ざっくばらん(パニックびとのつぶやき)

詩・将棋・病気・芸能・スポーツ・社会・短編小説などいろいろ気まぐれに。2009年「僕とパニック障害の20年戦争出版」

藤井聡太の夏、里見香奈の進撃

2019-06-29 19:37:24 | 将棋
竜王戦決勝トーナメント、藤井聡太七段VS近藤誠也六段の対局は藤井七段が96手で近藤六段を下しました。藤井七段得意の角換わりから、中盤以降有利に立った藤井七段が近藤六段の粘りを許さない厳しい攻めで快勝しました。

あと3つ勝てば挑戦者決定戦三番勝負に進めるのですが、道は険しく見えます。藤井七段の次の相手は久保九段。久保さんに勝てば豊島名人、そのあとに渡辺二冠が控えるという大変な山ですね。久保九段には昨期の初対局で惜敗しています。藤井君は同じ相手に連敗することは少ないですから、しっかり研究してくるでしょう。藤井君やや有利と予想します。

ここからは仮定の話になりますが、久保九段に勝ったとして次の豊島名人。三冠でもありますね。豊島さんは手強いですが、彼も角換わりが得意なので、その戦型になる可能性は高いと思います。先後どちらになるかも大きいですが、藤井君勝利の可能性は4割ほどはあるのではと予測します。そしてまた仮に豊島名人を破ったとして次に控える渡辺二冠。現役最強ではないでしょうか。朝日オープンのようにはいかないと思われます。しかし、もしここまで藤井君が勝ち進めば、相当勢いがついているはずなので、やはり4割ほどは勝てる見込みがあるのではと期待します。

こう見ると、もちろん藤井聡太の潜在能力の高さを加味しての予想ではありますが、3連勝の可能性も奇跡というほどではないような気がします。決定戦三番勝負まで進めれば、もう一方のブロックの勝者との対局となりますが、別ブロックはやや不振の棋士が多く、ここは十分勝ち抜ける可能性はあるでしょう。どちらにしても藤井君のブロックの側から広瀬竜王への挑戦者が出そうな流れです。高校野球の地区予選も始まっていますが、同世代の藤井君も頑張って、せめて甲子園での戦いが始まるくらいまでは粘ってほしいです。聡太の夏はいつまで続くでしょうか?

女流棋士では里見女流五冠の活躍が目立ちます。男性棋士相手に女流史上初の4連勝。棋聖戦予選で若手実力者の都成五段に勝利したのは価値がありますね。遅かれ早かれ10勝5敗ラインに達する可能性は十分あります。となればプロ編入試験が受けられるのですが、里見さんの性格はいい意味で男っぽいところがあり、奨励会の三段リーグを抜けきれなかった事で、今の段階ではプロ棋士になる考えはないかもしれません。しかし、まず里見さんが女性として初のプロ棋士となり、後進に道を開くことも大事だと思います。できれば女流も続けて二刀流で頑張って、将棋界全体を盛り上げてほしいものです。


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天才の棒銀

2019-06-23 17:36:05 | 将棋
昨日、藤井聡太七段が王将戦一次予選決勝で若手強豪の千田翔太七段を91手で破り、二次予選進出を決めました。先手となった藤井七段の初手は7六歩。非常に珍しいですね。先手の場合、居飛車の基本的な初手は2つで2六歩か7六歩。これまで2六歩を指し続けた藤井君が飛車道ではなく角道を開けました。そこからクラシックな矢倉に組み上げます。三段リーグの途中までは矢倉を中心に指していたらしいですね。

互いに角を手持ちにした後、藤井七段が1五歩と右端の歩をぶつけました。千田七段が同歩とした後、同銀とし、銀が香車の前に飛び出します。ひふみんの瞳がキラリ。加藤九段が得意とした棒銀戦法です。初心者の時に最初に覚える戦法の代表格でもあります。元名人から初心者にまで愛される戦法をあの藤井君が選択しました。

