小泉和子著、田村祥男写真、河出書房新社刊
本書は、昭和30年代の家庭にあった様々なモノを紹介しています。第1章では『昭和のすぐれもの図鑑』として、「縁側」、「ござ」、「かまど」など、21のモノが紹介されています。また、第2章では『なつかしき昭和の道具』として、「湯たんぽ」、「ミシン」、「盥(たらい)」など、24種類の道具が紹介されています。
著者は、自分が生まれ育った家を「昭和のくらし博物館」として運営しており、昭和の品々の役割と、その背後に秘められた文化や価値観を紹介しています。博物館の情報は下記URLの通りです。
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URL => http://www.showanokurashi.com/
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紹介されているものはどれも懐かしいものでばかりで感激しました。例えば、着物を洗い張りする「張り板」は、ごく微かに記憶があります。着物の縫い目を解いて、布にし、洗って、板に貼り付けて乾かすのですが、恐らく、私が2,3歳の当時の記憶ではないかと想像しています。
そして、最もびっくりしたのは「吊り手水(ちょうず)」です。便所を出た所に、手を洗うための手水鉢(ちょうずばち)がありましたが、この品は、軒先から吊した円筒形のタンクの下に棒が突き出ていて、それを上に押すと、中に蓄えられた水がチョロチョロと出てくるので、それで手を洗う寸法です。我が家で見たのかどうか記憶が定かではありませんが、家の造りから想像すると、親戚の家にあったのかもしれません。もう半世紀も前の記憶が蘇ってきてびっくりしました。
著者は、この品の紹介の項で以下のように記しています。
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手を拭くのは、脇にかけてある手拭いだが、無精な家だと汚れで黒ずんでいて、よその便所を借りるときはこれが嫌だった。
子供の頃、母の里へ行って、吊り手水を使いながら空を見上げたら、満月だった。あのときはじめて生きるかなしみのような気持ちを知った。
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この鮮やかな記憶は、著者の内面世界に影響を与えたのであろうと思います。そして、人はこのように、日常の品々を通して世界を感じ、理解し、精神世界を構築して行く。それ故にこそ、単なるモノではないと感じるのではないでしょうか。
評価は4です。
本書は、昭和30年代の家庭にあった様々なモノを紹介しています。第1章では『昭和のすぐれもの図鑑』として、「縁側」、「ござ」、「かまど」など、21のモノが紹介されています。また、第2章では『なつかしき昭和の道具』として、「湯たんぽ」、「ミシン」、「盥(たらい)」など、24種類の道具が紹介されています。
著者は、自分が生まれ育った家を「昭和のくらし博物館」として運営しており、昭和の品々の役割と、その背後に秘められた文化や価値観を紹介しています。博物館の情報は下記URLの通りです。
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URL => http://www.showanokurashi.com/
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紹介されているものはどれも懐かしいものでばかりで感激しました。例えば、着物を洗い張りする「張り板」は、ごく微かに記憶があります。着物の縫い目を解いて、布にし、洗って、板に貼り付けて乾かすのですが、恐らく、私が2,3歳の当時の記憶ではないかと想像しています。
そして、最もびっくりしたのは「吊り手水(ちょうず)」です。便所を出た所に、手を洗うための手水鉢(ちょうずばち)がありましたが、この品は、軒先から吊した円筒形のタンクの下に棒が突き出ていて、それを上に押すと、中に蓄えられた水がチョロチョロと出てくるので、それで手を洗う寸法です。我が家で見たのかどうか記憶が定かではありませんが、家の造りから想像すると、親戚の家にあったのかもしれません。もう半世紀も前の記憶が蘇ってきてびっくりしました。
著者は、この品の紹介の項で以下のように記しています。
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手を拭くのは、脇にかけてある手拭いだが、無精な家だと汚れで黒ずんでいて、よその便所を借りるときはこれが嫌だった。
子供の頃、母の里へ行って、吊り手水を使いながら空を見上げたら、満月だった。あのときはじめて生きるかなしみのような気持ちを知った。
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この鮮やかな記憶は、著者の内面世界に影響を与えたのであろうと思います。そして、人はこのように、日常の品々を通して世界を感じ、理解し、精神世界を構築して行く。それ故にこそ、単なるモノではないと感じるのではないでしょうか。
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