白雲去来

蜷川正大の日々是口実

モロッコの地震。

2023-09-11 09:43:48 | 日記

9月7日(木)曇り。

食欲なく朝食は抜いた。昼は、おでんにおにぎり一個。夜は、鶏のもも肉の一本焼き、ナス焼き、麻婆トーフ、モズクの酢の物。お供は、「黒霧島」。酔狂亭にて独酌。スーパーに行ったら冷房が効きすぎていて寒かった。おでんのセットが目に留まったので、夏なのに「おでん」にした。

モロッコに行ったのは、もう30年も前のこと。そのモロッコの古都が大きな地震で壊滅的な被害を受けているという。モロッコでの旅の終着はカサブランカだった。ラバト・フェズ・マラケシュとモロッコの主要な都市を一週間かけてバスで一〇〇〇キロ以上も移動しての旅もこの街で終わる。カサブランカ(白い家)と名付けたのは、ここに城塞を築いたポルトガル人だった。反対にモロッコ第三の都市であるマラケシュは赤一色に染まった建物の外壁から「赤い町」と呼ばれている。

国連広場に面したホテル「ハイアット・リージェンシー」に我々が着いたのは午後の二時。このホテルは、奇数№の部屋が国連広場ビューで、偶数№の四階以上の部屋なら窓から、旧市街やモロッコ最大のハッサンⅡ世モスクが見える。私の部屋は、幸いに偶数であった。北アフリカの太陽が容赦なく照りつけ気温は四十二度まで上がっている。その暑さにあおられてこの国特有の羊を焼く匂いが人々の体臭と入り混ざって旅の間中、私の体にまとわりついて離れない。

映画「モロッコ」中で、酒場の歌手役のディトリッヒが、宿の窓を開けると、「砂漠の匂いがするわ」というセリフを思い出し、旅装も解かぬままにホテルの窓を開けてみた。当然のように、砂漠の匂いなど感じられず、目の前のメデイナ(旧市街)の塵埃と雑踏、そして道路には無秩序なままの車の洪水とクラクション、この全ての喧騒がいきなり熱波と共に部屋の中に入り込んで来た。  

彼方に視線を移すと大西洋が陽炎に揺れていた。

夕食まで時間があるので街へ出てみた。港に続く道には観光客目当ての土産物屋が軒を並べている。三十分程歩くと港に突き当たった。このカサブランカ港はアフリカ最大の港で、大西洋航路の客船や貨物船が出入りし、大西洋で捕れた新鮮な魚貝類などが並んだ市場などがあって活気に満ちている。かつて見た映画「望郷」(ペペルモコ)のラストシーンはこの港だったのだろうか。いや、確かあの映画はアルジェリアが舞台だった。潮騒に吹かれるまま港を歩けば沖では小さな漁船が飛ぶ鳥と覇を競っていた。(拙著『回想は逆光の中にあり』より抜粋)※ハイアットでの野村先生。ハッサンⅡ世モスクが見える。


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