白雲去来

蜷川正大の日々是口実

ずっと老け役の午前様が凄い。

2015-12-03 14:00:43 | 日記
十一月二十六日(木)雨のち曇り。

昭和の大女優原節子さんの訃報を昨日のニュースで知った。といっても私の世代では、恐らく原節子さんの映画を好んで見た、と言う人は少ないのではないだろうか。二十代の頃に小津作品の名作と言われている『東京物語』を見たが、正直言って「つまらない」と思った。何でこんな地味な映画に金を払って見なきゃいけないのか。と思ったことを覚えている。美人女優の誉れ高い原節子さんも、エキゾチックな貌の女優が多くなった昨今では、さほど美人だとも思えなかった。

小津作品を、しみじみ見るようになったのは五十を過ぎた頃からだった。老境に入って、やっと『東京物語』などの良さが分かってきたのである。それでも特に原節子さんのファンという訳でもないが、高峰秀子さんと同じくらい「名作」の主演女優として、いいなぁ、と思っている。最近は、BSなどでそういった映画を見ることが出来るので有難い。それでも『東京物語』に出ている御前様ではなかった笠智衆は当時四十九歳。その後、『寅さん』までずっーと同じ顔で出ているような感じがする。大したものだ。

午前中来客あり。午後から事務所へ。夜は、寒いので久しぶりに「おでん」。弘明寺商店街の「藤方豆腐店」まで行って、焼き豆腐、厚揚げ、巻き白滝などを買った。この商店街に「おでん」に最適なさつま揚げの専門店があったのだが、いつ行ってもシャッターが閉まっている。商店街の事務局に問い合わせをしたら「閉店した」とのこと。残念である。種が皆小ぶりで、家族で食べるのには丁度良く、値段も安いので好きな店だった。

さつま揚げの良し悪しは、おでんに入れて食べなければ美味しくない物と、そのまま食べて美味しい物にわけられるような気がする。高級なさつま揚げは、おでんに入れるよりも、さっと焼いて生姜醤油で食べる方が好きだ。いわゆる「揚げ物」好きな私としては、そういった意味では、これから嬉しい季節であると言えるかもしれない。

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憂国忌 風が鞭振る 天に地に。

2015-12-03 12:22:44 | 日記
十一月二十五日(水)雨。憂国忌。

「憂国忌 風が鞭振る 天に地に」、とは野村先生の獄中句集『銀河蒼茫』の中の句である。また三島・森田両烈士自決の報に接した時に先生が詠んだ句は、「茫然と 轟然と秋の夕日墜つ」。あれから四十五年か・・・。両烈士の四十五年は、そのまま私の運動歴と重なる。昭和四十五年十一月二十五日、私は十九歳だった。それまで政治意識など全くない、ごく普通の少年だった。

そんな自分を変えたのは、両烈士の自決事件であった。その時以来、「なぜ」と言う言葉が頭を幾度もめぐり、本を読むようになった。みすず書房から出ていた『北一輝全集』三巻を買ったのもその頃で、気負って頁をめくった時の衝撃。難しくて何が書いてあるか全く理解できなかった。その本と真剣に向かい合ったのは、本を買ってから十七年の後のこと。網走の独房で寒さに震えながら学んだ。当時の読書ノートがあるが、約四年余で一千冊の本を読んだ。本を読む体力をつけるために乱読に徹した。もし三島・森田両烈士の事件が無かったならば、こうした体験を絶対にしなかったに違いあるまい。

「憂国忌」はいまや関係者の努力によって歳時記として定着している。いつの日か「群青忌」も歳時記として多くの人に知られたいと思っている。

随分と寒くなってきた。納戸から石油ストオブを出して暖まった。原節子さん死亡の報有り。私の母の世代の女優さんだが、また昭和が遠くなった感あり。合掌。寒いので出かけずに酔狂亭で独酌。

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