内科再来に予約の78歳女性が受診した。いつもは歩いてくるが、車いすにすわっていた。地域医療連携室から、かかりつけの整形外科医の診療情報提供書が来ているという。
昨年12月に受診した時には、その整形外科クリニックから、「構語障害で脳梗塞が疑われます」という診療情報提供書が来ていた。診察すると確かに構語障害があり、頭部MRIで左放線冠に新規のラクナ梗塞があった。
一人暮らしなので、症状は軽度で日常生活にはさほど困っていないが入院にした。一般病棟から回復期リハビリ病棟に転棟して、3か月入院していた。
ずいぶん前に夫と死別していて、お子さんはいない。頼りになる親族もいなかった。気候が良くなるまで、病院で過ごしたという社会的入院だった。(施設入所も考慮したが、生活保護があると施設が限られてしまう)
今回は右股関節痛を訴えて、1週間前に整形外科クリニックを受診した。単純X線では骨折を指摘できなかった。症状から精査が必要と判断して、当院の放射線科(現在は常勤医はなく、週に3回読影の応援のみ)に股関節MRIを依頼していた。
読影レポートは「右大腿骨のストレス骨折」となっていた。診療所情報提供書には、「本来ならば地域の基幹病院整形外科に紹介すべきですが、一人暮らしで交通手段もなく紹介しがたいので、対応に苦慮しています」とあった。
ただ今日は付き添いの人がいた。親戚の方かと思ったが、近所のものですという。基幹病院の受診をお願いできませんかと訊いてみると、他に頼める人はいないので連れて行ってあげます、という。ありがとうございます。(移動だけなら介護タクシーでもいいが、受付などをする人がいないと受診は難しいから)
整形外科クリニックにちょっと戻っていただいて、そちらから外来予約をとってもらうことにした(画像のCDも回してもらう)。
手術適応があるかどうか病院の専門医に診てもらって、保存的に診るしかなければ当院入院で経過をみることにします、とクリニックに返事を書いた。
ストレス骨折は、通常の骨折のように1回の外力によって発生するのではなく、繰り返し何度も骨に負荷が加わり、微細な損傷が蓄積して発生する骨折になる。
スポーツや過労によって正常な強度の骨に発生するのが疲労骨折で、骨粗鬆症などで強度の低下した骨に発生するのは脆弱性骨折になる。安静だけで骨癒合が得られなければ手術が必要になる。
MRIでは、右大腿骨頸部にT1強調画像で低信号、T2強調画像で高信号を呈する帯状構造を認めた。