ざっくばらん(パニックびとのつぶやき)

詩・将棋・病気・芸能・スポーツ・社会・短編小説などいろいろ気まぐれに。2009年「僕とパニック障害の20年戦争出版」

プリンセスプリンセス「19 GROWING UP」

2024-04-03 11:47:17 | 歌詞

君がくれた靴をはいていた

かかと鳴らす雨上がりの駐車場

チケットも約束もなくて

汚れるのも気にせず歩いたねライヴァル

 

涙は見せない強がり 自慢だった

失くした恋よりも胸に焼きついてる

いじけ顔のフォトグラフが手を振る

 

19 growing  up   一人で戸惑う夜は

借りたままの腕時計動かせば

19  growing  up

君の笑顔 途切れ途切れ

私まで聞こえる growing  up

 

作詞・冨田京子 作曲・奥居香。1988年6月発売。

文字通り、19才の成長を描きつつ、親友を懐かしく思い浮かべる歌詞になっています。

「君がくれた靴」「借りたままの腕時計」。自分にも思い当たるところはありますし、多くの人が同じような経験をしているでしょう。あげたり、もらったり、貸したり借りたりすることで友情を確かめる10代特有の行動かもしれません。

「失くした恋よりも胸に焼きついてる」

女性は友情より恋愛を上に置くイメージを覆す心の風景です。

 

この歌詞のgrowing upは成長と同時に、夢を叶えていく意味合いを強く感じます。

「君の笑顔、途切れ途切れ」

19才。高校卒業から1年程が経ち、毎日、顔を合わせていた時期に比べると、君の笑顔もぼやけてきた。それでも互いに夢を実現することを忘れずに生きていこうという事でしょう。

プリンセスプリンセス、ブレイク前夜のエネルギーに満ちた名曲です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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竹内まりや「真夜中のナイチンゲール」

2024-02-20 16:21:18 | 歌詞

あなたの瞳に映る

哀しみのわけを教えて

どんなに近くにいても

届かない心の裏側

 

My love  私は闇夜に

My love  さえずるサヨナキドリ

ただそばにいさせて

忍び寄る孤独から守るわ

 

My love  その細く長い指に

まとわりつく不安の影を抱きしめたい

My love  刹那に身を焦がして

目覚める明日がいつまで続くのかと

問いかけるNightingale

 

My love  響き渡る遠雷が

新しい春を告げたら飛び立ってく

真夜中のNightingale

 

作詞・作曲 竹内まりや。2001年2月発売。オリコン最高位7位。TBS系ドラマ「白い影」主題歌

 

竹内結子演じるヒロインの看護師・倫子の、中居正広演じる主人公の外科医・直江への思いを歌詞にしています。

 

直江は不治の病に侵されていますが、徹底的な秘密主義で事実をひた隠しにしています。しかし、それでも溢れ出てしまうものがあるわけで「あなたの瞳に映る、哀しみのわけを教えて」と悟られてしまいます。

そして「忍び寄る孤独」「まとわりつく不安の影」といった言葉が並びます。 

「響き渡る遠雷が、新しい春を告げたら、飛び立ってく真夜中のナイチンゲール」。眩しいフレーズですが、それも前文の闇があってこその輝きなのだと思います。絶望の中から希望を見いだす強さを感じます。

 

「白い影」は中居正広のはまり役でした。演技が上手いとは思えない中居さんが何故、はまったか?それは主人公の直江と彼自身が根本的に似ているからではないでしょうか。

 

少し前、中居さんに重病説が流れました。実際にレギュラー番組を休んでいたので、相当悪かったのでしょう。

ただし、病名などは頑ななまでに公表せず、あたかも何もなかったように元のポジションに復帰しているところが彼らしい。

能登半島地震の際もこれまで同様、多額の寄付をしていました。タレントとしてのイメージとかけ離れた高い美学の持ち主なのでしょう。

 

竹内結子さんは本当に残念ですね。死神に取り憑かれたとしか言いようがありません。

しかし、自らの命を絶つ少し前までは、彼女が生きる希望を抱いていたのは間違いありません。そうでなければ、新しいパートナーとの間の子供を生むことなどしなかったはずです。

 

