なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

講演会に行ってきた

2020年02月17日 | Weblog

 土曜日は県医師会の医学講座(講演会)があった。潰瘍性大腸炎とパーキンソン病の講演だった。

 

 潰瘍性大腸炎

 5-ASA製剤のペンタサは時間依存性(小腸から放出)、アサコール(リアルダも)はpH依存性(大腸に到達して放出)。(前者は遠位大腸では到達量が少ない、後者は大腸でも放出されず排出されることも、という欠点がある)

 5-ASA製剤の効果は容量依存性だが、副作用は容量によらず同じだそうだ。5-ASA製剤は、1)長期の寛解維持に有用、2)大腸癌のリスクを低下させる、3)病変の進展を抑制する。

 5-ASA製剤(メサラジン)不耐症が約2%であり、投与2週間で突然の発熱・腹痛・下痢が出現する。

 中等症以上ではステロイド治療の対象で、中等症ではプレソニゾロン30~40mg/日経口、重症ではプレドニゾロン40~80mg/日点滴静注。難治性では、抗TNF-α製剤や免役調整剤の適応となる。

 潰瘍性大腸炎は、以前は5-ASA製剤で治療できる症例だけ少し診ていたが、最近まったく診ていない。治療も複雑になっているので、もう自分で診ることはないだろう。

 昔々の研修医の時に1例、現在の病院に来てからすぐのころに1例、急性劇症型があった。前者は消化器内科と外科で治療にあたったが、結局亡くなった。その後大学に入局してすぐに、到底一般病院で扱える症例ではなかったと思った。後者は大学病院消化器内科に連絡して搬送した。ちょうど5月の連休の時期で、数日当院でハラハラしながらベット待ちをしていた覚えがある。当時は抗TNF-α製剤の治療はまだ始まっていなかった。

 軽症例以外は、消化器内科の中でも炎症性腸疾患に慣れた先生に任せるべきだと思う。地域の基幹病院消化器内科で炎症性腸疾患を診ていた先生が開業されると聞いたが、後任はどうなるのだろうか。

 

 パーキンソン病

 パーキンソン病は中脳の黒質が変性することでドパミンが欠乏する。黒質から基底核(線条体)への経路では運動症状が起こり、前頭葉への経路(報酬系)では不安・うつ・無気力・認知機能低下が起こる。

 パーキンソン病とレビー小体型認知症は、神経細胞の病理像は同じであり、レビー小体病としてまとめられる。パーキンソン病は運動障害から起こり、レビー小体型認知症は認知障害から起きる。

 剖検例の研究では、パーキンソン病で中脳の黒質に見られる病理像は延髄から始まり、次第に脳幹部を上行していくそうだ。

 神経細胞内にレビー小体を認め、その中にα-シヌクレインが蓄積している。つまりパーキンソン病は、アルツハイマー型認知症でアミロイドβが蓄積するような、「蛋白たまり病」である。

 パーキンソン病の治療は基本的にはレボドパのみ。他の薬剤はレボドパの補助として使用する。レボドパ自体の半減期が2時間と短く、また黒質の神経細胞の脱落により投与されたレボドパをためておけないので、レボドパの作用時間は短かくなる。

 レボドパの有効時間が短くなり、症状の悪化(wearing-off)が起きる。投与回数を増加(1日8回まで=2時間おきに内服)させて対応する。過量になると今度はdyskinesiaが起きる。

 レボドパは空腸でしか吸収されないので、徐放剤化ができない。

 レボドパの効果を持続させるための治療。1)小腸持続注入療法(すでに行われている)。胃瘻から空腸までチューブを入れて、レボドパを持続的に注入する。2)徐放錠(開発中)。カプセル内に大きさの異なる顆粒を混合して持続した効果を発揮させる。日本では同一成分同一価格の縛りがあり、特許の薬も通常のレボドパ(100mgで30円と安い)と同一価格になるため、(儲からないので)販売できない。3)持続皮下注療法(開発中)。皮下注の局所感染などの問題が生じる。

 iPS細胞で黒質細胞を作製するなども行われているが、外部から注入しやすい部位に埋め込むことになる。中脳の黒質に細胞を注入することは(深部すぎて)できない。細胞を作製して注入しても、黒質のように他の神経系との関係で分泌量の調整を受けない細胞を入れるので、症状の改善は難しいだろうということだ。

 レボドパの治療を待つことに意味はないので、早期にレボドパで治療を開始する。レボドパは300~400mg/日までで、400mgを越えると副作用が出るので他剤を組み合わせる。

 パーキンソン病ガイドラインの作成委員の先生なので迫力があった。当方の問題でぼんやりわかったくらいだが。

 

 以前勤務していた病院の院長先生も来ていた。テニスが趣味で、70歳代後半のはずだが、まだまだ元気だ。公立病院を定年退職した後は個人病院の院長先生をされている。いったい生涯どれほど稼がれるのだろうか。

 

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