先週、両下肢浮腫の88歳女性が地域の基幹病院内科から転院してきた。両下腿のみずみずしい浮腫で、びらんになった部位から漏出液が漏れるので、ガーゼを当てて包帯で巻いていた。身長151cmで体重85kgだった。
一人暮らしで、近くの内科医院に高血圧症で通院していた。両下肢浮腫で利尿薬(フロセミド、スピロノラクトン)を処方していたが軽快しなかった。6月初めに、その医院から難治性浮腫として紹介入院となったという経緯だった。
入院後、利尿薬は中止されて(効かないのと、軽度に腎前性腎不全を来した)、下肢挙上・皮膚炎の処置(洗浄・軟膏塗布・弾性包帯)・リハビリを行って改善した。体重は入院時の91kgから浮腫の軽減で6kg減量していた。
診療情報提供書には、心・腎・肝・甲状腺由来の浮腫ではなく、深部静脈血栓症でもなく、腹部悪性腫瘍でもないと記載されていた。皮膚科でうっ滞性皮膚炎として処置をしていたので、病名としては「うっ滞性皮膚炎・肥満」とだけあった。
内科の教科書にも記載はないが、これは「慢性静脈不全症」に相当するのだろう。
膝上まであった浮腫は膝下~足までになっていた。それでも介護タクシーで転院してきた時の様子では、自力歩行まで大分かかりそうだと思われた。
下肢挙上を継続して、みずみずしい下肢で弾性ストッキングは使用しがたいので、漏出液が出るところだけ包帯で巻くことにした。1週間経過すると、ぱんぱんと張っていた両下腿は膝下の部分で少し柔らかくなってきた。
そしてベット上では自由に動けるようになり、リハビリ室まで降りて歩行訓練ができるようになった。1か月の入院で本人の希望する自宅退院にできるかもしれない。
患者さんは独身なので、転院の時に家族としては兄弟の娘たち(姪)が来ていた。久しぶりに「本家のものです」、という言い方を聞いた。