千田七段は端を受けずに打ち込んだ角を成り、藤井七段は矢倉の堅陣を背景に飛車角交換を強要。その後は激しい攻め合いに。局面が直線的に進む中、次第に藤井有利に傾き、最後は千田玉を即詰みに打ち取りました。

ボクシングでは井岡一翔選手が4階級制覇の快挙を成し遂げましたが、藤井君はクロスカウンターを好みます。この辺りは棋風が似ているといわれる谷川九段と同じです。つまり、自分の攻めが一瞬でも速いとみれば、相手の攻めを受けずに構わず自分のパンチを繰り出していくタイプです。そして谷川さんよりガードが高い。基本的には攻め将棋なのでしょうが、守りにも細心の注意を払っています。藤井君というと最年少、天才、連勝、勝率、AI超えなど様々なキーワードがありますが、将棋の中身もプロらしい魅せる将棋です。

藤井君が指したということで、もしかしたらプロアマ問わず、少し棒銀が指した流行る可能性がありますね。特に将棋を指す子供たちは真似するでしょう。それにしても加藤一二三九段は藤井君が棒銀での快勝を大変喜んでいるのではないでしょうか。食事も忘れて、藤井千田戦の棋譜を飽きることなく並べるひふみんの姿を想像します。

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谷川と藤井がともに勝った日

2019-06-19 19:41:51 | 将棋
昨日は年の差40歳、新旧中学生棋士が登場しました。

棋王戦本戦。谷川浩司九段は若手実力派の菅井竜也七段と対局。個人的には良い内容の将棋を指してくれればという気持ちでした。居飛車党の谷川さんが振り飛車、振り飛車党の菅井さんが居飛車で戦うという珍しい展開になりました。谷川さんが序盤から、持ち前の前身流で穴熊に組んだ菅井玉を粉砕。全盛期を彷彿とさせる内容で谷川さんの快勝でした。まだこんな力が残っているならトップ棋士としての能力はあると思うのですが、残念ながら年齢的にこの実力をコンスタントに出すことが、心身ともに難しいのだと思います。昨日はそれが上手くかみ合ったようです。

中学生棋士でいうと谷川・羽生は居飛車党でありながら振り飛車も指しこなすオールラウンダー。加藤一二三・渡辺明・藤井聡太は居飛車一筋という印象です。さて、その藤井聡太七段。昨日は前期惜しくも昇級を逃したC級1組の順位戦の初戦でした。対局相手は村田顕弘六段。激しい終盤戦になりました。藤井玉も瀕死の状態のように見えましたが、王手をかけ続け、藤井玉を包囲していた駒を引かせ自玉を安全にする高度なテクニックで村田六段を投了に追い込みました。

藤井君が王手をかけ続けている時は、詰みが見えたのかなと思いました。詰みがあったかなかったかは知りませんが、8割方詰みが見えていれば、谷川さんなら詰ましにいくと思います。しかし藤井君は踏み込まず、勝利を優先します。その辺が通算勝率8割5分という驚異的な数字を残す凄さなのでしょう。谷川・藤井の白星揃い踏み。あと何度見られるだろうか。藤井君は今後いくらでも勝てますが、谷川さんがどこまで頑張れるか。

ここで中学生棋士たちの順位戦予想を少ししておきたいと思います。A級は渡辺二冠が本命で羽生九段が対抗。B1の谷川さんですが、陥落の可能性もかなり高いと思われます。息子のような世代が多くなりましたが、心情的には踏ん張ってほしいです。陥落となれば順位戦を撤退するのではないでしょうか。C1ですが、藤井君は上がれるとは思うんですけどね。9勝1敗で昇級と予想しておきます。まだストレートで昇級し続ければ谷川さんが持つ最年少名人の記録を破る可能性は残っています。しかし、これはなかなか難しいかもしれませんね。


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地球の労働

2019-06-18 19:36:46 | 
目覚まし時計が鳴る前に
「死にたい」という心の音で僕は起こされる
多分、本当はまだ生きたいのだろう
だからそれを実際に口にしたことはなく
誰にも知られていない

