3年前の10月に内科クリニックから紹介された71歳男性(当時は69歳)は、リウマチ性多発筋痛症(PMR)だった。症状の程度と、血糖降下薬で治療されていた糖尿病がプレドニン投与で増悪することもあり、入院治療とした。
プレドニン15mg/日から開始したが、プレドニンに対する反応が良好ではなかった。通常よりも時間をかけての漸減にした。
糖尿病は投与されていた経口高血糖降下薬4剤でもHbA1c7.6%で、ステロイド開始でさらに悪化するため、インスリン強化療法にした。真面目な方できちんと指示通りの治療を受け入れた。
その後、昨年秋までプレドニン5mg/日で継続して、2年経過したところから、さらに1mgずつの漸減を開始したが、4mg/日で症状はないが、かすかに炎症反応が上昇した。4mg/日で経過をみると、PMRの症状が再燃してきた。
炎症反応の程度からは発症時よりは軽度だった。症状も初発時よりは軽度だった。いったんプレドニン10mg/日にして、症状をみて漸減を考慮することにした。
PMRの一部の患者さんは漸減あるいは、治療中止後の再燃がある。CareNeTVの金城光代先生の講演を再視聴して、再燃時の対応を確認した。できればプレドニン5mg/日まで漸減して、そのまま維持したいところだが、どうなるか。
PMRはcommon diseaseで患者さんが案外多いので、PMRのみのまとまった成書がほしい。
CareNeTV
リウマチ膠原病セミナー 第29回
沖縄県立中部病院内科 金城光代先生
リウマチ性多発筋痛症
症例A:65歳男性
主訴:両肩拳上困難
現病歴、身体所見:
・左肩周囲の痛みから、数日後に両肩から後頸部および臀部~股関節の痛み
・朝に強い(1時間以上)
・2週間前から改善なし
・微熱、倦怠感あり
・頭痛、複視なし
・両肩の可動域制限
検査所見:
・白血球8600
・Hb11g/dl、MCV86
・AST45、ALT60、ALP390(<250)
・血沈74mm/時・ステロイド開始前の検査では、CK・甲状腺機能すべて正常
・プレドニゾロンを15mg/日にて開始し、症状は数日でほぼ消失
・プレドニゾロンを15mg/日を4週間継続。炎症反応も3~4週後に正常化。
・12.5mg/日へ漸減し、さらに4週間続けた。
・10mg/日以下では0.5~1mg/1~2か月ずつ漸減したが、7mg/日にて2回目、3回目にもPMR再燃。
PMRの治療
(ステロイド漸減法)
Recommendation
典型的なPMRでは少量ステロイドから開始し、ゆっくり漸減する
・プレドニゾロン15mg/日を3~4週間
・12.5mg/日で3~4週間
・10mg/日で4~6週間
・1mgずつ4~8週ごとに漸減
PMRのステロイド中止率・再燃率
・ステロイド中止率
2年後で50%、3年後で70%、11年後で90%
・PMR再燃率
急激な減量で再発率上昇
初めの1年で1/3が再発
女性の方が再発率、ステロイド累積使用量、ステロイド合併症が多い
Recommendation
PMR症状が再燃したら(炎症反応の上昇だけでなく)
・巨細胞動脈炎の発症があれば、その治療をする
・前回のステロイドに戻す
(初期量まで戻さなくてよい)
・2回以上PMRの再燃を認めたらDMARDの使用を考慮する
ステロイド漸減とMTXの併用
・MTX10mg/週以上でステロイド使用量、再発率低下を認めた
・MTX7.5mg/週とプレセボとの比較では差はなかった(MTXの量が不十分だった?)
MTX併用すべきは?
1)プレドニゾロン7.5mg/日以上で再燃する場合
2)再燃を2回以上繰り返す場合
3)ステロイドの副作用が重篤になりえる場合(骨粗鬆症骨折の既往など)
→MTX10mg/週以上を用いる
MTXをやめるのはいつ?
→ステロイドoffの6~12か月後
PMRにおけるTNF製剤
1.Infliximab(IFX)
(プレドニゾロン15mg+IFX)
ステロイド使用量・再燃率の差なし
2.Etanercept(プレドニゾロン、NSAIDなし)
14日後、PMR疾患活動性はコントロール群と差なし
PMRにおけるNSAID
・ステロイド+NSAIDはステロイド単独に比べ
1)ステロイド累積使用量は変わらない
2)副作用は多い
2.NSAID単独治療で緩解になることあり