なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

Escherichia albertii

2020年07月19日 | Weblog

 便培養でEscherichia albertiiが検出されて、細菌検査室の技師さんはどうしていいか悩んでいた。相談がありますといって、訊きに来たが、初めて聞く菌でわからなかった。

  先々週の火曜日に内科医院から、腹痛・下痢の45歳男性が紹介されてきた。その2日前から下痢(水様便)が続いていた。その日は腹痛(左側腹部痛)で医院を受診して、体を折り曲げるようにしていたので、そのまま当院に紹介された。何故か、外科に紹介になっていた。

 外科医は感染性胃腸炎と判断して、点滴と血液検査・便培養検査を提出した。血液検査はまったく異常がなかった(白血球正常域でCRP陰性)。点滴して腹痛が軽快したので、整腸剤と腹痛時のブスコパン頓用を処方して帰宅になっている。

 腹部CTを行っていて、外科医は左側の小腸に炎症所見がありそうと記載していた。放射線科の読影レポートは異常を認めないとあった。臨床症状から判断するので、読みすぎかもしれないが、小腸内の消化液が増加しているような気はする(でもこの菌は大腸型?)。

 思い当たる食事はないと記載していた。その腸炎としての症状は本人だけで、周囲にはいない。その後は受診していないので、おそらく症状はしだいに治まったのだろう。

 

 そのEscherichia albertiiだが、2003年に発表された菌で、感染性腸炎(下痢)を来すのだった。大腸菌と誤認されることもある。2016年に検出された菌株を国立感染症研究所に送ると、遺伝子検査をするという案内があった(現在も受けているかは不明)。

 感染管理の指導で来てもらっている先生に訊くと、研究所に送ろうとすると、梱包の指示や臨床情報の提供など面倒なことになるということだった。興味があれば、検査会社でやってくれるところに送る方がいいそうだ。(以前に東南アジアから帰国した若い女性が発疹熱疑いで血清を研究所に送ったが、その後は何の連絡もなかった)

 抗菌薬も感受性は良好で、何でも効くような結果だった。臨床的には、感染性腸炎の起炎菌にはEscherichia albertiiという菌もあるということで、まったく問題はない。

(結局、ある大学病院の検査科で引き受けてくれるところがあり、菌株を提出した)

 

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