読書三昧

本は一冊一冊がワンダーランド。良い本との出会いは一期一会。そんな出会いを綴ります。

ローバー、火星を駆ける 僕らがスピリットとオポチュニティに託した夢

2012年08月15日 19時01分39秒 | ■読む
スティーヴ・スクワイヤーズ著、早川書房刊
ある大学生がたまたま火星探査の初期に撮影された写真に見入られ、以後、火星に魅了されてしまった。それが、本書の著者です。その後、NASAの勤務を経てコーネル大学の天文学科の職に就きますが、その時から、10年来続くことになる火星探査の夢への挑戦が始まります。
まずは、火星探査の計画を立案し、激烈な提案競争に挑戦します。本書は、この辺りから俄然熱を帯びてきます。何度も何度も競争に負け、その都度著者はめげますが、立ち上がって挑戦し続けます。自分や知人の技術や知識を総動員して膨大な資料を作成し、その都度打ちのめされますが、チームのメンバーを変えつつ、やっと採用されるに至ります。しかしそれも、アメリカの宇宙開発計画の紆余曲折に大きく左右された結果で、人の運とは何とも不思議なものであると感じました。
さて、採用された後にも、ビックリするような試練が盛り沢山です。観測機器の開発は言うに及ばず、全体の重量の管理など、従来、自動車や飛行機の開発物語を数多く読んでいる私は、本書を読んで、本当にビックリしてしまいました。えーっ!という言葉が10ページに1回位の頻度で出て来そうな塩梅で、探査機(ローバー)の開発に関わる苦闘は言語に絶する感がありました。
その開発がやっと終わり、やがて打ち上げですが、地球と火星との位置関係から、打ち上げに適した期間が限られており、実績のある打ち上げロケットに何度もアクシデントがあったので、無事打ち上げが成功した所で、私は感情移入して泣いてしまいました。
やがて、火星への着陸ですが、これも大きな山場です。耐熱シェルで大気圏を減速しつつ、やがてパラシュート降下に移行し、最終段階で、水平移動を抑えるロケット噴射の後に、探査機の周りにバックが開いて、地上に落下し、地上で何度もバウンドした後に停止し、バックが縮んでテトラパックの形の容器が剥き出しになり、それの上部三辺が開いて、ローバーが火星に降り立つのです。そしてローバーは、・・・・・。
あーーーー、疲れたー。ここまで読むのにかなり疲れましたが、この辺りから本書は、学術調査に移行し、かなり冷静な筆致に変化します。学者としての本分が現れています。
それにしても、著者は諦めずに夢を追い掛けますが、それは、未知への好奇心に支えられているのだと思います。最後に著者は、本書の執筆に当たり何を省くかに非常に苦慮したと語っています。このプロジェクトが非常に多くの人々の苦闘によって成し遂げられたが故に、登場する人々はごく僅かに過ぎないとしています。そのため、巻末には、このプロジェクトに関わった人々の一覧が掲載されています。読了してこんなにも深い感動を覚えたのは久方振りでした。
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URL => http://ja.wikipedia.org/wiki/マーズ・エクスプロレーション・ローバー
     http://marsrovers.jpl.nasa.gov/home/index.html
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評価は5です。

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