世間は老後30年の2000万円不足で右往左往し
南スーダンでは明日の食糧の保証もない

生きたい、死にたい、治りたい、産みたい
欲しい、勝ちたい、守りたい、食べたい
愛したい、愛されたい

人々の願いを積み上げれば宇宙に届く
100年かけて地球はそれらを星に運び
また新たな願いと向き合うことになる
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散って、沈んで、咲いて

2019-06-16 22:46:04 | 
散る若葉
生温い風に吹かれて落ちてゆく
水たまりに身を浮かべて気持ちよさそうにしている
「君はまだ落ちてはいけなかった」
隣で眠る枯葉が嘆いた

沈む朝日
これからエネルギーを発しなければならない役割を
どうして君は放棄する
どうして空に背を向ける
声をからし叫んでいた逆サイドの地平線
力尽きる夕日が「こんなこともあるさ」と呟いた

昨今よく見かける平均的な紫陽花
季節が来れば咲き、過ぎれば枯れる
それは庭先の慎ましい安心感
眼差しの静かな幸福感
君たちはほんとに雨がよく似合うね
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雫井脩介「クローズド・ノート」

2019-06-15 19:32:03 | 
自分の記憶を頼りにすれば、主人公の堀井香恵が石飛という青年を見かけたのは、彼が折り畳み式の自転車に跨り、香恵の自宅マンションをじっと眺めていた所でした。この時すでに香恵は石飛に好感を抱いていたように思います。一目惚れに近い感情ですかね。

そしてお互いが初めて顔を合わせたのは文具店。香恵はそこでアルバイトをしていたから、従業員と客としてでした。万年筆の売り場を任されていた香恵はすでに自宅マンションで見かけたことを忘れ、初対面の客として認識していました。その後、何度も石飛が客として訪れているうちに、彼が美術関係の仕事をしていることを知ります。石飛も香恵に次第に信頼を置くようになっていきましたが、香恵のような恋愛的な感情は抱いていなかった気がします。香恵も恋心といっても、それは淡いものだったように感じました。

2人の距離が急に縮まったのは、香恵が自宅マンションから自転車に跨る石飛を見つけ、呼び止めた場面です。石飛からは意外な言葉が。「香恵ちゃん、その部屋見せてくれないかなあ」。一度はあいまいな返事をしたため、石飛は謝り立ち去ろうとしたが、香恵が呼び止め石飛は部屋に入った。彼女は音楽サークルでマンドリンという楽器を演奏していました。石飛がそれを見つけ、彼女はロシア民謡の「ともしび」を披露します。それを聴いた石飛は涙しました。このあたりで、物語の先はある程度読めるのですが、僕は逆に読みたい気持ちが強くなりました。

物語のもう一つの軸は、香恵がこのマンションに引っ越してきた時に、前の住人が忘れていったのであろうノートです。香恵もしばらくは遠慮していたのですが、いつしか読み始めます。真野伊吹という小学校の若い女性教師が書き綴ったものでした。香恵はほどなく生徒に真摯に向き合う伊吹先生のファンになっていきます。また伊吹先生の隆という男性への恋心も我がことのように関心を持ちます。そして伊吹先生に会いたいという気持ちを抑えきれず行動に出るのですが。

スピッツの「夢追い虫」ではないけれど、僕は香恵という特別美人ではなく、魔法も使えない等身大の女子大生でありながら、真面目に行動しても笑われてしまうようなキャラクターの彼女に、不思議な魅力を感じました。作者の雫井さんのなせる業なのかもしれません。石飛というどこか寂しげな青年もいい。そして雫井さんの実話もこの小説の芯の部分に深く関わっています。最後の方は読み終えてしまうのが惜しい気持ちになりました。マンドリン、万年筆。物語そのものも良かったけれど、小説に流れる世界観が僕はすごく好きでした。

