生きている働いている

目黒輝美、佐々木哲二郎、泉浩徳著、大学教育出版刊
本書では、「労働」を、「働く」人と「働きかけられた」対象との相互作用によって、これまでなかった「何か」が生み出され、それが人間社会の役に立つと規定しています。つまり、金銭的な付加価値を生み出すものだけに留まらず、例えば、周囲の人々に元気や働きがいを与える、重度の障害者の目の輝きや笑顔も、また労働であるとしています。
その一方で、現実の社会生活で働くには、こうした価値観を共有する人々がいなければなりません。今日の、市場が深く広く浸透した社会では非常に困難なことでしょう。廃案となった障害者自立支援法は、障害者も市場へデビューすることを促進することを求めましたが、障害者が健常者と共生できる状況にないことが原因と思います。
本書では、障害者自立支援法に反対の立場から、筆者達の考え方、実践している事業の内容と障害者の立場に立った社会の在り方を示しています。
職場でも子育てでも、教育される側の歩みに、教育する立場の者が寄り添い、辛抱強く共に歩む事が必要だという考え方が社会一般に広まりつつありますが、障害者も同様に、身体の障害や知的、精神的な障害を、それぞれの人の個性として受け入れ、共に生活するという考え方が、一般に広まらなければならないことを、本書の実例を通して感じました。
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