読書三昧

本は一冊一冊がワンダーランド。良い本との出会いは一期一会。そんな出会いを綴ります。

漆芸-日本が捨てた宝物

2009年04月03日 18時38分05秒 | ■読む
更谷富造(さらたにとみぞう)著,光文社新書119
中々に爽快で明快な主張が込められた著作でした。作者は,京都市立日吉ヶ丘高等学校漆芸科を卒業後,漆芸家の門下となりしばらく修行しましたが,幅広い技能の習を目指し,ある会社に働いてサラリーを得ながら,デッサンや彫刻を勉強します。漆芸は非常に専門化(分業)が進んでいるので,著者のように木地作りから塗り,螺鈿細工までこなせる作家は極少ないとのことです。そうした折,外国から,古美術である漆工芸作品の修復を依頼され,これがきっかけとなって,やがて世界へ飛び立つのでした。
しかし,これがまた凄い。いくら若いとはいえ,渡欧後,3ヶ月の集中学習でドイツ語を習得したとのこと。しかも,新婚当時です。その後の経歴も記されていますが,自らを恃み,自らを信じて突き進んできた著者の生き様は,素晴らしく非凡であると感じました。著作の最後に,住んでいる町役場の対応を批判していますが,著者も分かっているように,まったく異なる価値観の世界で生きて来たのだと思います。
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URL => http://www.hokkoku.co.jp/_today/H20080216103.htm
     http://kunst.at.infoseek.co.jp/index2.html
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著者は,国内業界から白眼視されていたのかと思ったら,上記URLの情報によれば,修復技術の伝授を請われるようになったようです。日本が世界に誇る芸術作品が日本人の手で修復されることは,正しく誇れることだと思います。やっと作者の主張に世の中が追いついてきた証でしょうか?
評価は4です。

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