なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

糖尿病の講演会

2020年02月22日 | Weblog

 火曜日の市医師会学術講演会は糖尿病の講演で、糖尿病がテーマだと参加者はいつもより多い。

 講師は糖尿病専門医である内科開業医の先生だった(別の地区の医師会長)。県レベルの糖尿病講演会でも、教授の特別講演の前に症例提示をされたりしている。時々患者さんのやり取りがあり、穏やかな人格者として定評がある先生で、挨拶をするつもりだった。

 「糖尿病標準診療マニュアル 一般診療所・クリニック向け」や、「ADA(アメリカ糖尿病学会)/EASD(欧州糖尿病学会)のコンセンサス・レポート2018」を紹介されていた。先生ご自身の意見ははっきり言わなかったが、会場の循環器科医から、心臓病がある患者ではSGLT2阻害薬を最初に出しているがと質問されて、やはり第1選択はメトホルミンでと答えていた。

 当院の消化器科医が、講演者の大学同級生ということで、久しぶりに出席して話をしていた。ちょっと混ぜてもらって少しだけ話をしてきた。

 

 糖尿病薬の選択

1. 「糖尿病標準診療マニュアル 一般診療所・クリニック向け」は内容が実質11ページの簡単なものだ。

 ステップ1はメトホルミンで開始する(eGFR30以上で)。ステップ2でDPP4阻害薬を上乗せする。ステップ3でSU薬・SGLT2阻害薬・α-GI(α-グルコシダーゼ阻害薬)のどれかをさらに上乗せする。ステップ4で多剤併用・インスリン・GLP-1受容体作動薬となる。(各ステップで絶対的・相対的インスリン適応がなければ、という条件が入る)

2. 日本糖尿病学会の「糖尿病治療ガイド」には、使用する順番についての記載はなく、医師が適切に選択となっている。製薬メーカーに配慮しているのだろう。

3.「ADA(アメリカ糖尿病学会)/EASD(欧州糖尿病学会)のコンセンサス・レポート2018」では、最初のステップはメトホルミンと包括的生活習慣改善から始まる。

 次のステップはDPP4阻害薬・GLP-1受容体作動薬・SGLT2阻害薬・チアゾリジン薬から選択する。その後はそれぞれの併用になって、最後にSU薬か基礎インスリンの追加になる。

 ASCVD(動脈硬化性心疾患)、HF(心不全)/CKD(慢性腎臓病)の既往がある場合は、SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬が推奨される(ASCVDはGLP-1受容体作動薬、HF/eGFRが適切なCKDはSGLT2阻害薬が優先)。

  第2選択でチアゾリジン薬という選択はないと思う。GLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬の推奨は大規模臨床試験1つか2つだけが根拠になっている。

4. 「ここが知りたい!糖尿病診療ハンドブック」(中外医学社)では、第1選択はメトホルミンを使用する(禁忌がなければ)。第2選択はDPP4阻害薬かα-GIを使用する(第3選択は使用しなかった方)。第4選択でSU薬を最少量を併用する。

 SGLT2阻害薬またはGLP-1受容体作動薬は、肥満している心血管病変がハイリスクな患者さんでは、第2選択として推奨される。

 併用療法は原則3剤までとして、3剤でもコントロール不良な場合はインスリンを導入する。

 糖尿病の医学書としてはベストセラーなので、影響力はそれなりにあるのだろうか。編著者の岩岡秀明先生の意見ではあるが。

 

 個人的には、第1選択がメトホルミンで第2選択がDPP4阻害薬にしているが、逆の場合もある。第3選択はSGLT2阻害薬かSU薬極少量といったところだ。肥満がある場合は、DPP4阻害薬をGLP-1受容体作動薬に切り替えることがある。チアゾリジンは新規処方はしていない。α-GIとグリニド薬はコンプライアンスを考慮して使用する場合もあるというくらい。

 インスリンは持効型インスリンを経口血糖降下薬に追加するBOT から開始している(最初から絶対的・相対的適応以外)。混合製剤朝夕2回打ちは以前から継続の患者さんのみで、新規導入はない。BOTかインスリン強化療法のどちらかになる。

 あまり独自の治療はしないで、普通の標準的な治療を心がければいいのだろう。

 

 

 

コメント
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