昨年11月末に95歳女性が地域の基幹病院消化器内科からの紹介で当院内科外来を受診した。今後のフォローをお願いしますという内容だった。
慢性心不全・気管支喘息・変形性膝関節症があるが、性格は快活な心気症?で、認知症もなくハキハキとしゃべっている(耳が遠いので声が大きい)。以前から、家庭での介護が大変になって老人保健施設に入所していた。おしゃべり好きで楽しく過ごしていたようだ。
11月初めに血便があり、施設の嘱託医が消化器内科の外来に紹介していた。直腸指診で腫瘤を触知できた。大腸内視鏡の洗浄液で嘔気があり、全大腸検査は取りやめになったが、(前処置なしでも)生検は簡単にできて、直腸癌と診断された。
説明を受けて、ご本人はもう手術は受けたくない、検査もしたくない、と希望した。希望されても手術してくれる年齢でもないが、経過観察となった。
施設での生活を希望しているので、そのまま施設入所で経過をみるしかない。内腔はまだ保たれているので、治療は便の調整(軟便目標)になる。鉄剤を継続して経過をみることにした。血便が続くのは仕方がない。
2か月後の今日予約を入れていたので、施設職員と家族2名とともに受診した。血便が続いている。血液検査でHb10g/dlと以前と変わらなかった。血清鉄・血清フェリチンも正常域にある。
身長146cm・体重64Kg と体格はいい。先生の顔を見ると元気になる(そういう言い方をする人)、といって笑顔で帰って行った。また2か月後に予約を入れて、病状に変化がある時は随時受診とした。まだいけそうだ。