読書三昧

本は一冊一冊がワンダーランド。良い本との出会いは一期一会。そんな出会いを綴ります。

江藤新平伝

2013年03月02日 11時58分42秒 | ■読む
副題:軌跡の国家プランナーの栄光と悲劇
星川栄一著、新風舎刊
若い時分に法律の入門書を読んだ際に、明治時代に日本の法制度をフランスに倣って構築しようとした江藤新平の名が出てきました。しかし、結果的に、日本は政治体制故にプロシアの法体系を色濃く反映した、と記述されていました。今以て法律の知識が浅くその意味するところをよく知りませんでした。その後、明治期の歴史に関して、ごく稀に江藤新平の名を見ることがありましたが、他の人々に比べ圧倒的に頻度が少なかった。
そんなことから本書を手に取りました。読了し了解したことは、江藤新平が稀に見る天才であったこと、非常にリベラルな思想の持ち主であったこと、理想主義者であったこと、それ故に空前絶後の業績を残したこと、それに加えて、他者との関係性に無頓着であったことなどが、江藤新平の悲劇的な死を招いたことでした。
また、西郷隆盛が征韓論で破れたため下野し、やがて蜂起したという説明に違和感を感じていましたが、江藤の死と共に、その当時の政治闘争の激しさと恐ろしさを克明に描写している本書によって初めて納得が行きました。あるいは江藤新平に偏った内容かも知れませんが、希代の策士として大久保利通が描かれており、その他に大隈や伊藤が等身大の人間として感じられる説得力のある記述です。下記のURLは、大久保が江藤を抹殺しようとした経緯は、広く認められていない内容のようですが、少なくとも、大久保利通が、自身の信念故に手段を選ばずに様々な手段を講じたと理解することは合理的です。また、西郷と江藤が死んで、中央集権、行政主導、軍の権力の増強というその後の日本が進む道を、他の明治の元勲達が築いたという著者の主張にも納得できました。
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URL => a.wikipedia.org/wiki/江藤新平
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昨今の政治は混迷を来していますが、自民党の一党独裁の時代以外に、明治期以来、日本の政治は混迷の歴史であり、政治が権力闘争そのものであると理解するば、やむを得ないことなのかもしれません。政治の質は、国民の質なのだという指摘もありました。
評価は5です。

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