富岡『世界』を読む会・6月例会の報告
2. 場所:高崎市吉井町西部コミュニティ・センター
課題論文:本間龍『祝賀資本主義のグロテスクな象徴』、荒又美陽『オリンピック開発と資本の論理』
① 特集の主題は、オリンピック=巨大イベントを通して都市の在り方を考える、ということだったが、参加者の報告と議論は、『2020東京オリンピック』論という時事評論に集中した。
② 『東京オリンピック基本構想』(2006)に掲げられた、「世界平和への貢献」「次世代に夢」「国民の間に一体感と高揚感」「日本人のフェアプレイの精神、無類のホスピタリテイ」などの理念と美辞麗句は、2021年6月には、「パンデミックの拡大」「次世代に失望と悪夢」「国民の間に分断と冷笑」「日本人のファジーの精神、無類のイノセンス」などとのパロディー化をもたらした。
③ 安倍首相のアンダーコントロール発言=虚偽と竹田JOC会長の贈収賄疑惑に始まり、エムブレム盗作・国立競技場巨額建築費等々のスキャンダルを経て、森会長・佐々木演出責任者の女性蔑視発言と馘首に至るまで、「2020東京オリンピック」は薄汚れた「最もグロテスクな祝賀資本主義の見本」となった。こうして既に愚劣なイベントに堕しつつあった上に、パンデミックが襲った。2021夏、「志の高い国」=日本(基本構想)は、「死を招く国」=日本へと堕落する危機を迎えようとしている。
④ メガ・イベントの歴史は、19世紀にヨーロッパ近代化の産物として生まれ、国民国家・資本主義・帝国主義の世界観を人々に広め、定着させた。20世紀には、スタジアムの建設と郊外開発、鉄道・道路の整備等、都市開発政策を推進した。そして21世紀、ロンドン・東京・パリなど巨大なグローバル都市が開催地となり、都市の再開発、ジェントリフィケーションによって、グローバル資本を引き付けるインフラ整備された最先端イメージ空間が追及された。パリやロンドンが貧困地域の開発という方向性が明確であったのに対して、東京のそれは単に一時的な「景気刺激策」しか見えない。日本と東京の政策は、「論理よりもポエム」(p118)の指摘に、強く納得した。
⑤ では結局、「2020東京オリンピック」は何だったのか? 電通が儲けIOCが巨額の利益を得ただけの、「愚劣な進化を遂げた」最もグロテスクな祝賀資本主義の見本であった。
⑥ オリンピック・パラリンピックの開催か非開催か、無観客か有観客か、など議論沸騰中の「イベント資本主義」論議は、時宜にかなった刺激的な例会だった。
(2)新基地建設と遺骨−渡辺豪『遺骨まじりの土砂−本土が問われている』ほか2編
①40年近く遺骨収集を続けている具志堅隆松さんはじめ、共にハンストを決行した蝶研究者の宮城秋乃さん、トマト農家の金城博俊、そして東京在住の金武美加代さんなど、沖縄にはいまなお執拗に沖縄戦に向き合いつづける人びとがいることを、あらためて認識を深めるとともに、本土の私たちへの厳しい問い掛けを考えさせられた。
②那覇市議会の「戦没者遺骨を含む土砂を埋め立てに使用しないことを求める意見書」の全会一致での採決に、保革間のぎりぎりの歩み寄りに、オール沖縄の力の源泉を見た思いだ。
③AERA dot渡辺豪の記事に、本土のZ世代が、遺骨埋め立て問題に取り組んでいることが、紹介されている。沖縄戦遺品の展示活動を全国で展開するエール大生や辺野古県民投票の元代表の一橋大院生がなどが呼びかけ人となって、運動している。Z世代へ の期待感が膨らみます。
◎ 富岡の雑誌『世界』を読む会、7月例会 の予定