読書三昧

本は一冊一冊がワンダーランド。良い本との出会いは一期一会。そんな出会いを綴ります。

新装世界の伝記3 アンデルセン

2012年06月02日 21時02分09秒 | ■読む
山室静著、ぎょうせい刊
朗読でアンデルセンの童話を聞いています。かなりの分量で、少しずつですが聞き続けています。この著名な童話作家の作品は、「人魚姫」や「マッチ売りの少女」が有名ですが、作者本人についてはほとんど知りませんでした。そもそも本書を手に取ったのは、子供向けの童話にしては、非常に暗い作品や何とも残酷な描写に違和感を感じたからでした。
アンデルセンは、非常に貧しい家に生まれ、愛情深い母親に養育されますが、父親が早く死んだため、学校を止めて芸人を志します。しかし上手く行かず、その後、多くの人々の支援を受けながら、学問に励み、文学で世に出ます。しかし、一貫した教育を受けていないため、初期には随分と批判されたようです。その後、森鴎外の訳で日本にも知られる「即興詩人」が出世作となり、紆余曲折を経て童話作家として大成します。
本人の並外れた努力は当然として、歴史に名を残す程の作家になったのは、母親の薫陶によって助長された夢への強い志向であったかと思われます。また、優れた童話を創造する為に必要な純粋さを持ち続けたことと、自らの悲惨な人生を踏まえた弱者への眼差しが普遍的共感を生み出したのではないかと思います。
愛する女性に顧みられることなく、生涯独身で孤独な精神生活を送ったようですが、社会的な名声はこの上なく高まり、その遺徳を慕われました。
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URL => http://ja.wikipedia.org/wiki/ハンス・クリスチャン・アンデルセン
     http://ja.wikipedia.org/wiki/山室静
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本書は、アンデルセンの伝記により毎日出版文化賞を受賞した山室静さんの著書ですが、前編でアンデルセンの生涯を概説し、後編で作品を通してアンデルセンの人となりを紹介しています。作者ご本人の「結び」に、そうした構成にした理由が述べられていますが、目的を達成しています。偉大な作家の精神世界を見事に再現していると感じました。
評価は4です。

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