の小倉は、朦朧とした状態で携帯電話を手にした。

「ヘボンと対戦させてもらえませんか?」

受話器の向こうで川野の驚きと戸惑いが感じられた。いま、この朦朧とした時を逃せば、またヘボンに負ける恐怖が自分を支配してしまう。だから先手を打ったのだ。

「いいんですか?」。川野は小倉を気遣うように言った。
「はい。まだ間に合うのであればですが」
「ソフトの開発側は喜ぶと思いますよ。小倉さんと対戦するのが念願だった訳ですから」
「ええ、まあ」
「小倉さん」
「はい」
「この対局の勝ち負けによって、あなたの価値が変わることはないですよ」。川野は小倉の気持ちを見透かしたように言った。
「そうですかねえ」
「ええ、全く変わりません」

本当はその理由を聞きたかった。しかし、あえて小倉はそれを尋ねることなく、電話を切った。
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