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大谷サイクルヒット達成 イチロー・松井にない魅力

2019-06-14 19:36:13 | スポーツ
大谷選手がやってくれました。日本人初のMLBでのサイクルヒットの快挙。彼の能力は全く底が見えないですね。第1打席にビッグフライではなく弾丸ライナーで左中間へのスリーランホームラン。第2打席二塁打、第3打席三塁打で迎えた第4打席で見事に中前安打。エンゼルスでは史上7人目だそうです。最終打席も四球でよかったという冷静さがサイクルを呼び込みました。

それにしても投打にわたり次々と見るものを驚かす事をクールな顔をしてやってのける大谷翔平とは何者なのだろう。能力的には歴代の選手を含めてもナンバーワンでしょう。投打ともにメジャーでも超一流のレベルにありますからね。

今回のサイクルヒットから、大リーグの日本人打者の代表格であるイチロー、松井秀喜と比較してみます。まず、イチローの場合、三塁打の確率が高い選手ではあります。しかし、三塁打というのは最も打者として難しく、イチローの快足でもそうそう量産できるものではありません。あとはホームランの少なさですね。結局、ホームランと三塁打を同じ試合で打つ確率はものすごく低くなります。
一方、松井はパワーはありますからホームランの可能性は大いにあるのですが、三塁打が困難です。決して足の遅い選手ではありませんが、巨人時代に比べると脚力も落ちていました。よってよほどの運がなければ彼らがサイクルを成し遂げることは難しく感じます。

それに比べて大谷はメジャーでもパワーヒッターであり、特に逆方向への飛距離が飛び抜けています。そして足も速いため、難関の三塁打も狙える選手です。イチローの泣き所の本塁打、松井の泣き所の三塁打を期待できる大谷は、彼らと比べて格段にサイクルヒットの確率は高くなります。運が少し味方してくれればまた近い将来見られるかもしれませんね。

それに、イチロー、松井をはじめ他のいかなる一流打者と比べても、まだ半分も振り込んでいないはずです。これまで多くの時間を投手としてのトレーニングにつぎ込んできましたから。それを考えると、打者一本に絞ったらどれだけの成績を残すのか想像がつきません。まさに21世紀のベーブルースとなる逸材です。

今季に限れば、徐々にボールが上がり始めたので30本以上は期待したいですね。開幕は1ヶ月遅れましたが可能性は十分です。そのためには怪我をしないことが絶対条件になります。イチローも松井も体が強く試合を休みませんでした。無事名馬。怪我に強い選手になれれば、今後10年、15年、大谷君なら途轍もない記録と記憶を残してくれるのではないでしょうか。頑張れ大谷翔平。君は最も野球の神様に愛されたようだ。
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白石一文「永遠のとなり」

2019-06-12 18:34:24 | 
最近読んだ本で「永遠のとなり」「クローズド・ノート」と2冊続けて良かったのでとりあえず先に読んだ「永遠のとなり」の感想を。

主人公の青野精一郎は48歳。部下の自殺をきっかけにうつ病になってしまい、会社を辞め、離婚して故郷である博多に帰ります。そして故郷にはあっちゃんこと津田敦という小学校以来の親友がいて、彼も肺がんを発病するなど波乱万丈の人生を送ってきました。

精一郎はうつ病で、小説の中では飛行機を避けて電車で移動する場面もあり、少しパニック障害の症状も出ているようで、年齢も自分と同年代で重ね合わせて物語を読み進めていくことができました。親友のあっちゃんは子供の頃から頭がよく、一橋大学に進学し、銀行勤務を経て20代で東京・銀座に経営コンサルタントの事務所を開業し、順風満帆に映りました。しかし、40歳の時、肺がんを発病し、手術後に精一郎より一足早く博多に戻りました。大病を患ってから離婚と結婚を繰り返すようになりますが、一方で人の面倒見がよく、情の深い人で皆、彼を慕っています。

やっぱり、方言っていいですよね。精一郎とあっちゃんの会話も仲の良さがより伝わってきます。どちらかというと真面目で常識的な考え方をする精一郎に対し、あっちゃんはすごく個性的な人です。物語の後半であっちゃんが感情をむき出しにする場面がありました。