「真夜中のナイチンゲール」を聴くたびに、白い服を纏った若き日の中居さんと竹内さん、そして籠から放たれた鳥たちが羽ばたく美しいエンディングを思い出します。 

 

 

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あいみょん「生きていたんだよな」

2024-02-01 12:29:38 | 歌詞

二日前このへんで飛び降り自殺した人のニュースが流れてきた

血まみれセーラー濡れ衣センコー

たちまちここらはネットの餌食

「危ないですからはなれてください」

そのセリフが集合の合図なのにな

馬鹿騒ぎした奴らがアホみたいに撮りまくった

冷たいアスファルトに流れるあの血の何とも言えない赤さが綺麗で綺麗で

 

泣いてしまったんだ泣いてしまったんだ

何も知らないブラウン管の外側で

生きて生きて生きて生きて生きて

生きて生きて生きていたんだよな

最後のサヨナラは他の誰でもなく

自分に叫んだんだろう 

 

「今ある命を精一杯生きなさい」なんて綺麗事だな

精一杯勇気を振り絞って彼女は空を飛んだ

鳥になって雲を掴んで風になって遥か遠くへ

希望を抱いて飛んだ

 

生きて生きて生きて生きて生きて

生きて生きて生きていたんだよな

最後のサヨナラは他の誰でもなく

自分に叫んだんだろう

 

サヨナラ サヨナラ

 

作詞・作曲 あいみょん。2016年11月発売。メジャーデビューシングル。

最新の統計で小中高生の自殺者数が過去最多を記録しました。これだけ少子化が進んでいる中で、異常であり深刻な事態です。「生きていたんだよな」の歌詞にも、その謎を解く手掛かりが潜んでいる気がしてなりません。

 

冒頭からしばらくあいみょんのセリフが続きます。

「危ないですからはなれてください。そのセリフが集合の合図なのにな」。まさにその通りで、状況が目に浮かびます。

「馬鹿騒ぎした奴らがアホみたいに撮りまくった」

現代社会への強烈な風刺です。我以外はみな風景。まさに風景のように女子高生の死体を撮りまくる愚かさ。

「生きて生きて生きて生きて生きて、生きて生きて生きていたんだよな。最後のサヨナラは他の誰でもなく、自分に叫んだんだろう」

あいみょんのストレートな思いが伝わります。正解かそうでないかは、死んだ彼女にしか解らないけれど、想像することに意味があるのだと思います。

 

「今ある命を精一杯生きなさい、なんて綺麗事だな」

ここは難しいところです。しかし、誤解を恐れていたのでは歌詞や詩は書けません。

最後の「サヨナラ、サヨナラ」が切なく響きます。

 

改めて凄い歌詞です。もしかしたら、今のあいみょんには書けないかもしれない。二十歳そこそこの感性。まだ何者でもないが故の強み。出来ればあいみょんにはこのように社会を風刺する歌詞も書いてほしい。誰にでも書けるというものではないですから。

 

子供は社会の鏡。彼らの自殺が何らかの社会の歪みを表しているのは間違いないでしょう。

 

 

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スピッツ「みなと」

2024-01-12 12:40:51 | 歌詞

船に乗る訳じゃなく だけど僕は港にいる

知らない人だらけの隙間で 立ち止まる

遠くに旅立った君に 届けたい言葉集めて

縫い合わせてできた歌ひとつ 携えて

 

汚れてる野良猫にも いつしか優しくなるユニバース

黄昏にあの日二人で 眺めた謎の光思い出す

君ともう一度会うために作った歌さ

今日も歌う 錆びた港で

 

勇気が出ない時もあり そして僕は港にいる

消えそうな綿雲の意味を 考える

遠くに旅立った君の 証拠も徐々にぼやけ始めて

目を閉じてゼロから百まで やり直す

すれ違う微笑たち 己もああなれると信じてた

朝焼けがちゃちな二人を染めてた あくびして走り出す

君ともう一度会うための大事な歌さ

今日も歌う 一人港で

 

作詞・作曲は草野正宗。2016年発売。

この曲は東日本大震災で亡くなった人々への鎮魂歌と推測されています。草野さん自身は、そうしたことは語っていませんが。元日の能登の大地震。また、阪神・淡路大地震が起きた1月17日が迫ってきた今、スピッツの「みなと」を思い出しました。

