● 永井幸寿 「『災害をダシにした改憲』は間違いである」を読んで
『世界』7月号
須山敦行
※ 論旨明快で、分かりやすい。重要な問題を説いていて、勉強になる。こういう文章こそ『世界』にふさわしい。と思う。
※ 近頃、よく使われる用語である『立憲主義』について、前提として、分かりやすく説明してくれている。
「権力分立は、人間性への深い反省と政治の現実の認識による、いわば『大人の制度』なのである。」
「人権保障と権力分立を憲法で定めて、国家権力を縛り国民の権利・自由を守ったのが『立憲主義』である。」
※ その上で、自民党が必要だとしている「国家緊急権」の創設について、その不用なことと、危険性を説明している。
※ 現憲法にもとづく現状の法律状況が、十分な対応を持っていることを説明している。
「このように、日本国憲法は、濫用の危険性から国家緊急権は憲法に規定しないが、他方で非常事態への対処の必要性から、平常時から厳重な用件で法律を整備するという立場を取っている。」
「以上の通り、日本では実質的には災害時の国家緊急権に相当する制度は法律で充分整備されており、これは憲法との関係も充分審議されているのである。」
※ さらに、災害対策の原則は、「準備していないことはできない」ということであることを、具体的な例示をしながら説得的に説明している。(私が先日釣りにいった、釜石市鵜住居地区の痛ましい経験を紹介している。)
◎ 被災地弁護士会は、災害を理由に国家緊急権を憲法に創設することに反対の旨を発表している。
◎ 被災者が最も言いたいのは、
「災害をダシにして憲法を改正してはならない」
ということである。
※ こういう悪知恵を思いつくのも、あさましい人間の頭脳である。
私たちは、悪知恵の頭脳と闘わなくてはならない。
私は、その闘いのために勉強している。『世界』を読んでいる。
※ 筆者の舌鋒は鋭い。
「権力者が災害の現場も知らず、永田町で強大な権力を振るうために、災害対策を口実として憲法を改正することなどとうてい許されるものではない。」