「せいちゃん(精一郎)、わしはいま芯の芯から腹ばたてとるとよ」。その後の言葉を要約すれば、世の中や神様に対して怒っている。今に始まったことじゃない。早くに両親が離婚し、物心ついた時には母親しかいなかった。勉強も怒りでしていた。大学も東大へ行きたかったが、浪人する金がなく一橋にした。銀行に入って親孝行できると思った時に母親は死んだ。そして40になった時、タバコも吸わないのに肺がんになった。今もそれと戦っている。

その後、あっちゃんは、自分が面倒を見ている人たちの惨めな話をし始め、そして最後に「どう思うね、せいちゃん。人間ってなんやろね。わしの人生ってなんやろね」と。あっちゃんの口調は激しい言葉に反して淡々としていました。精一郎は「そいでもさ、みんな一生懸命生きとるじゃん、みんな。それでよかないね」と言葉を返します。

人は何のために生きているのだろうか?僕にもわかりません。人間はなまじ頭がいいばかりにいろいろと考えてしまう。それなのに最も大切な部分がわからない。そうした苦悩を白石さんは見事に描いています。


「クローズド・ノート」の感想はまた機会があれば書きます。これもすごく良かったから、できれば感想を残しておきたいのですが。
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化石の世界

2019-06-07 19:18:06 | 
遠いジーンズがひと夏を駆ける
僕はうつむきながら少しだけ笑う
いつか彼にも訪れるのだろう
生きる難しさを思う日が

街の憤りや息苦しさを包むような黄昏
僕は少しだけ足を緩める
いつか人は今日を忘れるだろう
巻き戻しの利かない交差点で

前を向くことに絶望し
さりとて今を生き抜くのも疲れ果て
僕は少しだけ立ち止まり、期待して振り向く
建ち並ぶ化石の家々、人々、ありとあらゆる風景
強い光を浴び、それらは白々とスカスカに輝いていた
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藤井聡太VS佐々木大地 

2019-06-04 07:51:55 | 将棋
昨日行われた王座戦挑戦者決定トーナメント1回戦、藤井聡太七段対佐々木大地五段戦は139手で佐々木五段の勝利でした。

大激戦でしたね。佐々木五段の先手で始まったこの対局。いま流行の相掛かりという戦型でした。序中盤、やや佐々木五段ペースで進む中、藤井七段も巻き返し、激しい応酬に。最終盤、藤井君が9四銀と相手の香車の真下、タダで取られてしまう位置に銀を打ち込む奇手を放ちました。ソフトは悪手と判断していますが、人間的に見れば凄い手でした。最初意味が分からなかったのですが、恐らく香車を9四の場所に置いて、9四飛成を防いだ手だと思われます。本当は歩を使いったかったのでしょうが、二歩ですから打てません。銀という価値の高い駒を打たざるを得なくなったようです。ちょっとマニアックになってしまいました(笑)それにしても両対局者、死力を尽くしての攻防は名局といってもいいのではないでしょうか。

タイトル獲得に最も近かった王座戦で敗れた藤井君は、今年中のタイトル獲得は難しくなりました。あとは竜王戦を残すのみです。それにしても佐々木大地君の成長は著しい。子供のころ、重い心臓病でしたが、将棋が病気克服の原動力になったといえるのかもしれません。藤井君とは違った意味で奇跡の子です。まだ20代前半、将来の将棋界を背負う一人であることは間違いないでしょう。藤井君との対局もエリート対雑草という見方をしても面白いと思います。

藤井君も成長はしていると思われますが、佐々木君のそれと比べてしまうと少し伸び悩んでいるのかもしれません。勿論、高校生活との両立も大変なのでしょう。ただ、プロ棋士の中で最も若いのは藤井聡太ですから、どこかで大きく伸びてくれることを期待しています。しかし、藤井君は将棋の天才ではありますが、努力の天才とは限りません。彼が努力の天才でもあることを願いたいですね。

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