 

「遠くに旅立った君」という表現から、君がこの世の人ではないことが解ります。しかも君は1人ではなく、複数の人を指しているのだと思います。「コンサートを見に来てくれた人」「スピッツの曲を聴いてくれた人」。あるいは大地震で亡くなった全ての人々かもしれません。

 

「汚れてる野良猫にも、いつしか優しくなるユニバース」

草野さんの歌詞にはよく野良猫が登場します。野良猫=弱者でそれほどずれていないのではと思います。「優しくなるユニバース」。日本は寄付の文化が根づいていないと言われます。子供が小銭を寄付していたら、「すごいね、偉いね」と褒めてあげることがこの先に繋がるのではないでしょうか。

 

「君ともう一度会うための大事な歌さ。今日も歌う、錆びた港で」

東日本大震災で象徴的だったのは津波です。だからこそ主人公の「僕」は港で死者に向けて歌っています。

「遠くに旅立った君の証拠も徐々にぼやけ始めて」

この曲の発売はこの大震災から5年後。徐々に記憶の風化は進んでいきます。

だから「目を閉じてゼロから百まで」思い出そうとしているのでしょう。

「すれ違う微笑たち、己もああなれると信じてた」。しかし、そうはならなかった。

 

「君ともう一度会うための大事な歌さ。今日も歌う、一人港で」

言葉を断定的にせず、抽象的な言葉を丁寧に並べていく。草野さんらしい、彼にしか書けない鎮魂歌ですね。

 

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手嶌葵(明日への手紙)

2023-12-30 11:13:58 | 歌詞

元気でいますか

大切な人はできましたか

いつか夢は叶いますか

この道の先で

 

覚えていますか

揺れる麦の穂 あの夕映え

地平線 続く空を探し続けていた

 

明日を描こうともがきながら

今夢の中へ

形ないものの輝きを

そっとそっと抱きしめて

進むの

 

人は迷いながら揺れながら

二度とない時の輝きを

そっとそっと抱きしめて

進むの

 

作詞・作曲は池田綾子。2016年2月10日発売。ドラマ「いつかこの恋を思い出しきっと泣いてしまう」主題歌。

 

全体を通して優しい歌詞です。そこに手嶌葵さんのウィスパーボイスという表現が当たっているかどうかはともかく、儚げな声がさらに優しさを増幅していまず。

 

「元気でいますか」から始まるこの手紙は自分に書いた手紙なのでしょう。

 

「覚えていますか、揺れる麦の穂、あの夕映え」

過去の風景を思い起こしているのでしょう。

 

「明日を描こうともがきながら」

手紙の主人公は必死で生きている印象を与えます。

「形ないものの輝きを、そっとそっと抱きしめて進むの」

未来とか希望を大事にして前に進んで行こうと励ましている気がします。

 

「人は迷いながら揺れながら、二度とない時の輝きを、そっとそっと抱きしめて進むの」

この部分は自分というより、聴いている人への作詞した池田さんのメッセージではないでしょうか。

 

決して特別な言葉を使っている訳ではないのですが、それだけに暖かさが伝わってきます。その上にメロディーと手島さんの歌唱が加わり、名曲に仕上がりました。

______________________________________________________________________

 

おそらくこれが今年最後のブログとなると思います。連投がきかないタイプですから。

今年も多くの方にアクセス頂きありがとうございました。20年近く続けてきたブログですが、見てくれる人がいなければ、このブログはとっくに枯れていました。

また、いいねボタンを押してくれた数少ない方もありがとうございました。数が少ないのは当たり前で、自分からボタンを押しにいったことはほとんどありません。それでも毎回のように押してくださる方がいるんです。

 

私にしては、こんな挨拶してそろそろこのブログもそろそろ終わりそうな雰囲気ですが、まあ、続けられる限りは続けるつもりですが。

それでは良いお年をお迎えください。

 

 

 

 

 

 

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銀の龍の背に乗って(中島みゆき)

2023-12-14 12:55:45 | 歌詞

あの蒼ざめた海の彼方で 今まさに誰かが傷んでいる

まだ飛べない雛たちみたいに 僕はこの非力を嘆いている

急げ悲しみ 翼に変われ

急げ傷跡 羅針盤になれ

まだ飛べない雛たちみたいに 僕はこの非力を嘆いている

 

