昨日、藤井聡太七段の今期最終局がありました。対戦相手は中田宏樹八段。将棋の王道とも評される矢倉の戦型になりました。藤井七段も奨励会の三段リーグに上がるまでは矢倉を得意としていたそうですが、やはり40近く年長の中田八段と比べては経験値は遠く及びません。中盤、中田さんが歩の突き捨てからペースをつかみ、巧みにリードを広げ終盤へ。
最終盤、藤井君が放った銀のただ捨てという苦し紛れの、しかし最善の一手が実り、急転直下、逆転勝ちとなりました。天性の勝負術こそ見せましたが、藤井君側から見ると将棋で負けて、勝負に勝ったといったところです。本人も当然納得はいかない内容なのは間違いないでしょう。しかしこうした苦しい勝負を積み重ねて藤井将棋は着実に進歩するのだと思います。
今年度の最終成績は45勝8敗。8割4分9厘。歴代最高記録には惜しくも及びませんでしたが、史上3位の勝率は見事です。朝日オープン連覇の快挙あり、順位戦の昇級を惜しくも逃し、タイトル挑戦にも届かず藤井君としては喜び半分、悔しさ半分といった2018年度というところでしょうか。
東京での対局の時、デビュー当時から藤井君の胃袋を満たした「みろく庵」が今月末で閉店するそうです。惜別の気持ちがあったのでしょう。昼食も夕食もみろく庵から注文したらしいですが、夕食は局面が緊迫してくる頃ですから、味がしなかったかもしれないですね。それでも藤井君にとっては激動の2年半、利用してきた店への思いは案外、深いものがあるのかもしれません。藤井君は4月から高校2年。新たな戦いが幕を開けます。別れと決意。3月とはそうした季節です。あとは詰将棋解答選手権。またまた周囲を驚かせる結果となるんでしょうね。