金曜日の朝、消化器科医に最近の内視鏡検査の件数はどうですか、と訊いた。木曜日は上下部内視鏡が17件で当院としては多かったという。S状結腸癌の腸重積もあった、という話が出た。
S状結腸の腸重積は見たことがない。消化器科医は、これまで数例あってと涼しい顔だった。頻度は見当がつかないのでなんともいえないが、そんなに頻繁にあることではない。
患者さんは、泌尿器科クリニックに高血圧症と前立腺肥大症で通院していた。それぞれ処方は1剤ずつでシンプルなものだった。数日前から水様便がひどく、止痢剤(ロペミン)を処方を投与したが改善しないので診てほしいと、紹介されてきた。
腹部単純X線で結腸ガスが、結腸そのままの形で貯留している。下腹部にはガス像がなく、ぽっかりと空いていた。腹部CTで直腸内に腸管が入り込んでいる。
緊急で大腸内視鏡検査が行われて、S状結腸癌が先進部となって直腸内に入り込んでいた。その先に進むのは困難で、内視鏡的に整復を試みるのは危険と判断された。
外科手術の可能性もあり、基幹病院消化器内科に紹介していた。
患者さんは、これまでも腸が出てきていたと言っていたそうだ。通常ならば脱肛だが、腸重積が出没していたのだろう。今回は嵌頓したままで戻らないかもしれない。
患者さんが下痢と表現したのは、狭窄部を通過した便汁が少量頻回に流れてきていたもので(便意が続いていた)、実際は便秘(排便困難)の症状になる。