夢が迎えに来てくれるまで 震えて待ってるだけだった昨日

明日 僕は龍の足元へ

崖を登り 呼ぶよ「さあ、行こうぜ」

銀の龍の背に乗って 届けに行こう 命の砂漠へ

銀の龍の背に乗って 運んで行こう 雨雲の渦を

 

わたボコリみたいな翼でも 木の芽みたいな頼りない爪でも

明日 僕は龍の足元へ崖を登り 呼ぶよ「さあ、行こうぜ」

銀の龍の背に乗って 届けに行こう 命の砂漠へ

銀の龍の背に乗って 運んで行こう 雨雲の渦を

 

作詞・作曲 中島みゆき。2003年7月発売。ドラマ「Dr.コトー診療所」主題歌。

 

中島みゆきの唄は、その時代時代で、代表曲が変わってきた気がします。それだけ数多くの名曲を生み出してきたからこそですが。文字通りのタイトル「時代」から「悪女」「空と君のあいだに」「地上の星」、そして近年は「糸」。僕の中で浮かび上がってきた曲がこの「銀の龍の背に乗って」でした。

 

「あの蒼ざめた~僕はこの非力を嘆いている」

直接的にはコトー先生と患者を指しているのかもしれません。非力の象徴として雛を持ってくるんですね。雛鳥なら仕方ない。しかし僕は大人なのにまだ非力なのかと。

 

「急げ悲しみ~羅針盤になれ」

願わくば出来る限り早く変わって欲しい。

「夢が迎えに来て~さあ、行こうぜ」

昨日までのネガティブは消え、今日の主人公の僕は、ポジティブに変身しています。この短い時間に何かきっかけになる出来事があったのでしょう。

 

決して自身の非力さは変わっている訳ではありません。確かに翼は手に入れたけれど「わたボコリみたいな翼」ですから。それでも「銀の龍の背に乗って~運んで行こう、雨雲の渦を」。届けに行こう、運んで行こうと。

 

非力さを嘆いていた主人公が「非力であっても前に進む」との思いに至ったことが、この歌詞の大きなテーマなのでしょう。「弱いままでも前に進んで欲しい」というみゆきさんのメッセージだと思います。

発売から20年を経て、この曲の果てしない大きさを知りました。「銀の龍の背に乗って」は希代の歌姫であり、曲づくりの天才である中島みゆきの生み出した378秒の僥倖です。

 

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かたちあるもの(柴咲コウ)

2023-12-04 13:49:06 | 歌詞

夜空に消えてく星の声

儚げに光る鈍色(にびいろ)の月

二人で泳いだ海は何故

束の間に色変えてゆくんだろう

 

このまま眠ってしまいたくない

あなたをまだ感じてたい

 

もしもあなたが寂しい時に

ただそばにいることさえできないけど

失くす傷みを知ったあなたは

ほかの愛を掴める そう祈っている

 

泣きたいときや苦しい時は

私を思い出してくれればいい

寄り添える場所 遠い夏の日

温もり 生きる喜び

全ての心に

 

作詞・柴咲コウ 作曲・小松清人。2004年8月発売。TBS系ドラマ「世界の中心で、愛をさけぶ」主題歌。

 

最近、柴咲コウの動画を見る機会が多くなりました。若い頃に比べて上品になって、それでいて芯の強さを奥に秘めている印象です。そして相変わらず美しい。歌手としても女優としても才能の高さを感じます。

「かたちあるもの」は当時、新進女優の綾瀬はるかの熱演が印象的な「世界の中心で、愛をさけぶ」の主題歌です。

 

「夜空に消えてく星の声~色変えてゆくんだろう」

かなり抽象的な文章ですが、どこか寂しげで、歌詞全体の世界観を示しているようにも思えます。

「このまま眠って~感じてたい」

何気ない恋人への想いにもとれますが、ドラマの内容から察すると、眠るイコール死を意味するのでしょう。ヒロインは不治の病に侵されています。

 

