昨日地域の基幹病院循環器内科から、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の92歳男性が転院してきた。呼吸器内科ではなく循環器内科で診ていたのは、主治医が当直の時にでも診て、そのまま担当していたのだろうか。
66歳の長男と二人暮らしだった。その長男の話では、今回悪化する前から、自宅でトイレに行こうとするだけでかなりの息切れがあったという。1週間前に肺炎発症によるCOPD増悪で救急搬送されていた。両側肺背側に肺炎があった。
入院後は、抗菌薬(セフトリアキソン)の投与とステロイドの投与で軽快しました、とある。ただ先週木曜日(入院3日目)には当院に転院依頼の連絡がきていたことになる。ちょっと早すぎるとは思うが、年齢を考慮すると、またすぐには退院にもっていけず長引きそうな点でも、超急性期病院よりは当院の方が合っている。
介護タクシーで転院してきて、酸素0.8L/分というそんな刻んだ量で投与できるのかという量だった。看護師さんが酸素飽和度(SpO2)を測定すると、70%台だった。すぐに酸素を1L/分にしても80%にしかならない。
血液ガスを検査すると、PaO2が55.0mmHg、PaCO2が40.0mmHgだった(O2投与1L/分)。酸素2L/分に上げてSpO2が92~94%になった。
明らかな高二酸化炭素血症はないので、酸素を高用量にしても大丈夫かとは思うが、上げて血液ガスを再検してみないとわからない。高二酸化炭素血症の時に準じて、SpO2が94%を越さない酸素投与量で経過をみることにした。(その後は酸素1.5L/分で安定)
こちらが数値をみて慌てただけで、横臥している患者さんは何ということもない。ふだんから低酸素血症で経過していたのだろう。
年齢を考慮すると身長がある方だが、筋力は低下していた。両下肢の筋肉は歩行訓練をするには心もとない細さだ。リハビリをしても、介助で車いす移乗程度で終わってしまうか。
酸素吸入はおそらく中止できないので、自宅退院とすれば在宅酸素療法(HOT)導入になる。家庭の介護力を考えると、施設入所になるかもしれないが、在宅酸素療法で引き受ける施設はかなり限られている。肺炎による増悪を断続的に繰り返すようだと、療養型病床のある病院で入院継続もありうる。
息子さんには在宅介護よりは施設入所になりそうで、療養型病床で入院継続になるかもしれない、とお話した。年齢的に増悪時には気管挿管・人工呼吸はしないことで同意してもらった。NPPVについては大人の事情で保留とした。
息子さんのシャツのポケットにタバコが入っていた。タバコを1日60本吸っているという。父親と同じ病気になる(もうなっている?)ので禁煙した方がいいですよとお話したが、やめる気はなさそうだ。