11日に臨床微生物学会の第22回感染症学セミナー(東京、慶応義塾大学)に行ってきた。昨年10月13日の開催予定が台風19号通過の影響で中止となって、代替開催になる。
テーマは「迫りくる海外からの感染症~オリンピックイヤーを迎える前に知っておきたいこと~」だった。通常の「海外からの感染症」で準備されたが、今はとにかく新型コロナウイルスの話を聴きたいという雰囲気だった。
今回、忽那先生の「輸入感染症 A to Z」第2版を再読した。
12:35-13:15
日本を取り巻く海外からの感染症:特徴と鑑別のキモ
国立国際医療研究センター国際感染症センター 忽那賢志
概論の後に、新型コロナウイルス感染症の症例を出された。疑い患者に対する時の個人用防護具(PPE:personal protective equipment)についての質問があり、国際感染症センターでは、第一類感染症の時のフルPPE(宇宙服のようなスタイル)ではなく、手袋・ガウン・N95マスク・フェイスシールドで行うそうだ。抗HIV薬を使用したことも訊かれていたが、まだ何ともいえないようだ。新型コロナウイルスは主に下気道にいるので、検体は喀痰培養がよい。どうしてもとれなければ、咽頭スワブになる。
13:15-13:45
海外からの感染症に必要な微生物検査
都立大塚病院臨床検査科 鈴木智一
13:45-14:15
ワクチンで予防出来る海外からの感染症
日比谷クリニック 相野田祐介
1)まずは定期接種のワクチン接種が完了しているか、2)次に渡航に必須なまたは必要なワクチンを接種しているか、3)最後にその他の感染症予防はできているか、を確認する。
マスギャザリングで懸念されるワクチンで予防可能な感染症は、麻疹・風疹・ムンプス・水痘・髄膜炎菌・インフルエンザ・その他。医療従事者が獲得しておくべき免疫は、麻疹・風疹・ムンプス・水痘で、髄膜炎菌ワクチンもすべき(ただし高額2万~2.5万)。
日本環境感染症学会の「ワクチンガイドライン」が参考になる。
14:15-14:30
休憩
14:30-15:10
ケースカンファレンス1
東京大学医科学研究所附属病院感染免疫内科 池内和彦
「パキスタン渡航後の23歳男性(父パキスタン人・母日本人)の発熱」
XDR-Salmonella typhi(超多剤耐性)腸チフス。CTRX耐性でMEPMが感受性あり。MEPMで治療開始したが、血球貪食症候群を併発してAZMを併用して何とか回復。パキスタンでアウトブレイク。
15:10-15:50
ケースカンファレンス2
独立行政法人医薬品医療機器総合機構 森野英里子
「両肺尖部に空洞を呈した1例」
発症前年に仕事でアメリカのアリゾナ州に滞在。気管支鏡でPCR陽性・培養陽性、血清抗体陽性で、コクシジオイデス症(Coccidioides immitis)と診断。抗真菌薬で治療したが、空洞の破裂により、膿胸形成して治療に難渋。輸入真菌症は流行地で特定できる。
15:50-16:10
休憩
16:10-16:40
地域で取り組む海外からの感染症対策:静岡県におけるオリパラ対策
静岡がんセンター感染症内科 倉井華子
医師会、保健所・県に積極的に働きかけて、AMR活動を展開されている。ゴキブリやヒルを趣味で飼っているそうだ。柔らかい雰囲気で、お話がとても上手。気難しい医師会のお偉方もこれなら協力するのでは、と思う。
16:40-17:00
質疑応答、総括、閉会
厚生労働省の定義(変更あり)
感染が疑われる患者は、37.5℃以上の発熱かつ呼吸器症状があり、
・発症前14日以内に湖北省に渡航または居住していた人、
・発症前14日以内に湖北省に渡航または居住していた人と濃厚接触歴がある人
をいいます。
診断方法は、核酸増幅法(PCR法など)があります。実際には、昨今の国内外の発生状況を踏まえ、これらの地域に限定されることなく、医師が新型コロナウイルス感染症を疑う場合に、各自治体と相談の上で検査することになります。その際は、疑似症として保健所に届け出後、地方衛生研究所または国立感染症研究所で検査することになります。
まずはお近くの保健所にお問い合わせください。