「もしもあなたが寂しい時に~そう祈っている」

ヒロインが自らの死後の恋人への思いを綴っています。

「泣きたいときや~温もり、生きる喜び。全ての心に」

寄り添える場所、遠い夏の日。眩しくもあり、切ない。

ドラマのエンディングで、この歌詞が切ないメロディーに乗って、柴咲さんの声で流れてくるんですよね。 

 

体当たりの演技の演技に真っ直ぐな歌詞。綾瀬も柴咲も若かった。

 

確かに全体的にはストレートな言葉が並んでいます。ただ、歌詞だけを見ると、、失恋を描いているように写ります。しかし、ドラマを重ね合わせると、また意味合いが違ってくる。20代前半でこうした芸当を持っていたのですから、彼女の作詞のセンスは素晴らしいですね。

柴咲コウはアーティストと呼ぶにふさわしい。

 

 

 

 

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生きてることが辛いなら(森山直太朗)

2023-11-20 13:17:26 | 歌詞

生きてることが辛いなら

いっそ小さく死ねばいい

恋人と親は悲しむが

三日と経てば元通り

気がつきゃみんな年取って

同じどこに行くのだから

 

生きてることが辛いなら

悲しみをとくと見るがいい

悲しみはいつか一片の

お花みたいに咲くという

そっと伸ばした両の手で

摘み取るんじゃなく守るといい

 

何にもないとこから

何にもないとこへと

何にもなかったかのように

巡る命だから

 

生きてることが辛いなら

嫌になるまで生きるがいい

歴史は小さなブランコで

宇宙は小さな水飲み場

生きてることが辛いなら

くたばる喜びとっておけ  

 

作詞 御徒町凧・作曲 森山直太朗。2008年8月発売。

森山直太朗の曲と言えば、作詞は友人の御徒町さんと直太朗さんの共作が多いのですが、「生きてることが辛いなら」は過去に御徒町さんが詩として書いたものを、後に直太朗さんが作曲したものです。

曲がテレビで流れると、賛否の反響が多くありました。一部のコンビニでは放送禁止になりました。

僕はこの曲の歌詞が好きですが、不特定多数の人が出入りする場所で、放送禁止にしたのは正解だと思います。

 

問題の部分は冒頭です。

「生きてることが辛いなら、いっそ小さく死ねばいい」

ここだけを切り取ってしまうと、自殺を助長していると取られても仕方ないのかもしれません。

そしてさらに「恋人と親は悲しむが、三日と経てば元通り」と続きます。御徒町さんも元通りにならないことは百も承知だったでしょう。しかし、遺族も食べず、寝ずでは体が持ちません。深い悲しみと普段のルーティンが混じり合うことになります。

また多少の知り合い程度なら、三日で元通りになりそうです。

 

「生きてることが辛いなら、悲しみをとくと見るがいい~摘み取るんじゃなく守るといい」。

この部分、好きですね。悲しみを捨てるのではなく、抱えて生きることによって、人生はより深くなると言い表しています。

 

「生きてることが辛いなら、嫌になるまで生きるがいい~くたばる喜びとっておけ」

一理あると思うんですよ。辛い人生ほどくたばった時の喜びは大きいのかもしれません。

「生きてることが辛いなら」は最後まで歌詞を読めば、間接的な人生の応援歌であることに気付かされます。

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楓(スピッツ)

2023-11-11 14:00:15 | 歌詞

忘れはしないよ 時が流れても

いたずらなやりとりや

心のトゲさえも君が笑えばもう

小さく丸くなっていたこと

かわるがわるのぞいた穴から

何を見てたかなぁ

一人きりじゃ叶えられない

夢もあったけれど

さよなら 君の声を抱いて歩いていく

ああ僕のままで

どこまで届くだろう 

 

探していたのさ君と会う日まで

今じゃ懐かしい言葉

ガラスの向こうには水玉の雲が

散らかってたあの日まで

風が吹いて飛ばされそうな

軽いタマシイで

他人と同じような幸せを

信じていたのに

これから傷ついたり誰か傷つけても

ああ 僕のままでどこまで届くだろう

 

瞬きするほど長い季節が来て

呼び合う名前がこだまし始める

聞こえる?

