なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

今だったら新型コロナ?

2020年07月09日 | Weblog

 2019年12月26日の記事に、コメントをいただいていた。

 その日の早朝に、62歳男性が高熱・意識障害(軽度)で救急搬入された。胸部X線・CTで、両側肺に胸膜直下から広がるすりガラス影を認めた。白血球減少(1600)・血小板減少(8.3万)と横紋筋融解(CK 3112、AST 173、LDH 921)、低ナトリウム血症(Na 125)を呈していた。対応した内科の若い先生(地域医療研修の内科専攻医)に相談された。

 感染症としてはレジオネラ肺炎を疑うような所見だったが、レジオネラ尿中抗原陰性だった。陰影は急性間質性肺炎様で、当院では到底診断・治療は難しい。間質性肺炎疑いで地域の基幹病院呼吸器内科に紹介して、救急搬送した。

 

 2020年1月23日付けで診療情報提供書が来ていた。診断は肺炎・敗血症・ARDSとあった。間質性肺炎疑いとして、気管支鏡による気管支肺胞洗浄液の提出・抗原病抗体提出(膠原病関連の間質性肺炎疑いとして)が行われた。

 治療はステロイドパルス療法を行って、抗菌薬はメロペネム・レボフロキサシン併用の重症肺炎に対する治療が開始されていた。気管支肺胞洗浄液で連鎖球菌の貪食像を認めて、培養ではStreptococcus mitis groupが検出されたそうだ。膠原病の抗体はいずれも陰性。肺炎・敗血症によるARDSと考えました、とある。 

 経過中に脳梗塞(ラクナ梗塞)や気胸併発(保存的に治療)もあった。治療により症状軽快して、リハビリ転院予定とあった。当地には仕事で来ていただけで、住所は県内ではあるがかなり遠方になる。地元の病院へ紹介されたのだろう。

 

 改めて胸部CT像を見直したが、両側肺の胸膜直下からすりガラス影が広がっている。今だったら、新型コロナウイルス感染症による肺炎像疑いになる。すぐに(エアロゾルの発生する)気管支鏡検査を行うことはない。

 COVID-19のPCR検査をしないと、引き受けてもらえないかもしれない。陰性でも否定できないとなると、当院で個室管理で治療するしかない状況になった可能性もある。 

 治していただいてなによりだったが、対応に相当なご苦労をおかけしたようだ(深謝)。

 Streptococcus mitis groupは口腔内連鎖球菌で、歯性感染症や亜急性心内膜炎の原因になる。歯性感染症→菌血症・敗血症(→心内膜炎?)→敗血症性肺塞栓→ARDS?。地方会で発表できるくらいの珍しい症例だと思う。

 

 

コメント (1)
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