先週、心臓血管センターのある専門病院からリハビリ転院の依頼が来た。患者さんは先々週当院から搬送した急性大動脈解離の90歳女性だという。
そんな患者さんがいたかな、憶えがないなあ、と思いながら、当院からの搬送なので引き受けることにした。確認してみると、先々週の月曜日に大学病院から内科新患担当で来てもらっている若い先生が搬送していた。
もともと乳癌のホルモン療法で当院外科に、右大腿骨頚部骨折後・骨粗鬆症で当院整形外科に通院していた。その日患者さんは午前8時半にタクシーに乗った。乗車中に突然に背部痛が発症した。病院に着いた時には意識障害(呼名で開眼)・左上下肢麻痺も起きていた。
通常は常勤医に連絡が行くか、救急当番医に連絡して救急室に運び込むはずだが、何故か内科新患に来ていたバイトの先生が診察した。内科新患には違いないが、月曜日だと他の新患患者さんも多いので、重症を診ている余裕はない。
血管確保・血液検査のオーダーが出て、心電図にはST-T変化がなかった。頭部CTでは異常を認めなかった。背部痛で発症したことから、大動脈解離を疑っていた。胸腹部CTが行われて、上行大動脈から下行大動脈にかけての大動脈解離を認めた。単純CTなのでわかりにくいが、腕頭動脈以上にも解離は及んでいるようだ。
検査しているうちに血圧が70台に低下して、ノルアドレナリンの点滴静注も開始された。その先生が直接専門病院に連絡して、診療情報提供書も書いて搬送した(救急の看護師さん同乗)。
よくバイト先でそこまでしてくれたものだ。自分だったら最初から常勤医に連絡して任せてしまう。転院依頼の診療情報提供書によれば、血栓閉塞型の大動脈解離で、保存的治療(降圧)で落ち着いたそうだ。明日当院に戻って来る。