 

作詞・作曲は草野正宗。1998年7月発売。

谷村新司さんが草野正宗さんを絶賛しているYouTubeの動画があります。谷村さんは「草野正宗君の歌詞は唯一無二。その世界を誰も侵すことはできない」と話しています。例に挙げていたのが「楓」でした。

 

「忘れはしないよ、時が流れても~小さく丸くなっていたこと」

この冒頭部分に歌詞全体の輪郭が描かれている気がします。まず、これは過去の話であると。そして君の笑顔で主人公の僕は優しい気持ちになれた。仮に君の名前を楓さんとします。

「さよなら。君の声を~どこまで届くだろう」

少なくとも、今現在、楓さんは僕の近くにはいない。せめて声を心に留めて、これから生きていくといった意味にとれます。

 

「ガラスの向こうには水玉の雲が、散らかってたあの日まで」

草野さんの言葉が美しい。もうそれだけでいい。この一文は意味など考えることが無意味な気がします。

「風が吹いて飛ばされそうな~信じていたのに」

軽いタマシイは社会に根づけないで、夢ばかり見ている印象を受けます。それでも人並みの幸せを信じていた。でも、そうはいかなかった無念さを感じます。

 

「瞬きするほど~聞こえる?」

ここの解釈は難しい。ただ、楓さんと付き合っていた時期は瞬きほどに短く、その後に彼女がいなくなった長い季節が来たのだと思います。もっと言えば、楓さんが生きているのかすら分からなくなります。

 

なぜ私が楓を「僕」の恋人だと推測したかと言えば、歌詞全体を見渡すと秋を思わせる言葉がほとんど見つかりません。「楓」は実は秋の曲ではないのかもしれない。でも私はこの時期になると「楓」をよく聴くようになります。一般的にも秋の名曲として定着しています。

私たちは草野さんの魔法に酔っているだけなのかもしれない。その幸福な魔法に。彼の真意は藤井聡太にも読み解けない。解っているのは草野正宗だけ。だから、谷村さんは「彼の世界は誰にも侵すことができない」という表現をしたのではないでしょうか。

 

 

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JAM(THE YELLOW MONKEY)

2023-11-06 13:24:18 | 歌詞

キラキラと輝く大地で

君と抱き合いたい

この世界に真っ赤なジャムを塗って

食べようとする奴がいても

 

過ちを犯す男の子

涙化粧の女の子

たとえ世界が終わろうとも

二人の愛は変わらずに

 

Good  night   数えきれぬ

Good  night 罪を越えて

Good  night 僕らは強く

Good  night 美しく

 

あの偉い発明家も

凶悪な犯罪者も

みんな昔子供だってね

 

外国で飛行機が墜ちました

ニュースキャスターは嬉しそうに

「乗客に日本人はいませんでした」

「いませんでした」「いませんでした」

 

僕は何を思えばいいんだろう

僕は何て言えばいいんだろう

こんな夜は逢いたくて

逢いたくて

逢いたくて

君に逢いたくて

君に逢いたくて

また明日を待ってる

 

作詞・作曲は吉井和哉。1996年2月発売。

吉井さんがより重きを置いたであろう後半の歌詞を載せました。

 

「キラキラと輝く大地で~食べようとする奴がいても」は、個人の小さな存在と巨悪を描いています。真っ赤なジャムは血の意味も含まれていると解釈します。

「過ちを犯す男の子~二人の愛は変わらずに」は愛する気持ちの強さ、尊さを表現しています。

 

「Good  night   数えきれぬ~Good  night  美しく」のくだりは、1番では「夜を越えて」がここでは「罪を越えて」に変わり、より具体化されています。

 

「あの偉い発明家も~みんな昔子供たってね」。当たり前のことであり、また同時に忘れがちな事です。みんな子供の時代があったんだね。

 

「外国で飛行機が落ちました~いませんでした」。日本のマスコミである以上、それを伝えるのは責務で、キャスターが少し安堵の表情を浮かべるのは無理からぬところです。一方で多くの人間が亡くなった事実が置き去りにされる矛盾。そのモヤモヤを「僕は何を思えばいいんだろう~また明日を待ってる」で締めくくっています。

 

この歌詞が乗った上質なバラードが、街に流れてから四半世紀が過ぎました。しかし、今ほどこの歌詞が重く突き刺さる時はないのかもしれません。

 

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