土曜日は日直で病院に出ていた。回復期リハビリ病棟の看護師さんから、外泊中の患者さんが自宅でけいれん発作を来して、病院に戻ってくるので診てほしいと連絡がきた。
患者さんは10代なかばの高校生だった。4月にけいれん発作で救急搬入された。頭部MRIで脳腫瘍を認めて、大学病院脳外科に救急搬送した。救急で診た内科の若い先生から相談された。てんかん治療を専門にしている小児科医が大学搬送の手配をしてくれた。(その後の経過は確認していなかった)
大学病院脳外科からの診療情報提供書によると、生検で膠芽腫と診断された。化学療法・放射線療法を受けて軽快していた。予後が厳しいため、できるだけ自宅や学校での生活を楽しんでもらうよう言われていた。しかし、患者さんの本人が、もっとリハビリをしないと実際に学校生活ができないと、リハビリでの入院継続を希望した。
家族には入院が長引くと結局自宅に帰れなくなるかもしれないと伝えられたが、本人のリハビリの希望が強いということで、当院のリハビリ病棟(神経内科担当)に転院になった。抗てんかん薬はビムパット100㎎分2内服が処方されていた。
その日は午後から自宅に一泊外泊の予定だったが、自宅に着いて1時間もしないうちに、けいれん発作が起きた。座っていて、後ろに倒れて後頭部を打撲した。母親の話ではけいれんは2~3分程度だったそうだ。
救急者で救急室に搬入された時には、意識が戻っていて会話もできた。打撲による頭蓋内出血を確認するために、頭部CTを行った。6月に大学病院で撮られた頭部MRIと比較した。CTなので脳腫瘍の部分が判断できないが、脳浮腫は増大して頭頂部まで及んでいた。高濃度に見えるところは出血が疑われた。
経過中に問題があれば、大学病院にまたお願いできることになっていた。主治医の神経内科医に連絡すると、そうしてほしいという。大学病院に連絡すると、診察してもらえることになり、救急搬送とした。
搬送直前に(救急隊が病院に到着していた)、再度けいれん発作(間代性)を来して、意識消失した。ジアゼパム10mg静注でいったん治まったが、それだけでは再発する(20分しかもたない)。
けいれん時の指示の2番目に生食100ml+ビムパット1V(200㎎)点滴静注があったので、それを開始しながらの搬送となった。使用したのはもちろん初めての経験だった。